1月19日付 憲法、民主主義を見つめ

地方再生へ踏み出す年に

 戦後70年の昨年、安保関連法などをめぐり安倍政権への批判が目立った地方紙の社説は、2016年元旦付も、憲法や民主主義を正面から論じたものが目に付いた。夏の参院選で、18歳が初めて選挙権を行使することへの関心も高い。高齢化や人口減少への危機感から「1億総活躍社会」「地方創生」も大きなテーマになった。

戦後の「初心」に立ち返れ

 愛媛は安保関連法について「『平和主義』を定めた憲法9条の精神をないがしろにし、日本を『戦争ができる国』に変えてしまった。解釈変更による改憲は憲政史上に残る『汚点』」として廃止にするべきだと主張した。熊本日日も「年があらたまっても言わなくてはならない。歴代内閣によって禁じられてきた集団的自衛権行使が『容認される』とした、昨年の憲法解釈変更には無理があったのではないか」と疑問を呈した。

 高知は「多くの国民が反対の声を上げ、政府与党の強硬姿勢を批判した。『民主主義って何だ』という問い掛けは、憲法の『初心』をあらためて確認する声といえるだろう」と指摘。参院選を控え「戦後の『国のかたち』を築いてきた国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という『初心』に立ち返り、しっかりと見定める必要がある」と訴えた。

 神戸は71年目の民意」のタイトルで、民主主義を問う3回続きの社説を連載。安保法が参院特別委で混乱の中で採決されたことを挙げて「民主主義は無残な姿をさらしたといえる」との認識を示した。また安保関連法の反対運動を牽引した大学生らのグループ「SEALDs(シールズ)」を例に「どこからでも民主主義は始められる。『民主主義って何だ』『勝手に決めるな』と、路上で声を上げた若者たちの姿がそう教えてくれる」と希望的にとらえた。

 信濃毎日は高校の生徒会活動の討論を紹介し「夏の参院選からは選挙権が18歳以上に広がる。節目の年に足元の民主主義を見つめ直したい」と説いた。茨城も「若者が政治に関心を持ち、意識を向上させることで、政治に新たな活力を生むことを期待したい」と記した。

 中国は国会の威信が低下していると危惧(きぐ)。安倍首相が改憲に絡めて「緊急事態条項」の新設を強調していることに対し「国家の非常時について議論することに異存はない。しかし、それは改憲ありきではないはずだ」とくぎを刺した。東奥は「今年は有権者一人一人が、あらためて立憲主義と向き合う年になるのではないだろうか」と問い掛け、政府の強引姿勢は、沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題でも目に付くと指摘した。

 基地問題に対して琉球は「安倍政権が沖縄の民意を踏みにじってはいるが、諦めてはならない。投票することで政治は必ず変えられる」と説いた。沖タイも「徹底した非暴力の直接行動であらがっている辺野古の市民運動は、日本の民主主義を問い返す現場となっているのである」「日本の民主主義の成熟度と米国への従属度が世界から問われているのだ」と訴えた。

 京都は、過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロなど、暴力の連鎖をどう断ち切るかを論じ、非軍事面の国際貢献に徹する方針を堅持すべきだと強調した。「中東地域などの貧困と差別の解消に向け、国際社会とともに積極的に動きたい」「平和憲法を持つ国にふさわしい」と記した。

 南日本も「偏見や格差をなくす。崩壊国家の再建を支える。遠回りでも、テロの『大義』を奪うしかありません」と指摘し、日本の平和貢献について「少なくともテロ対策で、力による平和はピント外れ」と断じた。静岡も「手間暇かかる手続きをないがしろにせず、力ではなく議論で対立や分断を乗り越える姿勢が求められる」とした。

 北海道は、格差の拡大により多様性を認める寛容さが失われつつあり、テロの土壌となっていると説き、日本についても「成長を下支えする人口の減少が続く。いつまでも、成長こそが豊かさや幸福を実現するというGDP信仰にすがり続けていいのか」と、価値観の転換を提起した。

