1月12日付 直面する試練を考察

日本再生への道、論じる

 大きな「動き」があるといわれる申(さる)年。日本を取り巻く情勢には、すでにその兆しが表われている。18歳選挙権の導入や取りざたされる衆参同日選。経済の先行きはすっきりしない。世界では、テロの拡散や中国の南シナ海での軍事拠点化など内外で試練に直面している。在京各紙の元日紙面は様々に分析・考察を試みている。

4紙が独自ダネ、2紙連載

 【1面トップ】毎日、読売、産経、東京が独自ニュースを報じ、朝日、日経が連載企画を据えた。

毎日「改憲へ緊急事態条項 議員任期特例 安倍政権方針」=大規模災害を想定した「緊急事態条項」の追加を憲法改正の出発点とする方針を、安倍政権が固めたと伝えた。特に衆院選が災害と重なった場合、国会に議員の「空白」が生じることを回避するため、特例で任期延長を認める必要があると判断。与野党を超えて合意を得やすい期待もあり、今夏参院選後に、参院で改憲勢力が3分の2の議席を超えることを前提に、2018年9月までの任期中に、改憲の実現を目指すという。

読売「数研出版も教科書謝礼 中学校長ら 検定中に閲覧例」=中学校と高校の教科書を発行する「数研出版」が数学の中学教科書への参入を前にした09年ごろから、教科書への意見を聞いた謝礼として公立中学の校長らに1回あたり最高5千円の図書カードを渡していたことが分かったと報じた。100人以上の校長や教育委員会関係者らをリスト化して中元や歳暮も贈っており、贈り先には選定に関与した人もいたという。

産経「マイナンバー 運営システムに欠陥 機構、原因開示を拒否」=マイナンバー制度の運用が始まる中、カード発行を担う地方公共団体情報システム機構のプログラムに誤りがあったことが分かった。東京都葛飾区のマイナンバー通知カード約5千世帯分が未作成だったにもかかわらず、機構のシステム上では正常終了と認識されていた。機構は誤りを修正したが、区に対し具体的なミスの原因の開示を拒否。機構の隠蔽(いんぺい)体質が浮き彫りになったとしている。

東京「中古武器輸出を検討 防衛装備庁 『無償・低価格』特例法で 周辺国の軍備増強に懸念」=国産の中古武器を無償や低価格で輸出できるようにするため、防衛装備庁が法整備を検討していることを報じた。新興国から、自衛隊の装備の提供を求める声が高まっているという。防衛装備庁装備政策課は「安全保障環境を安定させる上でも、法整備は必要」とするが、「新興国への武器輸出は日本周辺国の軍備増強を助長し、緊張を高める」との軍事ジャーナリストの懸念も取り上げた。

朝日 連載「18歳をあるく」=この夏の参院選で初めて選挙権を得る18歳は、どんな人たちなのか。生まれた時からインターネットがあり、バブル時代を知らず、大学全入時代に思春期を迎えた世代の、他人とのコミュニケーションの取り方、恋愛、将来像などを、インタビューや統計分析を交え、実像に迫る企画。導入部の1面トップでは、スマホアプリ「インスタグラム」に投稿された写真9枚を組み合わせ、グラフィカルな紙面構成となっている。

日経 連載「アジアひと未来」=世界経済の牽引役として、国際秩序の変革者として、また文化・芸術の創造者として、世界で活躍するアジアの「ひと」に焦点を当てた企画。アジアの人口40億人は世界の半数を占め、欧米主導の枠組みを変える可能性があると指摘。初回は、ソフトバンクの孫正義社長に後継指名された、同グループ副社長のニケシュ・アローラ氏の足跡を軸に、グーグルやマイクロソフトなどIT大手で成功し、祖国に凱旋(がいせん)する人々の姿を紹介した。

