2月 7日付 一国主義の危うさ指摘

巨大権力の使い方を注視

 第45代米大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。就任演説では「米国第一主義」を強調し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱や医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃など、政策の大転換を印象づけた。過激な言動は世界をどう変え、日本にどんな影響を及ぼすのか。各社は大型社説を構えるなど、始動したトランプ政権を論評した。

透ける「力の支配」

 就任演説を分析した読売は「『古い同盟を強化し、新しい同盟も作る』と述べたが、日米同盟をどうとらえるのか。外交・安全保障の前提として、『各国が自国の利益を最優先するのは当然の権利だ』とも語った。同盟関係と国際協調よりも、『力の支配』や2国間の取引を重視する考えが透けて見える。『他国の軍を助成する一方で、我々の軍の消耗を容認してきた』と主張したのも的外れである」と指摘した。

 中日・東京も「米国の繁栄と成功で生まれる『新しい国家威信』によって『分断は癒される』と語ったが、そんな簡単なものではあるまい。社会の底辺に眠っていた差別意識と偏見を解き放ったトランプ氏には、それを鎮める責任がある。まずは大統領という立場をわきまえ、言動を慎むことだ」と批判した。

 毎日は「米国社会に走る断層の先端は海を越えて欧州やアジアにも届いているのか。いずれ世界は米国発の分断に直面するのではないか。そんな暗い予感に襲われる」として「分断を世界に広げるな」と呼び掛けた。

 朝日は「トランプ氏の米国が孤立主義の殻に閉じこもらないよう、同盟国や友好国は今こそ関与を強める必要がある。民主主義と自由の価値観の担い手として、日本が果たせる役割も大きい。自由社会の秩序をどう守り育てていくか。米国に任せきりにせず、国際社会が能動的にかかわる覚悟が問われている」と国際社会の結束を求めた。

 日経は「トランプ氏は『保護こそが繁栄と強さにつながる』と、保護貿易主義を駆使して強引に投資や雇用を呼び戻す姿勢を示した。公正さを欠いた自由貿易では自国の産業が不利になる。そんな主張ならばまだわかるが、保護主義こそ正義と言わんばかり」と評した。

 産経は「自由貿易の意義を理解せず、貿易相手国を敵視しようとする姿勢に変化がみられないのは、失望を禁じ得ない」として、「TPPが米国の離脱で発効できなければ、日本の成長戦略は根底から崩れる。日本は他の参加国との連携を強め、時間がかかっても米国の翻意を促すべきだ」と主張した。

 メディアと対立を続けるトランプ氏について京都は「会見でトランプ氏は、自身に批判的な記者の質問を拒むなど民主主義と報道・表現の自由を尊重する米国ではありえない態度をとったが、それに喝采を送る支持者も多かった。驚きであり、残念でもある。新聞を含むメディアの報道のあり方が問われている」と訴えた。

米軍経費負担増を危惧

 日本はトランプ政権とどう向き合うべきか。北海道は「安倍晋三首相は日米は『揺るぎない同盟国』と強調するが、トランプ氏は在日米軍経費のさらなる負担を求めてくるかもしれない」として「安倍政権は、そうした要求があればはね返すとともに、同盟強化の陰で過重負担に耐えてきた沖縄をどうすべきか、辺野古移設問題を含め新政権と再協議すべきだ。トランプ政権の誕生を対米追従外交を見つめ直す機会としたい」と説いた。西日本も「安倍首相は通常国会の施政方針演説で『(トランプ政権下でも)日米同盟が日本外交の基軸なのは不変の原則』と語った。しかし同盟維持に腐心するあまり、米国の要求に全て唯々諾々と従うようでは困る。不合理な要求には決然として『ノー』と言う気概がほしい」と注文をつけた。

 中国は「私たち被爆地が最も心配になるのが、そのトランプ氏が『核のボタン』を握ることだ。核兵器なき世界を模索したオバマ政権とは対極になりかねない」「トランプ政権の一国主義が、かえって軍事的な緊張と軍拡につながることを危惧する」と懸念を示した。

 一方、オスプレイの事故や元米海兵隊員による女性暴行殺人事件が起きた沖縄の琉球は「沖縄は『米軍の嘆かわしい劣化』の犠牲を受け続けている。トランプ政権には日米同盟の変質を模索する動きがある。ぜひとも普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設を見直し、県外・国外移設を検討してほしい」と期待感を込めた。

 「先の見えない不安な船出」と評した信濃毎日は「大衆迎合主義や排外主義、保護主義...。トランプ氏の政治姿勢は危ういものばかりだ。巨大な権力を適切に使い、超大国を率いていく手腕があるのか。『米国第一』をどう実行に移すか、注視していく必要がある」と締めくくった。(審査室)

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