人口増と高度成長から転換を

 河北も安倍政権の「一億総活躍社会」「地方創生」の両看板に批判的な視点から「人口減少と所有欲求の減退という低成長の根本要因を直視せず、目先の企業利益に固執、個人や地方を二の次にして国際競争をしのごうとすれば、社会の基盤を崩すことになろう」と断じた。岩手日報も「国の行方は時代の潮流をきちんと認識しているだろうか。人口増加と高度成長という、かつての夢をまだ追い求めているのではないか」と疑問を呈した。

 山形は「人口減少が続く地方には閉塞感が漂う」としながらも「県民の英知を結集し、地方再生へ確かな一歩を踏み出す年にしたい」と訴えた。新潟は安倍政権の「地方創生」に対し「一億総活躍社会」の陰に隠れた感がある、と批判的ながら「とはいえ、地方の危機は地方の知恵で乗り切るという創生の考え方は重要だ」「大切なのは古里を思う住民が参加し、地元の誇りを掘り起こしていく試みだろう。特に若い世代の声をどう生かすかだ」と提起した。

 山陰中央は「地域の将来を描くには、若者と女性の力を引き出すことだ」と指摘。結婚し子供を持つこと、介護と仕事の両立など細かなニーズに向き合うため、産業振興と企業の力が欠かせないとした。大分合同は、地域活性化に住民は往々にして行政に頼りがちだとして「行政が脇役に回り、民間に委ねる領域を拡大してみてはどうだろう」と提案。西日本は「国は地域の集合体」「地域の主役は住民であり、次世代の夢と可能性を広げていくことが『創生』の出発点」と強調した。山陽は東京圏も今後、医療や介護がひっ迫する事態が予測されることを挙げて「条件がより有利な地方の居住者を増やすことにより解決を図る」と、価値観の転換と新たなモデルの構築を求めた。

 3月には東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から5年を迎える。福島民報は政府がことし春からの5年間を「復興・創生期間」としたことを挙げ「『福島の復興なくして日本の復興なし』との安倍晋三首相の言葉を実現するときだ」と展望。福島民友は子どもたちに自信と誇りをもって手渡せる福島県をつくるために立ち上がる年にしたい、とし「必要なことは、県民が主体となって、県の『内側』から自発、自律的に復興を目指していこうとする姿勢だ」と呼びかけた。

 昨年は北陸新幹線長野~金沢間が開業。北日本は「2年目の観光推進に力を注ぐのはもちろんだが、あらためて『生活の質』に目を向けたい」とした。北國は「気掛かりなのは開業の圧倒的な威力があちこちにきしみを生んでいること」として、落ち着きを取り戻し文化立県の原点に戻るときだと説いた。

ニュース34紙、企画・連載41紙

 【1面トップ】34紙がニュース、21紙が企画、20紙が連載でスタートした。

 《ニュース》北海道「貨物新幹線 国交省など 20年代実用化」は、今春の北海道新幹線開業を前に、国交省などが貨物輸送の検討を開始したことを報じた。京都は「新元素113番『理研の発見』 認定日本初 ジャポニウム案」を1面トップとした。また、西日本「北九州市が子ども食堂 自治体初 新年度開設へ」、熊本日日「阿蘇の野草堆肥に善玉菌 土壌中で抗菌効果 染谷佐賀大教授ら調査・研究で判明」は、それぞれ地域のニュースを年初の1面トップとして報じた。

 《1面連載》岩手日報「てんでんこ 未来へ」は、1896年の明治三陸大津波のころから伝わる言葉から、大きな犠牲を払った東日本大震災を、未来へ、世界へ語り継ぐ意義を説いた。静岡「沈黙の駿河湾 東海地震説40年」、高知「いのぐ 第1部 昭和南海地震の記憶」も、予想される巨大地震に警鐘を鳴らした。このほか、「18歳選挙権」を取り上げた連載や特集企画も目立った。(審査室)

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