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2010年 9月28日
飛び地の村、改革で夢を追う

紀伊民報「小さな村の大きな挑戦」

和歌山県北山村は奈良県と三重県に囲まれ、市町村単位で全国唯一、丸ごと「飛び地」になっている。特産のかんきつ「ジャバラ」などを収入源とする人口約500人の村が、追い求める自治体の姿を8月末、1面(5回)で検証した。

木材業を通じて新宮市との縁が深いため和歌山県に編入された村だが、その後、新宮との合併話には乗らずに単独の道を選んだ。手を付けたのは大胆な行財政改革。特別職の給与を30%削り、議員の期末手当をなくした。ごみ収集や水道管理事業の外部委託は廃止して、職員が当番制で受け持つ。休日と夜間用は別雇いだった救急搬送も職員が担当した。道の駅の温泉浴場ボイラーは、間伐材を活用したバイオマス用に切り替えるきめ細かさだ。

一方で、少子化、高齢化対策を次々と。村営バスの無料化を手始めに、本年度からは中学3年生までの医療費は全額公費負担、保育料も無料に。財政は厳しいが、特産のジャバラ、木材輸送の伝統を生かした筏(いかだ)下りや秘境の温泉による事業収入増に力を入れる。村が運営するインターネットのブログが観光PRに一役買い、会員の「仮想村民」は1万5千人を超す。

大勢が乗れるように工夫して1979年に復活した筏下りは、観光の売り物。ユズやダイダイの仲間のジャバラは、自然交雑で生まれた村独特の品種で、果汁の瓶詰めなどが人気。花粉症の症状改善効果が報じられたのが追い風になっている。

若い世代の定住を狙って英会話教育にも熱心。アイルランド出身者による授業が小中学校、保育園であり、今月終わった中学の修学旅行先はアイルランドだった。

連載を担当し、村の試みを社説でも応援した山本敏弘・報道部記者は「小さな村のがんばりを、県民にもっと知ってほしい」と語る。(審査室)

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