2009年 6月9日
SCに負けない商店街づくり

奈良「県内商業地はいま」

奈良県では最近5年間で撤退した大型ショッピングセンター(SC)は計5店。特に今年2月20日には2店が店を閉めた。ジャスコいかるが店と同生駒店。人通りも車もぱったり途絶えた。近くのガソリンスタンドは死活問題で、店長は「女性がよく買い物するスーパーが再び来てほしい」。地元の商店街からみると、SCは勝手に進出し勝手に撤退する。生駒駅前商店街連合会は趣向を凝らした100円商品を販売する「100円商店街」を昨秋から3回開催し盛況だった。会長は「自分たちのできることをやることが大切」。SCに振り回されないぞ、という決意がのぞく。

奈良市の中心部の商店街も空き店舗を減らすために模索が続く。近鉄奈良駅そばの「奈良もちいどのセンター街協同組合」は廃業したパチンコ店を組合資金で買い取って内部を改装、1区画の家賃3万5千円で入居者を募集した。若手起業家の発掘が目的だから家賃は格安。応募は競争率4倍の人気だった。地下足袋スニーカー店などアイデアが光る。組合の店の数も1割増えた。

SC側も集客に懸命だ。イオンモール橿原アルルは昨年1月の増床工事で延べ床面積22万平方メートル余、駐車場5千台の県内最大規模になった。購入客も月100万人から140万人に。また来年が平城遷都1300年祭なので中国人観光客を当て込み、中国の銀聯(ぎんれん)カード決済を導入する予定だ。

5月に6回連載した。担当した久後力、三浦孝仁両記者は、SCの進出や撤退、再編が地域にどんな影響をもたらすのか、現場を歩き関係者の話を丹念に聞いている。デスクの松井重宏地方課長は「SCの影響で商店街の衰退が止まらなかったが、巻き返しの試みもある。現状を報告しつつ、商店街を応援しようと思った」と語った。(審査室)

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