2008年 12月16日
食器、万年筆...活路を探る

佐賀「模索する陶都 有田焼再生の糸口」

四百年以上の歴史を持つ「有田焼」。伊万里焼とも呼ばれ、佐賀県有田町を中心に焼かれている磁器の産業はいま、窯業不況による低迷からの脱却が課題だ。活路を切り開こうと魅力づくりを実践している作り手と売り手。その取り組みから、活性化への糸口を五回にわたって探った。

有田では食器は窯元が量産技法で作り、陶芸家は公募展で大物を発表するのが一般的だったが、その中間ともいえる「食器作家」になる若手が増えている。陶芸家の照井壮さん(34)は食器専門の作家。ギャラリーと直取引しているため、形や質感の細かな流行の変化など市場の動向に敏感に反応した食器を作ることができ、ロングヒット商品を持つ。

ろくろの後に土型へ押し付けて成形する伝統技法「型打ち」を守り、長年学んだ水墨画を生かした下絵で染付の食器を作る岩永浩さん(48)の作品は、お客が争って買っていく。有田焼の手作り品へのニーズは根強い。そこで手作り感を出した量産食器を開拓した。切りっぱなしの粉引きの板皿、微妙なゆがみのある白磁の台皿...。唐津市の陶芸家らの支援で、量販技法を使いつつ温かみを出す。成長商品となってダイニングバーなど新たな販路も開拓できた。

古伊万里は欧州を席巻したが、日本ほど多彩な器を料理によって使い分けせず、食器にカネをかけないなど食文化の違いに阻まれ、有田焼は輸出から撤退を余儀なくされた経緯がある。いま輸出に本腰を入れている商品は有田焼万年筆だ。海外にも万年筆のコレクターは多く、富裕層向けの高額品が狙い目だ。

「不況業種でも頑張っている姿を紹介し、他業界にも元気を与えたかった」と報道部の小野靖久・経済担当デスク。有田支局の大田浩司記者が担当した。(審査室)

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