変化する世界、日本の対応は

【社説・論説】刻々と変化する内外情勢に対応し、再生への道を進むために必要な日本の方策は何かを論じた。

朝日「分断される世界 連帯の再生に向き合う年」=民族や宗教、経済、世代など、国境を超えた空間であるはずのグローバル世界が皮肉にもたくさんの分断線におおわれている現状を掲げ、「お互い助け合った方が得をする、自分も受益者になる、幸せになるという視点が必要だ」とする専門家の意見を引き、「理念より実際的な解決への理解を広める。連帯や共感の再生への取り組みを可能にするための重要な手がかりではないか」と提起した。

毎日「2016年を考える 民主主義多様なほど強くなれる」=選挙権が「18歳以上」に引き下げられ、政治の新たな幕開けに民主主義とは何かを考察。「政策決定に、幅広いコンセンサスが存在する社会。それが民主主義が機能する強い社会と呼べる」とし、「民主主義には『万歳二唱』しよう。一つは、それが多様性というものを認めているから。二つ目には、それが批判を許しているから」という英国批評家の言葉を引き、答えはこれで十分ではないか、と結んだ。

読売「世界の安定へ重い日本の責務 成長戦略を一層強力に進めたい」=テロ拡散や中国の力による現状変更の試みなど国際秩序を揺るがす状況に、危機感を強め対峙しなければならないと警鐘を鳴らし、「国際政治の舞台で日本が役割を果たすには、各国首脳との意思疎通が円滑になる長期政権のメリットは大きい」と主張。そのうえで「野党も、昨年の安全保障法制の審議のように、情緒的な反対論ばかりでは困る。緊張感を持った実のある政策論議」を求めた。

日経「日本経済 生き残りの条件 新たな時代の『追いつき追い越せ』へ」=世界的競争に勝ち、日本経済が生き残っていくために、「世界第2の経済大国の残像の修正からはじめる必要がある」と提言、欧州に範を求めた。資源がない日本と共通点が多いスイスの企業経営のあり方や、輸出に軸を置いたオランダの「グローバル農業」を挙げ、「明治、戦後と日本は2度にわたって外にモデルを求め、内を改め、世界に伍(ご)してきた。いままた新たな追いつき追い越せの時代がやってきている」とした。

産経「年のはじめに 再生に向かう力の結集を」=軍事力を背景にした中国の台頭など、日本の周辺環境の悪化への対処は国家的課題にもかかわらず、真っ向から論じ合えない国会の姿を振り返り、「慰安婦問題をめぐる日韓合意は、歴史の歪曲(わいきょく)に粘り強く事実で反論していく政権の方針が揺らいだ印象を与えた。日本の名誉を守ることがいかに大事かを忘れてはならない。歴史戦への戦略を再構築すべきだ」と主張、基軸となる日米同盟の深化が重要だ、とした。

東京「年のはじめに考える 歴史の教訓を胸に」=大きな変化の年と捉え、「先の大戦を経験した人は少なくなり、戦争を知らない世代は、妙な言い方ですが、忘れないために記憶をつくらねばならない」とした上で、今のシリア内戦やテロを重ね見ると、「戦争やテロを減らすには武力よりも、むしろ教育の普及や格差是正が有用だという世界認識が広まりつつあります」と説き、「時代が揺れるほど、歴史の不動の教訓を胸に抱いていたい」とした。

【主な連載企画】朝日=1面「18歳をあるく」(3日から)・社会面「ネガウモトメル」、毎日=1面ほか「チャイナセンセーション」(12月30日から)・社会面「憲法のある風景 公布70年の今」、読売=1面「明日を語る2016」(1月3日から)・社会面「震災5年―支える―」(同)、日経=1面「アジア ひと未来」、社会面「解を探しに」(12月30日から)、産経=1面ほか「にっぽん再構築」・社会面「『価値』漂流」、東京=1面「未来へつなぐ パラリンピックの力」(1月3日から)・社会面「新貧乏物語 悲しき奨学金」(同)

【元旦号ページ数】かっこ内の数字は2015年、14年の順

朝日102(120、132)▽毎日76(76、76)▽読売112(112、104)▽日経100(104、108)▽産経80(80、80)▽東京56(56、56)(審査室)

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