2008年 9月16日
あまりに唐突、無責任

福田康夫首相が一日夜、緊急記者会見で「新しい布陣の下に政策の実現を図っていかねばならない」と述べ、辞任を表明した。内閣支持率の低迷に加え、衆院選の時期などをめぐって公明党との亀裂が生じ、民主党が対決姿勢を強める「ねじれ国会」を乗り切る展望が開けない中での退陣となった。自民党総裁選は十日告示され麻生太郎幹事長ら五人が立候補、二十二日に投開票される。辞意表明から総裁選告示まで百六十本を超す社・論説が取り上げた。

指導者の枯渇を露呈

〈無責任だ〉東奥「日本の最高指導者として国民の生活を最優先に考えるべき首相の座とは、こんなにも軽いものなのか。あまりにも唐突、あまりにも無責任ではないか」、産経「8月2日に改造内閣を発足させたばかりであり、12日に臨時国会を召集すると言明しただけに突然の政権投げ出しは無責任の極みである。きわめて残念だ」、琉球「原油高と物価高騰で国内景気が後退する中で、中小零細企業は政府の景気対策を最後のよりどころに踏ん張っている。従業員や家族を抱え、辞めるに辞められない企業経営者たちの目に『はい、辞めます』と簡単に政権を投げ出す首相は、どう映っただろうか。『無責任』のそしりは免れない」、神奈川「信じられない。日本の首相の位とはかくも軽いものなのか。その志とはかくも薄いものなのか。(略)『国民目線での改革に着手した』と言いながら仕上げの努力を放棄。内閣改造にも手をつけながらの退陣は裏切りに等しい」。

〈自民党の危機〉信毎「(自民党には)何が何でも政権党でなければならぬという〝与党ぼけ〟がある。(略)安倍氏、福田氏と自民党は二代続けて、無責任でひ弱な首相しか送り出すことができなかった。人材を育てる力が劣化している。自民党の危機は深い」、中日・東京「二代続けての政権投げ出しは、世襲議員の増加による指導者にふさわしい人材の枯渇をはじめ自民の政権担当能力の限界などを露呈した。(略)本来なら潔く下野して野党に政権を委ねるのが筋である。このままたとえ政権を続けるにしても、薄れた国民の信頼を取り戻すことは極めて難しい」、河北「自らが身を引き、例えば『ポスト福田』の最右翼と目される麻生太郎党幹事長にバトンを渡すことで、差し迫った衆院の解散・総選挙を有利に運びたいというのが福田首相の本音だとしたら、それは政権党の姑息(こそく)な延命策にすぎない。(略)こうした姿勢こそが、自民党の金属疲労を限界に向かわせ、国民の政治不信を増幅させてきた要因であることにこの党はまだ気付かないのであろうか」。

〈総裁選に望む〉日経「大事なことは総裁選で勝った候補者の政策が自民党の総選挙に向けた政権公約の軸になるということである。(略)今回の総裁選は自民党の政権公約作りのスタート台となる極めて重要な選挙である」、読売「重要なのは、候補者たちが、上質な政策論争を繰り広げられるかどうかだ。(略)総裁選で期待されるのは、政権を担う党として、国家運営にかかわる、骨太の政策課題を真正面から論じあうことだ」、毎日「顔ぶれのにぎやかさだけで『自民党は変わった』と即断するほど国民は単純ではない。総裁選を大々的に演出することで、衆院選での勝利につなげたいという自民党の狙いは、既に多くの国民も承知しているはずだ。(略)やはり期待されているのは、まじめな政策論争である」、京都「衆院の解散・総選挙が視界に入る中で、総裁選は『選挙の顔』を変える政治ショーではない。(略)日本の針路、政策目標を具体的に示し、国民に分かりやすく説明する。『見せる選挙』ではなく『語る選挙』でなければならない」。

政権の正統性取り戻せ

〈民意を問え〉神戸「政治の劣化に歯止めをかけねばならない。その第一歩は衆院の解散・総選挙である。(略)安倍、福田両首相は共に総選挙による洗礼を受けていない。いわば、小泉政権下の郵政選挙で得た『遺産』を頼りに、国政を担ってきた。民意の支持という正統性を欠いたまま、無理に無理を重ねた揚げ句、破たんした」、朝日「自民党総裁選を経て選ばれる新首相の使命は、できるだけ早く衆院を解散し、国民の審判を受けることだ。それなしに、まともで力強い政権運営をすることはできない。(略)民意を体した正統性のある政権を一日も早く日本に取り戻さなければならない」、新潟「国民の間にはもはや、次期首相に就任する自民党新総裁への期待感はほとんどないだろう。(略)首相に就いたなら骨太な政策を掲げて速やかに衆院を解散し、民主党をはじめ野党とぶつかるべきだ。多難な時代にそれぞれの党が解決策を打ち出してしのぎを削る。日本政治の再生はそこから始まる」。(審査室)

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