12月 6日付 「米国第一」主義に懸念

アジア・太平洋への影響注視

 米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏(共和党)が決まった。米国第一の孤立主義の標榜(ひょうぼう)や女性蔑視などの暴言で物議を醸し、開票直前までヒラリー・クリントン氏(民主党)優勢が伝えられただけに、トランプ氏大逆転は世界中が驚きをもって受け止めた。その後、「就任初日に環太平洋連携協定(TPP)離脱宣言」表明や側近に女性起用など新たな動きも相次いだ。米国はどこへ向かうのか、日本の対応は...。当選翌日(11月10日)、多くの社が社説で論じた。

 激震、衝撃、予測不能。各紙は選挙結果をさまざまな言葉で表現したが、ポピュリズム(大衆迎合政治)による「トランプリスク」を見据え、冷静な対応が必要という論調が多かった。

 朝日は「敵を作り、対決を自演したトランプ氏の手法は、露骨なポピュリズム」と断じ、「米国の国際的な指導力に疑問符がつくことは間違いない」と指摘。「米外交の経験と見識に富む人材を最大限活用する政権をつくってほしい」と求めた上で「日本など同盟国はその次期政権と緊密な関係づくりを急ぎ、ねばり強く国際協調の重みを説明していく必要がある」とした。毎日は「トランプ流『米国第一』主義が先行すれば国際関係は流動化する」と、世界の漂流を危惧。「従来の秩序を壊した後にどう再建するのか、その道筋が見えにくい。候補者討論会も低次元な批判合戦に終始し『最も醜い大統領選』と言われた。トランプ氏は今後、より具体的な政策を示してほしい」と強調した。

社会の分裂修復求める

 読売は中露の影響力が拡大するなか「米主導の国際秩序をこれ以上揺るがしてはならないだろう」とした上で、日本政府に対し「新政権の方針を慎重に見極めながら、同盟の新たな在り方を検討すべきである。北朝鮮の核・ミサイル開発などで不透明さを増すアジア情勢への対応について、議論を深めねばなるまい」と提言した。日経も「政権移行期の権力の空白を突いて中国が南シナ海や東シナ海で新たな動きに出る可能性もなしとはしない。日本政府はまずはこうした事態に備えねばならない」。そのために「アジア・太平洋地域での貿易・投資促進が日米両国にとって極めて重要である点を新大統領に粘り強く説いていくことが欠かせない」と訴えた。

 「米国の抱える矛盾があらわになった大統領選」と分析した中日・東京は「旋風を巻き起こした本人には、それを果実に変える責任がある」と強調。顧みられなかった人々への配慮が、選挙戦の暴言により深まった米社会の分断を埋めるきっかけになるとし「国民が再びアメリカン・ドリームを追うことのできる社会の実現をトランプ氏に期待」した。産経は「東シナ海の尖閣諸島の危機を抱える日本として、自ら防衛努力を強める覚悟を持つことである」と求めた。TPPについては、共和党は本来、自由貿易に前向きで理念を実現する責任があり「日本が確実に国会手続きを進めるのは当然」とした上で「トランプ氏には、融和と超大国としての責任を語ってほしい」と訴えた。

メディア不信も指摘

 東奥、茨城、下野などは、現状への米国民の怒りは変革への希求を示すと前置きした上で「同盟国を軽視する政策ではなく、現実的な政策を進めてほしい」と注文をつけ「米国の草の根の意向が政治を大きく動かすことを肝に銘じ、米国の動向を注視したい」と論じた。北海道は「看過できないのは、日韓両国の核武装容認発言だ。核廃絶への動きが国際社会の潮流になっていることを考えれば、明らかに逆行する」とし「これからは自由主義陣営の指導者である。妄言を発することは許されない」と強調した。

 河北は過激な言動が米社会に分断を生んだことを真摯(しんし)に省みるべきだと主張。英国の欧州連合(EU)離脱決定にみられる「孤立主義・保護主義が、この超大国でも大きな潮流となっている」ことを憂慮し「グローバル化の『明』と『暗』にしっかりと目を凝らすよう、われわれにも促しているのではないか」と分析した。

 「ジャーナリズムの真価が問われている」との見方を示す京都は「『本音』をさらけ出して支持を得る政治家が世界各地で台頭している」と懸念、トランプ氏の危険性を指摘しても米国民に届かなかったことを「既存メディアへの不信の高まり」と捉え、日本の報道機関にも注意を促した。

 今回の選挙を「世界史に刻まれる番狂わせ」という南日本は、移民などを「敵視する主張への支持が広がったこと」を取り上げ「排外主義は、自由と開拓精神を重んじる建国の精神にそぐわない」として、勝利宣言の「協同するすべての国と良い関係を築く」という文言に触れ「この言葉を行動で示してほしい」と求めた。(審査室)

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