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2008年 5月13日
地域作りへ橋をどう生かすか

四国「瀬戸大橋20年 交流新時代」

四国と本州を結ぶ三つの橋。先陣を切った瀬戸大橋(香川県坂出市―岡山県倉敷市)が、四月で二十周年を迎えた。香川県にとって、人や物の流れがどう変わり、目指すのはどんな道か。三月十七日から一面の十回連載で探った。

橋の一時のプラス効果は薄れつつある。県外からの入り込み観光客は橋開通の年に千三十五万人と一気に倍増したが、今は八百万人台に落ちた。こんぴらさんで有名な琴平町では、架橋前の水準に戻ってしまった。

陸送は早い到着を可能にしたものの、貨物受け渡し時間が変わらず、貴重な時間は現地待機で食われた。明石海峡大橋が十年遅れて開通後、四国の貨物輸送拠点は関東・関西圏への距離が短い徳島県に次々と移った。

住宅大手の大和ハウス工業は、三豊市の四国工場の生産機能を岡山に移した。中国地方向けが七割で、瀬戸大橋の料金が重荷になったためだ。大橋の課題の大半は料金問題に行き着くが、「真の架橋効果は、つながった双方の地域が個性を磨き、新たな魅力を作り出してこそ生まれるもの」と連載は指摘する。観光も、従事する人と住民、行政がもっと一体で取り組むよう求められている。

〇五年秋に本四公団が本四高速として民営化され、他の大橋を組み合わせた割引など柔軟企画が生まれた。大橋の塔頂から眺めを楽しむスカイツアーは好調。故郷の島に若者が戻り、漁業を継いだケースもある。香川大の井原健雄名誉教授は橋を使う広域的取り組みとして、移住や定住にこだわらず、拠点を増やす「複数居住」を提案している。

報道部、地方部、編集委員室の八人の記者が担当。宮脇茂樹報道部長は「橋を生かすには、料金下げだけでなく、人の交流促進、新たな地域作りなども必要と伝えたかった」と語る。(審査室)

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