8月 2日付 早急な改憲発議に「待った」

経済再生など優先課題示す

 与党が圧勝した第24回参院選。衆参両院で改憲勢力が3分の2を占めるに至り、その気になれば改憲発議が可能な状態になった。しかし与党側は選挙戦で、この問題にほとんど触れておらず、選挙結果を伝えた7月11日付の各紙社説は「待った」をかける声が目立った。

 「憲法改正にとって、改憲勢力の拡大は前進ではある」。選挙結果をこう位置付けたのは読売だ。そのうえで「これで改正発議が現実味を帯びたとみるのは早計だろう」と続けた。

 改憲には国民投票で過半数の賛成がいる。「このハードルを考えれば、野党第1党の民進党も含め、幅広い合意が可能な項目の改正を追求するのが現実的」とし、まずは国会の憲法調査会で「改正テーマの絞り込みの議論を冷静に深めることが重要」とした。

 産経は「改憲や安全保障体制の強化などに総力を挙げるべきである」と、安倍政権に迫った。「この勝利を懸案解決に結びつける責任を首相は負った」。ただ、「与党の勝利は野党の無策に助けられた面も少なくない」とし、まずは「経済再生が遅れた理由を直視し、成長基盤の強化に腰を据えること」を求めている。

 日経も「改憲より先にやるべきことがある」と説く。憲法改正については「大災害への備えとしての緊急事態条項」や「選挙区の合区を回避するための改正」など、「ただちに議論の対象となるテーマがあるのは間違いない」としたうえで「改憲を最優先の政治課題として取り組むかどうかは疑問」「まず経済再生に政権の力を集中し改憲は議論段階として取り組んでいくのが適当」としている。

「後出し」は許されない

 これに対して朝日は、安倍政権の改憲への取り組みを「選挙が始まったとたん、積極的な発言を封印」し、「選挙が終われば再びアクセルをふかす」のは「不誠実な『後出し』」だと指摘。「この選挙結果で、憲法改正に国民からゴーサインが出たとは決していえない」とクギを刺す。

 中日・東京も「憲法は、国民が政治権力を律するためにある」「どの部分をなぜ改正するのか、国民に事前に問い掛けることなく、参院選で『国民の信を得た』として改正に着手するような暴挙を許してはならない」と断じた。

 毎日は、首相が秋の臨時国会から「憲法審査会を動かす意向」を示しているのに対し、「審査会の再開にあたっては条件がある」と切り出し、自民党が野党時代にまとめた「憲法改正草案をまず破棄することだ」と求めた。

 この草案を「日本の伝統を過度に賛美」「国民の権利を『公益及び公の秩序』の名の下に制限」「明らかに近代民主主義の流れに逆行」と批判。「自民党が草案を最終目標に掲げている限り、与野党による落ち着いた議論を阻害し続ける」とした。

 「『白紙委任』はしていない」(福井)、「改憲は支持されていない」(信濃毎日)、「謙虚な政権運営が必要だ」(山陰中央)―。こんな声が地方紙からも続いた。

基地、合区にも言及

 6県のうち5県で野党統一候補が1人区の「与野党決戦」を制した東北。河北も、改憲に関して安倍首相は「有権者から『白紙委任』を受けたのではないことを肝に銘じるべきだ」としたうえで、野党共闘について言及。「全国に先駆けて野党共闘を成し遂げたのが宮城」「この宮城方式が東北の他県に波及効果をもたらしたのは間違いない」とし、東北の有権者が「地方に恩恵をもたらしていないアベノミクスの成長神話に懐疑的な目を持っていたのは確かだろう」との見方を示した。

 福島民友も「今回の選挙で改憲論議推進への信認を得たとは言えない」。そのうえで「復興に与党、野党の区別はない。国が前面に立ち、復興の加速に全力を尽くしてもらいたい」と求めた。

 福島とともに現職閣僚が落選した沖縄。ここでは「3分の2」とはまた別の政治の流れで「分水嶺となる決定的な選挙結果」(沖タイ)だった。「民主政治を前提にする限り、新基地計画を維持するのは、もはや不可能」、琉球も「新基地建設に反対する民意はかつてないほど厚みを増した」と唱えた。

 2県を束ねる合区が初めて現れたのも今回の特徴だ。徳島・高知選挙区は与野党とも徳島県出身者が出馬。全国的にはやや持ち直した投票率が、高知県45・52%)は過去最低だった前回をさらに下回った。「民意をすくい取る上で、合区制度は深刻な課題を残した」と高知。徳島も「地方の住民を軽んじる合区は今回限りで廃止すべきだ」と訴えている。(審査室) 

前のページ

次のページ

ページの先頭へ