6月 7日付 原則守り粘り強い交渉を

経済協力のみ先行に危惧も

 北方領土問題の解決に向け、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が「新たな発想に基づくアプローチ」で交渉を進めることで一致した。会談はロシア南部のソチで5月6日に実施、安倍首相は9月にもウラジオストクを訪れ、プーチン大統領と再び会談する予定で、領土問題の進展に強い意欲をにじませている。多くの新聞が社説などに取り上げ、粘り強い交渉が必要とする主張が多かった。

新アプローチに理解も

 安倍首相が、エネルギー開発や極東の産業振興など8項目の経済協力を提案したことについて、北海道は「重層的に関係を深める中で領土問題を動かすことが『新たなアプローチ』の一環なら理解できる」とした上で、「ロシア経済は苦境にある。ロシアが日本に接近を強める理由もそこにある」と分析、「領土問題を置き去りのまま、経済協力だけが先行することがあってはならない」と四島返還の方針を崩さないようクギを刺した。中日・東京は、新たなアプローチが何を指すのか不明としながらも「日本側の原則を堅持しつつ、経済協力を軸に幅広い関係を構築する中で、ロシア側に歩み寄りを促す外交手法は妥当であろう」とし、「首脳間の信頼醸成に努め、領土問題の解決に向けた気運を高めるべきだ」と指摘した。交渉を巡る日露の立場の違いは埋め難いとする河北は「首脳同士が妥協の決断を下す政治環境を醸成すること」が必要だとしたが、主導権を握られている雰囲気に懸念を示し、経済協力提案を「『ぜひ実現したい』と乗り気のプーチン氏に『食い逃げ』される恐れはないのか」と危惧する。

 経済協力だけで直ちに領土問題が進展することはないと判断する読売は「ロシアが中国との対抗上、日本との関係強化に本腰を入れる状況を作り出せるかどうかが、一つのカギではないか」と指摘。プーチン氏が、中国の軍事力強化に警戒感を強めているとされることを挙げ、「(プーチン氏は)日露安保協力に期待を示した。日本も、中国や北朝鮮を牽制(けんせい)するため、協力を進める意義は小さくない」と分析する。下野は、クリミア編入問題や北方領土の実効支配をアピールする現状を掲げ、ロシアが「領土問題での譲歩は困難との見方が強い」と主張。「大統領の訪日は『最も適切な時期を探る』と確認しただけで進展はなかった。首相の強い意欲を具体的な成果につなげられるのかが問われる」と結論づけた。

 では、北方領土問題の進展には何が必要なのだろうか。毎日は「突破口を開くには、両首脳の政治決断が必要だ。それには過去の行為の正当化に固執するのではなく、幅広い建設的な関係構築の中から可能性を探る必要がある。それを確認できたとすれば、平和条約交渉の次のステップに寄与するだろう」「当面は地道な協力を重ねつつ、長期的な可能性を探るしかないだろう」と説く。産経は「4島返還の基本方針を踏み外す『新発想』は論外」と主張。経済協力は「ロシアが領土交渉の進展をちらつかせる際には、必ず経済的実利を狙ってきた歴史を忘れてはならない」とした上でクリミア併合問題をあげ、「『力による現状変更』であり、北方領土と同根の暴挙である。対露の経済協力には慎重であるべきだ」と厳しい見方をした。京都は、一向に解決の糸口が見つからない現状に対し、冷静に相手の対応を見極める必要がある、と指摘。「領土交渉を急ぐあまり、『力による現状変更』を認めない国際秩序を揺るがすようなことがあってはならない」と警鐘を鳴らす。愛媛も「ロシアが経済協力を引き出す外交カードとして北方領土を利用してきた経緯を忘れてはなるまい」とし、「足元を見られることのないよう、具体的なシナリオを描き、毅然とした対応に徹する必要がある」と訴えた。

活路見いだす具体論を

 西日本は、新たな発想のアプローチに賛同しつつ、「問題はその具体化だ。(中略)具体論に進まなければ『新たなアプローチ』はまたもやかけ声倒れに終わる」と危惧、首脳同士の対話を重ね領土問題の活路を見いだしてほしいと注文をつけた。日経は「大統領は問題解決には『恒常的な対話』が必要とし、それを制限したのは日本政府だとしてきた。首相はソチ訪問で『今までの停滞を打破する手応えを得られた』というが、ロシア側に妥協を促すには首脳対話の継続が欠かせない」と指摘した。朝日は「首脳同士が対話を重ね、関係改善を図ることには意味がある」とする一方、守るべき原則を忘れてはならないと提言。力による現状変更は許されないとして、「米欧などと緊密に連携してこそ、ロシアとの対話も成果をあげられる。(中略)基本的な考え方について、できる限り国民に説明し、理解を広げる努力をすべきだ」と訴えた。(審査室)

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