1. トップページ
  2. 刊行物
  3. 新聞協会報・スポットライト
  4. きずな求める「孤」を見つめて

2008年 7月29日
きずな求める「孤」を見つめて

長崎「『壊』の時代に」

いま、社会の中で「何か」が崩壊している。周囲との人間関係、時代とのかかわり、家族や家庭環境。「個」を大切にする一方で、人と人とのきずなが弱まっている。だが独りで社会生活ができずに、ストレスを抱えている人が多いといわれる。

年間企画として元日付紙面からスタートした連載は、さまざまな人生をひもとき、「社会の現実」に迫る。第一部「孤の果て」(一―二月)のテーマは「孤独死」。約八年間も発見されずに長崎市内のアパートの一室で死んでいた七十代の男。それを発見し、孤独死への不安にかられる隣室の男も七十代だ。家族の中に生まれた人がどのような人生を歩み、独りの末路に行きつくのか。次第に薄れていった人間関係を、元の家族や関係者への取材を通じ二人の足跡を十回にわたってたどった。

連載開始から読者の反響は大きく、内容を二回の番外編で紹介した。

第二部「快感を求めて」(五―六月、十回)は「依存症」をテーマに、三十代の二人の男が回復への道を歩み始めた姿を追う。中学生の時いじめを受け、心に刻まれた孤独を紛らわすためにパチンコにのめり込んだ男。立ち直りたいともがき、同じ悩みに苦しんでいる人たちの自助グループの扉をたたく。

アルコール依存症の親がいて「機能不全家庭」で育った男。心に傷を負い、自らもアルコールと薬物依存症になった。依存症は「意志の弱さ」と誤解されがちだが、「病気」である。男は患者同士が体験を語り合い回復を目指す集会に通い、妻の支えも受け病気と闘っている。

「さまざまな現場を歩きながら『時代の正体』を浮かび上がらせたい」と報道部の徳永英彦次長。同部の堂下康一記者が、写真部・森慶太、柿本忠史記者と地域社会の「壊」を掘り起こす。(審査室)

ページの先頭へ