2012年 5月15日
多様な生き方に注目

山陽「『30代』のパズル」

岡山市の人口構成は、30代が団塊世代の60代を上回り、最も多いという。バブル崩壊後の「失われた20年」の影響をもろにかぶったこの世代が直面する悩みや苦しみ、諸課題を、地方の視点から解きほぐしてみようという意欲的企画。正月から社会面(初回1面)でスタート、今月初めに第3部を終えた。

第1部「リセット」(24回)は、新天地を求めて岡山県内に移り住んだ若者たちの軌跡。東京での高収入とベイエリア暮らしを捨て、笠岡市の離島で漁師とシステムエンジニアの二足のわらじを履く成瀬義彦さん(33)は、親や学校の敷いたレールにしがみつくのをやめ、「自分の船」を選んだ。

中国山地の山懐、西粟倉村は、5年前から過疎対策として移住者を募集。全国から「吸い寄せられた」20~30代の青年ら55人が、森林組合や観光協会で働き、村の暮らしに溶け込んでいる。

第2部「不遇を生きる」(28回)は、就職氷河期に社会に放り出された不安がテーマ。年金記録問題のあおりで分限免職処分を受けた元社会保険庁職員、低賃金にあえぐ介護士、高学歴ゆえに職が見つからないシングルマザーなど、「努力しても報われない」生きづらさに迫った。第3部「幸せかい」(18回)では、不安定な時代を生きる「心の闇」や家族観を探った。

地域活性化には、「よそ者」「ばか者」「若者」の持つ突拍子もないアイデアや実行力が欠かせないといわれる。「東日本大震災後、人々の価値観が変わっている。地方にもいろいろな生き方があることに注目してもらえれば」と国定啓人特別編集委員。最終第4部「新たな地平」では、地域の中で行動を起こした30代の活躍を描く予定だ。

3人が30代という高下修、黒崎平雄、有国由花、木村俊雄の4記者が担当。同紙初の試みのツイッター(@puzzle30s)も興味深い。(審査室)

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