2008年 12月2日
歴史的な新興国参加

先進国と新興国など二十か国・地域(G20)の首脳による初の金融サミットが十一月十四、十五日の両日、ワシントンで開かれた。世界的な金融危機に立ち向かうための協調行動で一致し、金融規制強化や国際通貨基金(IMF)などの改革を求める首脳宣言を採択した。参加国で世界の国内総生産(GDP)の約九割を占めるが、各国の利害は異なり、危機打開への具体策が課題となる。四十本の社・論説が取り上げた。

経済体制の違い乗り越え

〈試練克服へ一歩〉毎日「共に知恵を出し合い連帯して行動しなければ、全員が敗者になりかねないとの共通認識から、解決に向けて一歩を踏み出した。すべては、今後の具体策と行動次第だが、非難や対立一色に塗り込められることなく、進むべき方角を明確ではないにしろ確認したことは評価したい。とりわけ意義があったのは、首脳が自由貿易体制の重要性をここで強調し、保護主義政策は取らないと誓ったことだ」、読売「世界的な金融・経済危機の克服には、先進国だけが話し合っても不可能だ。新興国の首脳らが加わって協議したことに歴史的な意義がある。(略)米国型の行き過ぎた市場万能主義に歯止めをかけ、新たな金融秩序をどう構築するか。明確な方向性を示せるかが焦点だったが、首脳たちがなんとか足並みをそろえ、試練を乗り切るためのメッセージの発信にこぎつけた」、中国「具体的な将来像を描くにはなお不十分とはいえ、経済体制などの違いを乗り越えて合意に達した点では画期的だ。(略)もちろん米欧間、さらに新興国との間には微妙な温度差もあった。危機の原因については『いくつかの先進国の当局はリスクを適切に評価せず、金融の技術革新にもついていけなかった』としている。新興国側の主張を軸にしながら米国へも配慮し、サミットの共通認識とするための苦心もうかがえる」、南日本「今回のサミットは国際金融システムの中核である国際通貨基金(IMF)の改革、強化も一つのテーマだった。宣言では国際経済安定のために新興国、途上国がより大きな発言権などを持つべきだと提唱した。中国、インド、産油国は世界経済のけん引役として期待されるだけに適切な判断といえる」。

〈新たな枠組み〉愛媛「『G20』という新たなルール作りの枠組みができたことで、米欧中心の『G7』や『G8』での合意形成は終わり、多極型の方向になった。先進国だけで世界が抱える問題に対処できる時代は終わったということだ」、朝日「今回のG20サミットが、75年前のロンドン(大恐慌のさなかの世界経済会議)の再現とならず、とにかく合意できる最大公約数だけでも世界へ示すことができた意義は大きい。ただ、各国の考え方に隔たりのある課題も少なくない。G20がこれから国際協調に欠かせない枠組みとなるかどうかは、この点の克服にかかっていることを押さえておきたい」、日経「今回の金融危機の背景に『規制の失敗』があるのは確かで、金融機関が過剰にリスクを取るのを抑えるような規制は必要だ。一方、規制が行き過ぎれば市場の機能を阻害しかねない。宣言はそのバランスをうまく取った形だ。それだけに各論を詰める際には、米欧間のミゾが表面化する可能性がある」、北海道「米国の影響力低下に伴って各国の力関係が変われば、IMFを創設しドルを基軸通貨とした第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制の見直しを迫られることにもなろう。そうした中で、日本はどういった役割を果たすべきか。(略)G20という大きな枠組みの中で、これまでのような資金面での貢献や、米国とその他の国との橋渡し役にとどまるのでは物足りない」、河北「世界経済安定に最も責任がある米国の次期オバマ政権に、景気てこ入れ策も含め課題は先送りされた。新興国を加えた新しい世界経済の枠組みが真価を問われるのは次回サミットとなろう」。

各国は先取り対応を

〈議論そして実行〉神戸「改革の将来像をめぐってはなお溝が残っている。合意した行動計画をどこまで速やかに実行に移せるか。その行方を見守る必要がある。合意を単なる政治声明で終わらせてはならない」、産経「今後は『来年3月末まで』と期限を設けた行動計画の迅速な実行と、21世紀の国際金融システム作りという大目標に向け、より徹底した議論が求められる」、中日・東京「麻生太郎首相は最大一千億ドル(約十兆円)のIMF融資枠創設や世界銀行に途上国向け基金の設立などを提案した。豊富な外貨準備をもつ日本ならではの貢献策といえる。来年春までに次回会議が開かれる。危機の深化を食い止めるために、各国は協調して政策の先取り対応を急がねばならない」。(審査室)

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