2008年 4月1日
豊かな生き方 食から探る

静岡「しずおか 食養訓」

「偽装」に「中毒」。まるで似つかわしくない言葉に、今の「食」はまみれている。「今こそ立ち止まり、食のありようを考えたい」。連載は静岡で日々営まれる暮らしの中で、「食育」を考えた。

第一部『食卓彩々』(一月、七回)は森町の山あいにある集落、古民家に集う〝大家族〟の話から始まる。老夫妻が住む家にはいつも、街に住む若者たちが一夜を過ごしに訪れる。鍋が煮え立つ囲炉裏を囲んで会話が弾む。静岡大学の学生寮。食堂は空腹を満たすだけの場所ではない。寮の行事やコンパも行われ、学生たちが明日の活力を養う場でもある。静岡市で独り暮らしの老人に夕食の弁当を宅配するのが仕事の主婦は、玄関先で受け渡しのわずかな時間にも会話を絶やさない。出来たてのぬくもりとともに「温かい心」も届けようと。「家族」や「地域」とのきずなの中にこそ「食」はある。

そんな「食」を次代に伝えていけるのか。第二部『食育の現場から』(二月、九回)は旧大須賀町(現掛川市)に手がかりを求める。同町は八年前、当時の文部省から「食生活に関する教育実践」の研究モデル地域に指定された。「食育」という言葉が耳慣れなかった時代、学校と家庭、地域とが戸惑いながらも連携した。そして、小学生たちは「地産地消」の大切さを学んだ。卒業生たちは中学で「食べ残しゼロ運動」を始めた。地元農家は米飯給食が増え活気づいた。「食育はまちづくり。人間を育てている」。住民たちはこう言い切る。

第三部は『食は一生』(三月、四回)。夏目俊郎・整理部専任部長が「食は人生の歩みとともにある。食を通していかに豊かに生きるかを追求したかった」と語る連載は第四部(三月、五回)で識者のアドバイスを受けて終わる。中島忠男、石川善太郎記者ら社会部などの五人が取材班を組んで取材・執筆した。(審査室)

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