1月17日付 持続可能な社会を目指せ

大衆迎合と格差の要因を分析

 トランプショックを引きずったまま迎えた新年。地方紙の元日社説もポピュリズムや分断、格差といった「ショック」の要因を見つめるものが続いた。国際情勢は不透明感が増し、国内は人口減が進む。混迷からどう脱するか。今こそ、背伸びしない「等身大の発展」が今後のカギだといった論調が目を引いた。

人口減に新たな価値付け

 「この『熱狂』は、これからどこへ向かうのだろうか」と切り出したのが被爆地・広島の中国。昨年「核兵器なき世界」を掲げるオバマ米大統領の訪問を受けた。ところが米国民は「核戦力の強化」を公言するトランプ氏を次期大統領に選んだ。「民主主義の先進地で何が起きているのか」。懸念を示したうえで、昨年101歳で亡くなったジャーナリストむのたけじさんの「強風でも散らぬ葉がある。無風でも散る葉がある」という言葉を紹介。「民主主義は自ら鍛えるものである、と受け止めたい」と、覚悟を示した。

 静岡も、むのさんの言葉を引いて訴えた。「絶望のなかにも希望はある」「悲しむべき現実をまっすぐに見て、そこから逃げてはだめだ」。人種間の対立や富裕層と低所得層のあつれきが増幅、ポピュリズムの台頭を招きかねない。そういう時こそ「理性を働かせて半歩でも前に進みたい」。

 「ポピュリズムはデモクラシーの後を影のようについてくる」と記したのは河北。「今年は総選挙があるやも知れぬ。ポピュリズムの『正体』を見破る目も養わなければならない」と説いた。

 各紙とも「『日本の没落』を意識するときがある」(京都)、「昨年は国内外でさまざまな『壁』をみせつけられることが度々あった」(山口)、「今、『時代の曲がり角』にあるのは紛れもありません」(神奈川)。表現に違いはあっても時代の転換点に立つという認識は共通する。

 難局をいかに乗り越えるか。「グローカル」という答えを示したのが北海道だ。「グローバルとローカルを掛け合わせた造語である。世界規模の視点で考え、地域で活動することを意味する企業戦略だ。この用語に新たな発想を吹き込みたい。グローバル化で生まれた格差・分断をローカル的な包摂で是正する」。そんなグローカルは「九州にぴったり」と西日本は表明した。「一村一品運動」などを挙げ「九州が主役となって日本の元気をけん引する」と宣した。

 その九州は昨年、震度7に2度見舞われた。熊本日日は「忘れがたい年はしかし、ともかくも過ぎ去った」としたうえで「『パワーゲーム』に逆戻りするかのような不透明感が世界を覆い始めているいま、足元の復旧・復興に追われながらも内外の激動に目をつむるわけにはいくまい」と言葉をつなぎ、「一つ一つ着実な歩みを進めたい。そして、世界に確かな地歩を築いた戦後日本の存在意義を見つめなおしたい」と打ち上げた。

 隣県の宮崎日日は「『頑張れ』でも『頑張ろう』でもない。苦しみも喜びも共に、前へ」と掲げる。そのうえで「一瞬で日常を奪うのが自然災害だとしたら、じわじわと日常や地域の形を変えていくのが人口減少ではないか」。解決が難しい問題だけに「ここでも大切なのは『共に前へ』の精神だろう」と説く。

 人口減について陸奥は「格差を生み出す要因の一つ」としつつ、衰退に向かっているのではなく「成熟期にある」と捉えるべきだと提起。「豊かな自然に恵まれ、所得が低いながらも暮らしやすい地域コミュニティーなどがまだ残る地方こそ、成熟時代を生き抜く資源の宝庫」とする。秋田魁も「全国最速のペースで人口減や高齢化が進む本県だからこそ、持続可能な社会モデルを考える上で大きな役割を果たせるはずだ。希望を見いだしながら、着実に前へ進みたい」。

