2011年 6月14日
南海地震に備え総点検

徳島「検証・徳島3・11」

東日本大震災が発生した3月11日の夕刻。徳島県沿岸を最大で4メートル近い津波が襲い、漁船が転覆、住宅は床上浸水した。震源地から800キロ以上離れた地で住民や自治体、学校、企業はどう対応したか。5月11日から社会面で13回、震災が残した課題と教訓を探った。

阿南市の河口を逆流した真っ黒な濁流は護岸を一気に乗り越えた。猛烈な勢いで民家にぶつかり、激しいしぶきを上げる。近くに住む男性はその光景にぼうぜんとなった。海陽町の漁港では係留中の漁船に横波が当たり船体は一瞬でひっくり返った。いけすも大きな被害を受けた。「東北の地震の津波が徳島まで来るのか」と驚いた漁師も多い。

「勧告と指示はどう違うんだ」。自治体では県内初のケースで戸惑いやためらいが先に立ち、対応が後手に回った。阿南市は避難勧告をより緊急性の高い避難指示に切り替えるのに2時間近くかかった。県内で避難勧告や指示を出した市町の避難率はわずか5%。徳島市などでは早々に避難所から自宅に帰る住民も目立った。

津波警報中に慌てて児童を下校させた阿南市の小学校長は「安易な判断ではなかったか」と反省。今後は注意報の時点で児童を校内待機させる。同市内の銀行支店長は「もし営業時間内なら店内のお客さまの安全確認をいかに迅速に進めるか」と改めて考える。

幸い県内に死傷者はない。だが、床上浸水に遭った阿南市の主婦は「もし南海地震が起こったら、どんな津波が…」と考え不安をぬぐえない。

徳島県を直撃する南海地震の発生確率は30年以内に60%程度。「今回の震災を機に県内を総点検してみたが、従来の想定と対策を根底から見直す必要がある」と河野隆富・社会部副部長。北野昇、森麻実記者と同副部長が担当。秋には南海地震をテーマに連載を予定している。(審査室)

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