2018年 2月6日
合意軽視の変節と批判

日本は冷静に対応を

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は1月9日、2015年の慰安婦問題を巡る日韓合意への対応方針を発表した。公式合意だった事実を認め、再交渉は要求しないとする一方、日本に自発的な謝罪を期待し、事実上の追加措置を求めた。各紙の社説は、韓国外交省の作業部会が昨年12月27日に検証報告書を公表した際の社説も含め、韓国の対応を批判する論調が相次いだ。

対北朝鮮外交に影響も

 北日本は「もうこれで最後にしよう、二度と蒸し返すのはやめよう。そう確認し合ったはずの相手が、たった2年で態度を変える。受け入れられるはずがない」。読売は「自ら果たすべき約束は棚に上げ、日本側にさらなる譲歩を求める。韓国の文在寅政権の態度は、外交常識に外れ、非礼である。両国関係の破綻につながりかねない」と主張し、検証報告書については「朴槿恵前政権の交渉姿勢の指弾が中心で、合意の瑕疵(かし)について説得力のある指摘はなかった。にもかかわらず、日本に責任を転嫁するのは筋違いだ」と論じた。

 南日本は「韓国では、北朝鮮情勢で韓国の協力を重視せざるを得ない日本との関係が慰安婦問題でこじれても『致命的な状況は避けられる』との声もあるようだ。もしそうならあまりに思慮を欠いている」との見方を示した。日経は「日韓合意の精神を実質的に骨抜きにする内容で、極めて遺憾だ」と前置きし、「日韓の相互不信が深まれば、北朝鮮の核問題を巡る日米韓の連携にも水を差しかねない。それこそ北朝鮮の思うつぼだ。韓国の文政権には慎重で一貫性のある外交を進めてもらいたい」と注文を付けた。

 韓国政府は、合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」に日本政府が拠出した10億円を韓国政府予算で充当すると表明した。毎日は「元慰安婦の支援団体が日本に突き返せと主張していることを意識したのだろう。だが、政府予算からの拠出は日本が国家としての責任を明確にした措置だ。それを否定しては合意の根幹を傷つけてしまう」と指摘。「そもそも政府予算からの拠出は韓国側が要求してきたものだ」として、「政権交代があっても国家間の約束は守るというのが国際常識だ」と強調した。北海道は、文大統領が「問題解決に向けて良い目的で使われるなら望ましい」と述べたことに触れ、「では、これまでの目的が間違っていたのか。韓国が出すという10億円はどんな趣旨のお金なのか」と疑問を呈した。

 産経は「謝罪外交を繰り返してきた日本の足元をみて、韓国側がまたもこれに甘えようというなら、いいかげんにしてもらいたい。それがかえって反日世論を勢いづかせ、問題をこじらせてきた反省から、日本は毅然(きぜん)とした態度を貫くべきである」と断じた。また、「ソウルの日本大使館前の慰安婦像撤去に努力すると約束しながら果たされていない。像は、慰安婦について旧日本軍が強制連行した『性奴隷』などと歴史をゆがめ、日本を非難する運動の象徴である。放置は許されない」、信濃毎日も「日本の拠出金を財源として財団が行った現金支給事業では、合意の時点で存命だった元慰安婦47人のうち36人が受け取ったか、受け取る意思を示した。理解と納得をさらに得られるよう努力するのが本来の姿勢ではないか」と、韓国が合意を順守するよう求めた。

当事者支援が第一

 日本に冷静な対応を求める論調も目立った。静岡は「韓国の新方針に対して日本には反発も広がっているが、感情的な対応は禁物だ。韓国側に粛々と『最終的かつ不可逆的な解決』をうたった合意の順守を求めることこそ重要だ」、西日本も「日本側としては冷静さを失わず、合意の着実な履行を韓国政府に繰り返し求めていきたい」と説いた。

 朝日は「何よりめざすべきは、元慰安婦のための支援事業のていねいな継続であり、そのための日韓両政府の協力の拡大である。その意味では日本側も『1ミリたりとも合意を動かす考えはない』(菅官房長官)と硬直姿勢をとるのは建設的ではない」として、「韓国側から言われるまでもなく、合意を守るためにその範囲内でできる前向きな選択肢を考えるのは当然だ」と日本側の対応も求めた。中日・東京は「歴史問題は重要だが、これだけでせっかく築いた両国関係を停滞させるのは、言うまでもなく得策ではない」と前置きし、「日本政府も、『被害者の視点を欠いていた』とする報告書の指摘について、謙虚に耳を傾けてほしい」と要望した。

 高知は「元慰安婦は高齢化が著しい。名誉と尊厳の回復をわずかでも図るには残された時間は少ない。韓国政府には、元慰安婦や支援団体に理解を求め、事態を収める努力が求められる。これ以上、時間を浪費することは許されない」と結んだ。(審査室)

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