2015年 10月6日
撤回求め、批判が噴出

マイナンバー利用にも問題

 財務省によって唐突に提案された、消費税を10%に引き上げる際の還付金制度。軽減税率の代わりに財務省が考案した負担軽減策について、各紙社説は見直しや撤回を求めた。10月に配布開始となる個人番号カード(マイナンバーカード)を活用した還付方式についても問題を指摘する声が多い。

給付金支給は公約違反

 消費者が酒類を除く飲食料品を購入する際、店頭で消費税10%を支払った後に2%分を還付してもらう仕組みについて、日経は「消費者はいったん10%分の税負担をするので、痛税感は残る。さらに軽減対象とする品目の詳細な線引きも必要になる。2017年4月の段階で実施できるかは不透明と言わざるを得ない」と疑問を呈した。

 河北は「確かに結果的に負担は軽くなる。だが、まず疑問なのは代替案として軽減税率導入の目的が果たせるかどうかだ」とした上で「還付金には上限を設けるという。その額は1人年4千円超。だが、現行の低所得者向け給付金、年6千円を下回る。還付金の一時増額案があるとはいえ、低所得者対策といえるのかどうか定かではない」と指摘した。

 熊本日日は「軽減税率は、買い物をする時に税率アップを意識しないで済むことが利点とされていた。購入時に一律10%を課し、後に還付する方式では、消費者の買い控えも招きかねない。景気を冷え込ませる恐れも指摘されている」と国内経済への影響を懸念した。

 「公約に反する。消費者を軽視した詐術のような対応だ」と冒頭から厳しいトーンの琉球は「自民、公明両党は軽減税率導入を目指すことで合意し、2014年12月の衆院選でも公約に掲げた。給付金支給案は公約違反である」と強調した。

 高知も「与党が2014年12月の衆院選で公約したのは、一部で税率を低く抑え購入時の負担感を和らげる軽減税率の導入だったはずだ。財務省は『日本型軽減税率制度』と銘打ったが、国民の描いた軽減策の印象とは似ても似つかない内容だろう。財務省案は白紙撤回し、『低所得者への配慮』という原点に立ち戻った軽減策の具体化を求める」と主張した。

国民への配慮欠く

 財務省案では、消費者は商品購入時にマイナンバーカードを店の端末機器にかざしてポイントを記録する必要がある。来年1月にスタートするマイナンバー制度を還付金の算定に利用することについて、毎日は「カードには、所得税額や年金といった個人情報も記録される。なくしたり、盗まれたりすると大変だが、近所の買い物にも持ち歩くなら不安が常につきまとう。負担を軽くするからリスクは受け入れろという発想は、消費税の納税者である国民をないがしろにしたものだ」と再考を求めた。

 徳島は「年金情報の流出事件を見るまでもなく、漏えいを完全に遮断するのは難しい。商品の購入日時や場所などを国に把握されることに、抵抗を感じる国民も少なくなかろう」とした。

 朝日は「買い物や飲食をするたびに、支払金額に関する情報を行政に送ることについては、個別の品目と価格など内訳に触れないとはいえ、プライバシーの観点から心配する消費者もいるだろう。小売店などに新たに端末を置いてシステムを築く手間とコスト、情報管理のあり方など、実務や運用上の懸念もある」として、国民が納得できる制度を求めた。

財務相発言に反発も

 麻生太郎財務相が記者会見で「複数の税率を入れるのは面倒くさい」「マイナンバーカードを持っていきたくなければ、持たなくてもいいが、減税はない」などと発言したことへの反発も強い。

 「税負担は多少軽くなっても仕組みは複雑になる。これでは消費者こそ『面倒くさい』のではないか」(岩手日報)「還付の申請が少ないに越したことはないという発想が露骨だ」(産経)「カードを半ば強制する高圧的な態度には驚かされる。これでは真の狙いはマイナンバー制度の推進と疑われても仕方あるまい」(北海道)「税の公平性を軽視した問題発言ではないだろうか。家計をやりくりする国民の思いを理解しているとも思えない」(中国)と批判が噴出した。

欧州は軽減税率を導入

 読売は「財務省は、軽減税率の導入を避ける理由として、対象品目の線引きの難しさや、複数税率化によって、取引ごとに税額を記入するインボイス(税額票)作成にかかる事務負担の重さを挙げる」と指摘し、「欧州各国では、半世紀も前から軽減税率を導入している。食料品をはじめ、活字文化の保護に欠かせない新聞や書籍が対象だ。インボイスも、商取引の障害とはなっていない。今の日本で、実施できないわけがあるまい」と結んでいる。(審査室)

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