2011年 6月28日
安全確保は可能か

 新潟日報「『原発危機』  柏崎刈羽 緊急対策を問う」

地震国・日本で原発の安全性を確保することは可能なのか―。長期企画の第1弾として、2007年の中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発が福島第一原発の事故後に打ち出した緊急安全対策を、5月末から5回にわたって検証した。

同月19日、柏崎刈羽の安全性を検討する新潟県技術委員会で、福島第一の1号機を巡って、原子炉内の水位の実測値と東電の想定との食い違いが議論になった。3月11日の震災当日、空だきはいつ始まったのか。原子炉の重要機器に地震の影響はなかったのか。

津波対策に問題はないと強調する東電。電源車などを増強して高台に配備しても、そこから各号機までは直線で約1キロあり、敷地内道路を地震から守る対策は見当たらない。復旧用資材の一部を保管する倉庫も耐震設計されていない。

マンパワーはどうか。休日や夜間、電源車などで復旧に当たれる人員は10人余りにとどまるという。若林利男・東北大大学院教授(安全工学)は「細かく区切った時間内で確実に集まれる人数を把握し、対応できる事象を検証しておく必要がある」と指摘する。

「国策」の原発では、「安全神話」を背に対症療法的対策が繰り返されてきた。福島第一では事故対策拠点の「免震重要棟」で国の基準を超える被ばく被害が出た。柏崎刈羽の対策に免震重要棟の放射線防護強化策は盛り込まれていない。柏崎刈羽は一か所で7基の原子炉を持ち、合計出力は世界最大。昨年末現在、使用済み核燃料は合計1万3160体に増え、保管限度に徐々に近づいている。

「防潮堤や電源車も必要だが、人員や訓練などソフト面の対策も大切だということを知ってほしい」と原発取材班デスクの三島亮報道部長代理兼論説委員。20代の若手を含む約10人の記者が担当。(審査室)

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