2010年 1月1日
自然と共生、 芽生える交流

山陰「希望の地へ 山陰ふるさと進化論」

ダーウィンの進化論から150年の昨年10月から始まった企画。適者生存の姿を、中山間地域に重ねようと試みた。見捨てられがちな地域にも、共生と幸福の種が芽生え始めている。各部とも初回1面、2回目から山陰面に掲載。

ピーク時の人口7550人が今は1550人。過疎化が進んだ島根県益田市匹見町(ひきみちょう)を舞台にしたプロローグ(5回)で、まず五つのキーワードが選ばれる。22戸43人の集落全員が社員となっている萩原地区の会社は、愛称わがままばあちゃんの宿で郷土料理を提供し、ジャムなどの加工品も販売。観光名所もないのに東京からも人を呼んでおり、集落の「絆(きずな)」の中心になっている。森の粋を「食」へ凝縮したワサビと寄り添う地区。「森」と人との共生を目指す番人たち。豪農屋敷の食文化を伝える人と知恵の「環」(リング)があり、こだわりのとちもちは口コミで「商」に結びついた。

「絆」「食」「森」「環」「商」が第1~5部のタイトルになり、第1部「絆」は11月から12月にかけ7回。匹見町では自然と人間らしさに触れた都会の若者が応援団になり、農作業や草刈りに汗を流す姿が増えてきた。滞在費の一部として町内商品券が支給されるボランティア制度には70人以上が登録している。一方、1人だけになった集落の住人が、神主を呼んで神社の例大祭を守っているケースもある。奥出雲町の15戸55人の集落は、そばオーナー制度を軸に都市交流を始め、栽培体験などで喜ばれている。

第2部「食」は今月スタート。第1部までは報道部の小滝達也、森田一平、上田素衣、井上誉文記者が担当。統括役の頼田直真・編集委員兼論説委員は「農山村は暗いばかりではないし、廃れてはいけないものを持っている。原点から見つめ直したい」と語る。(審査室)

ページの先頭へ