1月10日付 「分断」をどう超えるか考察

国際協調と日本の責任論じる

 米国第一主義を掲げるトランプ氏の大統領就任を控え、世界各地で目立つのは「分断」「断絶」「排除」などのキーワード。その中で今年は、国際社会の協調とともに、日本がどんな役割を果たしていくのかが問われる。国内では施行70年を迎えた憲法や、天皇陛下の退位問題を巡る論議も続く。在京各紙の元日紙面は様々に考察、分析を試みた。

2紙が独自ダネ、4紙企画

 【1面トップ】読売、産経が独自ニュースを報じ、朝日、毎日、日経、東京が企画を据えた。

 読売「中国海底に命名攻勢 日本のEEZ周辺 権益拡大図る」=中国が日本の排他的経済水域周辺などで海底地形を調査した上、国際的に統一された海底地形名を定める機関に対し、中国語による命名申請を2016年に活発化させていたことが明らかになったと伝えた。中国は海洋権益拡大に向け、海上だけでなく海底でも動きを加速させていると意義付け。16年は前年の倍以上の50件を申請。16件が受理され、34件は「沿岸国との係争に発展する深刻な懸念がある」などの理由で受理されていないという。

 産経「小池知事、都議選に30人超 自民へ"刺客" 新党準備」=東京都の小池百合子知事が夏の都議選に、自身が主宰する政治塾「希望の塾」などからの30人超の候補者擁立に向けて本格検討に入ったと報じた。都知事選で小池氏を支援し自民党都連から除名された豊島区議が立ち上げた政治団体「都民ファーストの会」を基盤に、小池氏を代表とする地域政党の設立準備も進めるとしている。

 朝日 連載「我々はどこから来てどこへ向かうのか」=トランプ次期大統領は米主導の世界秩序の終わりを予感させ、世界経済の長期停滞、所得格差の広がりが生む不信と分断など、歴史の「断層」の出来事が相次ぐとして、その先を見通すことを試みた。フランスの画家ゴーギャンの「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」の写真とともに企画の狙いを説明した。初回は、米大統領選や英国の欧州連合(EU)離脱を振り返り、多数決が分断を深める民主主義の展望を探った。

 毎日 随時掲載「現場報告 トランプと世界」=トランプ米大統領誕生の背景や影響を現場から報告した。昨年12月から続く企画。今回は白人優越主義を中心に差別問題に焦点を当てた。米東部の田舎町のネオナチ組織幹部と妻、入会を希望する少年とその父親らに取材した。その上で差別監視団体は「トランプ氏の勝利で、白人優越主義者はタブーだった自分たちの主張が正当化されたと感じている」と分析し、多文化主義が激しい攻撃にさらされるとみていると紹介した。

 日経 連載「断絶Disruptionを超えて」=技術の進歩やグローバリゼーションによって常識が崩れ、昨日までとは違う「断絶」の時代が迫る。逆境でこそ浮かぶ知恵や、進化する技術があるとして、新たな取り組みを紹介した。初回は、車のエンジンの点火プラグで世界市場の4割を占めながら、畑違いの医療分野に進む日本特殊陶業などを取り上げた。同社はセラミック技術を人工骨づくりに生かす。大口取引先のトヨタ自動車の「脱・ガソリン車」宣言が契機という。

 東京 連載「包容社会 分断を超えて」=苦しむ人々を苦境から脱出させる社会、包容社会を目指す人々にインタビューした。トランプ氏が米大統領に就任する今年、人々の不安は排除や分断の動きを強める恐れがあり、その不安を解消するのには社会の包容力が必要だという。初回は、トランプ氏に侮辱された米兵遺族のイスラム教徒、キズル・カーン弁護士。トランプ氏に対処するには声を上げること、声を組織化し、抗議することだと強調する。

