2012年 5月22日
保全・利用できる道探る

信毎「青い金―水は誰のものか」

水がふんだんにある生活は当たり前―そんな常識が揺らいでいる。新興国の人口急増などで世界では将来、深刻な水不足が懸念される。今や「ブルー・ゴールド(青い金)」と呼ばれる水資源の争奪戦はわが国にも及ぶ。水源に恵まれた信州を舞台に、水の保全と利用の在り方を考える。

年初からの社会面連載は5月初めまでに5部47回。第1部「揺れる安曇野の名水」はワサビ生産日本一の同市の地下水異変を追った。「湧き水が減っているんじゃないか?」。ワサビ農家は10年ほど前から異変に気づいている。北アルプスの麓の天然水を目当てにミネラルウオーター製造工場が相次いで進出。安曇野の飲料水は今や全国ブランドだ。だが、大量の取水は地下水位を低下させているのではと懸念が広がる。市は地下水の保全策を練るが、費用分担など難問が立ちふさがる。

第3部「水源地は守れるか」は外資などの水源林買収問題を取り上げた。海外法人による軽井沢町の山林買収を地元自治体が知ったのは半年後。買い手は中国の企業家という。同町を含む佐久地域では、企業による水源林買収の動きが目立つ。水源地の企業所有は地元にとって好ましくない。佐久市は「地下水などの水資源を公水(〈こうすい〉公〈おおやけ〉の水)」として井戸掘削や取水を規制する水資源保全条例制定を目指す。

第4部は「小水力発電の未来」。長野県内には川の流れなどを利用する小水力発電の適地が多い。特に農業用水路が有望だが、水利権を持つ土地改良区などとの調整が難題。木曽町など自治体は水利権許可手続きの簡素化を求める。

小松哲郎、辻元邦宏、百瀬平和、牧野容光、宮坂雅紀記者らが担当。「河川や地下水など循環する水資源を一体で保全、利用できる道を探りたい」と高森和郎報道部次長。連載は7部まで。次回の6部は国の責任や役割を考える。(審査室)

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