 山陽も「縮小」ではなく「縮充」との見方を示し、「悲観せず、新たな価値を盛り込むことを真剣に考える時だ。東京と地方がともに持続可能となる社会を目指したい」。大分合同も「人口減少を食い止めるのに特効薬はないだろう。背伸びをせず息の長い取り組みが成否の鍵を握る」として、地道な移住策などを紹介。「現実を見詰め、等身大で着実な発展を目指したい」と訴える。

他者への想像力と寛容を

 改憲勢力が衆参両院で 3分の2を占めた今、「憲法について考えた」のが神戸。初回は過労死問題を取り上げ、「個人の自由や権利、そして生命が危うくなる事態に陥ったときこそ、憲法の出番」「国民が憲法に向き合い、活用していく中で、その精神が力を発揮する」と唱えた。

 愛媛は「ともすれば『立憲主義』を軽視する傾向がある安倍政権に、しかとくぎを刺しておきたい」と注文。「混沌の時代だからこそ、国同士の話し合いが極めて重要」「日本がそれを率先したい」「平和国家の歩みを貫き、その地位を確たるものにするべきだ」と主張する。

 昨年末に起きた糸魚川大火から書きおこしたのが新潟。被災者を「全力で支えたい」としたうえで、不安定化する世界情勢に目を転じ、「環日本海ブームの際に提唱された『日本海を平和の海に』は、今にこそ生きる言葉ではないか」「新潟から平和と寛容の精神を発信する年としたい」と唱えた。

 政務活動費の不正による「富山の負のイメージ」を払拭(ふっしょく)する1年にしたい。そう訴えたのは北日本。県内各議会で「思い切った改革」を推し進め「富山再生元年」にしたいと述べた。福井は「幸福度日本一」の県なのに「肝心の県内での評価は芳しくない」と嘆く。「ともすれば自虐的で主観的幸福感に欠ける県民性を乗り越え、未来につながる希望の福井を創造したい」。高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まり、「原発に頼らない地域経済の構築が喫緊の課題」「地域で最大限生かし切る持続可能な地産地消社会の在り方を考えたい」と打ち出した。

 福島民報は「原発事故災害が現在も継続中」としたうえで「日本の歴史でもまれな苦難の経験から、本県では新たな県民性が生まれつつある」「異なる立場への想像力、他者への寛容、献身といった価値観も膨らませた」との見方を示した。福島民友も、県産酒の鑑評会での成績や、県内の温泉が「プロが選ぶホテル・旅館100選」の王座になったことから「『やればできる』の手本が各地で育まれていることを『福島創生』への糧にしたい」と胸を張った。

 沖縄が日本に復帰して45年。琉球は「米軍基地の過重な負担は今も重くのしかかる」うえ「安倍政権になってからは、日本政府が県民弾圧に加わったと言わざるを得ない」と憤りつつ、「主体性を確立して日米両政府を突き動かし、県民自らの手で『沖縄の未来』を切り開きたい」と決意を示す。沖タイも「沖縄の先人たちは、国策に翻弄されながらも人間としての尊厳と『自治・自立』を求め、困難な道を切り開いてきた」「『危機』を『機会』に転換させる知恵と行動力が、いまほど求められているときはない」と訴えている。

ニュース24紙、企画・連載50紙

 【1面トップ】24紙がニュース、35紙が企画、15紙が連載でスタートした。

 《ニュース》北海道「医療ジェット機導入 国と道 国内初 新年度から」は、急患を札幌圏に高速搬送する医療用小型ジェット機の導入計画を報じた。信濃毎日「『全県1通学区』検討へ 県立高4通学区制見直し議論」は、県教委が高校の通学区を見直す方針を固めたことを報じた。地域のニュースを据えたのは他に中日「愛知県 自動運転リード 全国初 無人公道実験へ」、西日本「中国狙い詐欺 福岡拠点? 『かけ子』か 台湾人数十人」など。

 《1面連載》秋田魁「4割の扉 超高齢秋田を歩く」、沖タイ「銀髪の時代 『老い』を生きる」は、超高齢社会と向き合う道を探る。新潟「イマジン―ともに生きたい」は、障害者の日常を通じ人間らしく生きるとは何かを考える。北日本「民意と歩む 議会再生」は、政務活動費の不正請求から地方議会がどのように再生を図るのかを検証する。(審査室)

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