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2009年 7月21日
変わる地域、支える群像紹介

四国「ここで生きる 宇多津古街の町衆」

香川県のほぼ中央に位置し、塩田跡の新都市と古い町家が残る古街(こまち)とが県道で分断される宇多津町(うたづちょう)。県道1本で雰囲気ががらりと変わる。地域の今を紹介するシリーズの第1弾としてこの地を選んだのは、「住民が『自らのまちを自ら治める』という高い意識を持った『町衆』となる過程を通して、分権時代の地方自治を考えたかった」からだ。6月2日から10回、地域総合面で連載。

衰退著しい旧市街地のまちづくり委員会にとって苦闘の7年間だった。「何が何でも古い町家を残そう」という考えを委員たちが捨てるだけで2年かかった。「ここに暮らす人に優しいまちをつくろう」というコンセプトがようやく見つかった。道の両側に敷かれた歩く人に優しい燻(いぶ)し煉瓦(れんが)は、古街の新しいシンボルとなり、誰でも出店できる毎月第3日曜の楽市は、引きこもりがちのお年寄りとまちをつなぐ場になった。古い町家の建て替え時の新ルールづくりが検討され、消費電力が少なく長持ちする発光ダイオード(LED)の街灯実験も進行中。今年に入って町と業者の意思確認の不徹底が原因で、新都市の臨海公園に植えられた約210本の松が幹の途中で無残に伐採された事件は、まちづくりの大切さを再認識させた。

まちづくり委員会の委員は当初は町が指名したが、公募を経て現在は自薦方式。手を挙げればいいだけだが、発言に責任が伴うだけに猛勉強が欠かせないし、リーダーシップも必要。かつての町衆の寄り合い、地域のつながりが、こうした人たちによって古街に取り戻されつつある。

担当した山田明広編集委員室長は「地域でそれぞれの職業で生きていく人たちを通し、香川を見つめ直していくつもり」と語る。次は中小企業のがんばりを取り上げる予定だ。(審査室)

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