2017年 12月5日
対北朝鮮 足並みに乱れ

非核化協議へ道筋示せ

 トランプ米大統領がアジア歴訪の一環として日本、韓国、中国を相次いで訪問した。各首脳会談では、核開発をやめない北朝鮮への対応を巡り、日米両国と中国、韓国の温度差や足並みの乱れがあらわになった。各紙は、それぞれの会談の意義や今後の課題を論じた。

米中の溝埋まらず

 読売は「圧力強化の方針を明確に打ち出さなかったのは遺憾」と中国を批判。韓国に対しても、日米韓3か国の連携強化に、及び腰の態度を示していることが懸念だとした。北朝鮮に警告した韓国国会でのトランプ氏演説は「時宜に適ったメッセージ」と評価した。

 日経は、米中について「溝は埋まっていない」「米中一体での圧力が今こそ重要だ」と強調。日米と同様に米韓の間でも、北朝鮮には強い制裁と圧力が先決と再確認した点は「一歩前進」と捉えた。

 西日本は「日米韓に対応の乱れが生じるのは、北朝鮮に核を放棄させるための共通のロードマップ(行程表)を作り上げていないことが原因ではないか」「日米韓で中長期的な戦略を擦り合わせるのが先決だろう」と提起した。

 中日・東京は韓国での演説でトランプ氏が、北朝鮮との対話の必要性にも言及したことに「『時間の無駄』とも公言してはばからなかった同じ人物が、対話を否定しない姿勢を示したことはよい」と評価。中国には、原油供給を巡る制裁決議を誠実に守るよう求めた。

 産経は、中国の習近平国家主席が「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と語ったことを巡り「大国であると強調したつもりだろう」「それを口にしたいなら、北朝鮮の核・ミサイル開発放棄へ影響力を行使すべきだった」とし「責任ある大国などとは程遠い」と断じた。

 北國は、朝鮮半島の将来像について米中首脳が深く話し合った意味は大きいと評価。韓国が夕食会に元慰安婦を招待したことなどに対し「結束強化が求められているときに、連携に水を差すような行為は残念」と批判的に論じた。

 朝日は、米中首脳会談は「協調」ムードの演出に終始し、国際社会の安定について「外交的な美辞麗句以上の責任ある姿勢は読み取れない」と分析した。

 信濃毎日は「関係国の結束が簡単ではないことも露呈した」とし、米国に安全保障を頼る日本は今後も振り回される恐れがあり「落としどころが見えないことが一番の問題だ」と指摘。毎日は日米関係を「幅広い課題を率直に議論できる」と評価しつつ、「朝鮮半島有事を想定した議論が日米両政府間でされているのなら、どの程度のリスクがあるのか、国民に説明すべきだろう」とした。

 米中関係では、京都は「足並みの乱れを突き、北朝鮮がこれまで以上に核開発を進める可能性も否定できない」と指摘。神戸も「世界に多大な影響を与える大国同士だけに、さらに歩み寄るべきではなかったか」と疑問を呈した。高知は「経済制裁の先も、対話は必要になる。両首脳は対話の道筋について突っ込んだ論議をし、国際社会に示すべきだ」と訴えた。

 北海道は北朝鮮を非核化協議に引き込む道筋を描く必要が日米両国にもあると強調。「トランプ氏にある程度自制を促すのも首相の役割だった。しかし、そんな場面はなかったようだ」と振り返った。

結束促すのは日本

 静岡は、日本が「関係国をつないで足並みをそろえさせる役割を担う必要がある」とし、熊本日日は「米国の姿勢を支持するだけではなく、外交的解決という目標を共有するための働き掛けも必要ではないか」と問うた。中国は「『蜜月』ぶりを強調するだけで課題山積の現状を打破する道筋は開けるのだろうか」と疑問を示した。

 トランプ氏は北朝鮮拉致被害者の家族と面会。長崎は「核と拉致という二つの難問をどう解決していくのか、道筋は示されていない。家族らから具体的な行動を求める声が上がったのは当然だ」と指摘。新潟は「解決へ一刻の猶予も許されない。家族にとっての悲願は被害者の帰国である」「事態の進展につなげなければ意味はない」と断じた。河北も「具体的な行動を起こすべき時だ」と注文した。

 トランプ氏の米国製武器の大量購入への期待に、安倍首相が前向きな姿勢を見せたことに、徳島は「北朝鮮の脅威を強調するあまり、防衛費をなし崩し的に増大させていくのは許されない」と批判。福井は「国会の議論もないままであり問題だろう。トランプ氏のディールにまんまと乗せられたのではないか」との見方を示した。

 琉球は「軍事的選択は決して認められない」「米軍基地が集中する沖縄の危険度は一層高まる」と強調。沖タイは「揺るぎない同盟の絆はいびつな沖縄の犠牲の上に成り立っている」「沖縄の不安には何も応えておらず、とても納得できない」と断じた。(審査室)

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