2010年 6月15日
生活支える川や湖に焦点

福島民友「水のあした」

阿武隈川や猪苗代湖、五色沼など多くの川と湖が福島県民の生活を支え潤してきた。

ビールの味は水が決め手。アサヒビール福島工場は年間で大瓶なら5億8千万本も生産する。水は安達太良山の伏流水を使うが、その量はビール製造量の6倍にもなる。「ビールは自然の恵み」と工場の案内人。年間12万人の見学者はできたてを試飲する。飯豊連峰からの伏流水は喜多方の酒、みそ、しょう油を育てた。地下に豊かな水脈があり、道路の消雪水も地下水を使う。蔵のまちは水のまちでもある。

子どもたちが紙を漉(す)いて自分が受け取る卒業証書を作っているのは、二本松市立杉田小。6年生が「二本松市和紙伝承館」で和紙作りに熱中し、世界に一つだけの卒業証書をつくる。この辺は阿武隈川の清流を利用して、昔から紙漉きが盛んで、最盛期には400戸が農閑期の仕事にしていた。紙漉きは冷たくてきれいな水が欠かせない。残念ながら今は井戸水を使うが、伝統の手作業が卒業証書に伝承されている。

ダムや農業用水も県民生活を向上させてきた。明治政府が1879年に着工し3年で完成させた安積疎水は、猪苗代湖から水を引き郡山市がある安積野を潤す。飲む水にも困っていた原野が田畑になり、工場が進出し都市が発展した。水は血液で水路は血管だから「生きるために必要」と土地改良区の理事長は言う。

母なる水と県民の深いかかわりを各地に取材し、第1部「暮らし支えて」は1、2月に、第2部「共生の知恵」は4月に掲載した。夏に第3部を予定。菊池克彦報道部長は「春夏秋冬、暮らしと密接な水を取り上げて地域を見直すきっかけにしたい」。担当は渡辺哲也、阿部裕樹両記者。季節ごとのグラフ特集も美しい自然を切り取っている。(審査室)

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