2008年 7月8日
検証進め廃棄を迫れ

北朝鮮は六月二十六日、六か国協議の議長国・中国に核計画の申告書を提出した。これを受けて米政府は同日、北朝鮮へのテロ支援国家指定の解除を議会に通告した。指定解除は通告翌日から四十五日後に発効する。四十四本の社・論説が「申告」をどう評価するか、拉致問題を抱える日本外交は今後どうあるべきか、などを論じた。

核の脅威は残ったまま

〈「入り口」にすぎない〉神戸「この申告が、六カ国協議再開への大きな節目であることは間違いない。だが、重要なのは、北朝鮮の核廃棄を確実に実行させることである。(略)申告はあくまで核廃棄への入り口にすぎない」、毎日「一歩、いや半歩前進と言えるかもしれない。しかし、申告には最大関心事の核兵器情報が含まれず、高濃縮ウランによる核開発計画とシリアへの核技術支援に関する情報は別文書に記すという。これでは完全で正確な申告とは言えない。これで朝鮮半島の非核化を実現できるのだろうか」、信毎「提出された文書は、とても歓迎できる内容ではない。北朝鮮が保有するとみられる核兵器の数や製造施設について触れなかった。核の脅威は残ったままだ。(略)北朝鮮は、核やミサイルをちらつかせる瀬戸際外交を繰り返してきた。このまま主導権を握られていては、非核化は期待通りに進まない」。

〈徹底検証を〉西日本「指定解除の発効までには四十五日の期間がある。まずなすべきは、この間に申告内容をしっかりと検証することだ。(略)北朝鮮は、指定解除を祝うかのように核施設の冷却塔を爆破し、関係国のメディアに公開した。それは、北朝鮮が非核化へ歩み出す象徴となるのか、単なるパフォーマンスなのか」、読売「日本をはじめ関係当事国は、北朝鮮が米国に提供したプルトニウム生産施設の運転記録文書の分析や、実地検分、関係者聴取など、徹底した検証を進めるべきだ。(略)6か国協議では、検証の進め方について、厳しく詰めなければならない。北朝鮮が欺瞞(ぎまん)戦術や合意破りに出るのなら、米国は制裁解除の方針を直ちに撤回すべきだ」、中日・東京「将来に禍根を残さないようこれからの取り組みが大切だ。そのためには六カ国ですでに合意している外相会談を開いて、核兵器廃棄などの『第三段階措置』への早急な着手を決めるべきだ。現実の脅威である核爆弾をそのままにしては、せっかくの合意も『画竜点睛』を欠く」、朝日「これからすべきことははっきりしている。早急に6者協議を再開し、北朝鮮の申告内容を検証する方法を決めることだ。北朝鮮は現地調査や技術者の聞き取りなどに誠実に応ずるべきだ。そのうえで、第3段階の具体的な手順を早く詰めてもらいたい」。

〈同盟の危機か〉日経「北朝鮮の思惑通りの展開であり、日米同盟の基盤を崩しかねない危機である。(略)ブッシュ政権の任期切れが近いのを北朝鮮が計算しているのは明らかである。私たちはブッシュ大統領に問いたい。あなたは太平洋の対岸にある最も重要な同盟国を失うきっかけとなる決定をした大統領として歴史に名を刻みたいのですか、と」、産経「日本の対米外交は、議会への働きかけが弱いのではないか。米議会を中心に、拉致は被害者が日本に帰国しない限り現在進行形のテロであり、指定解除は日米同盟にヒビを入れかねない問題だとの理解を深めていく必要がある」、静岡「北朝鮮の非核化もテロ支援国指定も米国の重量級の国家戦略である。拉致問題は日朝間のいわば〝個別問題〟であり、この二つの問題への米国の取り組み姿勢に違いがあるのは自然のことだろう。私たちはその日朝間の個別問題を米国が解決してくれる、と錯覚していなかったか。そして今、米国が何もしてくれなかった、と逆恨みしても始まらないのだ」。

拉致解決の道筋を描け

〈正念場〉岩手日報「核と拉致問題は二者択一の問題ではない。非核化を進展させつつ、拉致も毅然(きぜん)と解決を図る。いつまでも国際政治の駆け引きに翻弄(ほんろう)される存在でいいわけがない。日本外交の正念場だ」、京都「(ブッシュ大統領は)拉致問題を『決して忘れない』と、日本への配慮を示したものの、次なる『一手』が具体的には見当たらないのが実情だ。前政権の圧力偏重から対話重視にかじを切った福田康夫首相。拉致と核・ミサイルを包括的に解決する道筋を日本の手で描かなければならない。福田政権の外交力が問われる」、琉球「そもそも指定が解除されたからといって、北朝鮮の思惑や期待通りに事が運ぶとは限らない。(略)北朝鮮にとっては、日本の経済協力やエネルギー支援枠組みへの参加などが不可欠だ。日本はこれをカードに使えるのである。政府は、日朝協議などを通じ主体的に解決していく意志や努力を怠ってはならない」。(審査室)

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