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2009年 6月23日
当事者と家族の苦しみ伝える

宮崎日日「扉の向こうへ 県内・引きこもりの今」

人間関係を失い自宅に長期間閉じこもる「引きこもり」という言葉が広く使われるようになって約10年。本人や家族が苦しみを抱え込むため、実態は依然見えにくい。だが支援の輪が広がるにつれ、ようやくその一端が見え始めた。閉じられた部屋から未来へ。社会への扉を開こうとする人たちの思いを4月15日から10回にわたり追った。

宮崎県北部に住む39歳の男性は18歳の時から20年間、自宅に引きこもっていた。小学校から不登校気味で、県北の進学校に合格したが、直後に部屋にこもった。その理由は「自分でも分からない」。昨年秋、母親が77歳で亡くなったことをきっかけに「扉」を開き、支援団体に必死の思いを伝えた。今は自助グループにも参加。自信も芽生え「現状を変えたい」という思いから通信制高校への入学を果たした。

悩みを抱えて動けなくなるのは、親もまた同じだ。40歳の引きこもりの息子を持つ70代の母親は「あんたの子育てが悪い」と親せきから責め立てられた。「親失格」の烙印(らくいん)を恐れ、親もまた社会への扉を閉じるようになり「二重の引きこもり」に陥る。孤立するほどに、解決は困難さを増す。

引きこもりには複数の要因が絡み合う。人とのつながりに疲れ果てて自信を失い、社会に出るのが怖くなるというのが、多くに共通している。宮崎県内では引きこもりを支援する親の会や、引きこもりや不登校の当事者と家族が集う会の活動が浸透してきた。「家以外で落ち着く居場所が見つかった」と、当事者や家族の思いも広がっている。

「言葉だけが一人歩きしている『引きこもり』の現状と当事者、家族の苦しみをまず、読者に知ってもらいたかった」と担当デスクの樋口由香報道部次長。同部橋本恭輔記者と写真部米丸悟記者が担当した。(審査室)

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