憲法70年巡り論議

 【社説・論説】トランプ米大統領誕生を控え国際協調と日本の責任を論じた。施行70年の憲法の論考も目に付いた。

 朝日「憲法70年の年明けに 『立憲』の理念をより深く」=憲法が政治の失調に対する防波堤として大切な役割を担ってきたと主張。民主主義には独裁者が民主的に選ばれるような危うさがあるが、立憲主義は民主主義の暴走への歯止めとなると訴える。「憲法を論じるのなら、立憲主義についての真っ当な理解をより一層深めることが前提でなければならない」と説き、さらには「個人、とりわけ少数者の権利を守るために、立憲主義を使いこなす。それは今、主要国共通の課題といっていい」と指摘した。

 毎日「歴史の転機 日本の針路は 世界とつながってこそ」=トランプ氏の米大統領就任で、国際秩序は流動化し国際経済は収縮に向かうと予測。日本は他国との平和的な結びつきが生命線だと説く。財政の安定に加え、社会の構成員としての一体感を保って民主主義を機能させるために、中間的な所得層をこれ以上細らせないことが最低限の条件と指摘。「持続が可能な国内システムの再構築に努めながら、臆することなく、世界とのつながりを求めよう」と呼び掛けた。

 読売「反グローバリズムの拡大防げ トランプ外交への対応が必要だ」=反グローバリズムや排他的なポピュリズムが広がる中で、国際社会の結束を説く。尖閣諸島周辺で中国の膨張圧力に直面し、ロシアと北方領土交渉を抱える日本は、トランプ米大統領の外交にとりわけ目を凝らし「日米同盟による抑止力の強化が、東アジア地域の安定に不可欠で、米国の国益にも適うことを、粘り強く説明していくべきだ」と強調した。また、保護主義を批判し、自由貿易で成長復活を目指すべきだと訴えた。

 日経「揺れる世界と日本 自由主義の旗守り、活力取り戻せ」=トランプ米大統領の就任など混迷する世界で、日本は自由主義の旗を掲げ続ける責務を負っていると指摘。安倍首相に対し「トランプ氏に環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を粘り強く説くべきだし、並行してEUや中韓との協議を急ぎ自由貿易協定(FTA)で合意を目指すべきだ」と求めた。もう一つの課題として、加速するデジタル社会への対応も挙げ、デジタルに慣れ親しんでいる若手人材が活躍できる環境づくりを求めた。

 産経「年のはじめに 自ら日本の活路を開こう」=来年の明治維新150年を前に「再び国家の覚悟を決めるかもしれない節目の到来に備えたい」と課題を列挙。「針路を定める最たるもの」として「憲法を国民の手に取り戻す作業」を挙げ、建国の理念を再認識し自力歩行を始めるときだと訴えた。天皇陛下の譲位問題では「ご意向を踏まえつつ、皇統の安泰も視野に入れた見直しをどう行うか」が「知恵の絞りどころ」と指摘。少子高齢化と人口減少、労働力不足や、2020年の東京五輪の準備などにも触れた。

 東京「日本の平和主義 不戦を誇る国であれ 年のはじめに考える」=日本の平和主義を二つの観点から考察した。一つは先の大戦に対する反省。戦争の精神史を振り返り「最大の反省は人間が人間扱いされなかったこと」とし、戦後は元兵士と戦争体験者が不戦を守ってきたとして「命がけの訴え」だと指摘した。二つ目は戦後憲法との関係。ノルウェーの積極的平和主義も紹介しながら、日本国憲法の平和主義は武力によらない平和の実現だと強調し、「理想を高く掲げずして人類の前進はありえない」と訴えた。

 【主な連載企画】朝日「我々はどこから来てどこへ向かうのか」・社会面「手ざわリアル」、毎日社会面「東京2020への伝言」(12月31日から)・くらしナビ面「健康狂想曲」、読売「2017問う」(1月3日から)・社会面「あなたとともに」(同)、日経「断絶を超えて」、社会面「発信 発進2017」(12月30日から)、産経「平成30年史」・社会面「拉致40年 なぜ救えないのか」、東京「包容社会 分断を超えて」・生活面「いのちの響き」(随時掲載)

 【元日号ページ数】かっこ内の数字は2016年、15年の順

 朝日114(114、120) ▽毎日76(76、76)▽読売94(112、112)▽日経100(100、104)▽産経76(80、80)▽東京58(56、56)(審査室)

ページの先頭へ