2009年 1月27日
給付金への固執批判

「二次補正」衆院通過時の社説
早期成立へ妥協を促す

総額二兆円の定額給付金を盛り込んだ二〇〇八年度第二次補正予算案と関連法案が十三日、自民、公明両党の賛成多数で衆院を通過。民主党などは採決時に退席、自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相らも退席した。参院でも二十六日の採決まで、給付金をめぐる与野党対立が続いた。衆院通過時点の四十三本の社・論説では、給付金分離に応じない与党側の強硬姿勢批判や、二次補正早期成立へ与野党譲歩を迫る論調が目立った。

採決強行「あまりに乱暴」

〈民意に逆行〉京都「国民の多数が麻生太郎内閣に不支持を表明し、給付金を評価しないとする世論調査結果が公表されたばかりだ。(略)審議も不十分で、民意に逆行する大義なき採決強行というほかない」、西日本「二兆円もの税金を投じるなら、もっと別の有効な使い道があるはずだ。そんな国民の声を無視するかのように、与党が数の力で押し通した。国会の意思決定と国民の考え方との乖離(かいり)が、これほど露骨に表面化するのは、異常な事態だと指摘せざるをえない」、中日・東京「低支持率にあえぐ麻生内閣が民意と懸け離れた対応を決め込む。(略)民意を侮ってはいないか。野党側は不評の給付金を分離すれば、二次補正の早期成立に協力するとも言っていたのに、与党が交渉にも応じず、採決に踏み切ったのはあまりに乱暴だ」、北海道「首相は二次補正を、未曾有の経済危機に直撃された国民の暮らしを支える『生活者の安全保障』だと位置づけてきた。それほどの重要政策に野党の協力を取り付けられず、身内からは反乱を許す。首相の指導力不足をあらためて印象づける一幕となった」。

〈定額給付金〉信毎「景気対策の必要性は野党も認める。与野党が話し合い、早期に可決、成立させるのは、できないことではないはずだ。問題は総額二兆円の定額給付金にある」、山陽「大きな混迷をきたしてまで定額給付金に固執するのは理解し難い。二兆円は巨額だ。細かくばらまくのでなく、新たな雇用を開き、消費を刺激するより効果的な生かし方はあろう」、毎日「与党は給付金への国民の批判を甘くみていると言わざるを得ない。(略)首相が給付金を受け取るかすら態度を表明しない一方で、11閣僚が受け取りを、1閣僚が辞退を表明した。2兆円を投じる政策としてあまりにぶざまな不統一ぶりだ」、朝日「2兆円もの巨費を投入し、国民ひとりひとりに現金を配るというアイデアがこれほど不評なのは、政策の是非の問題を超えて、この政権そのものへの不信の表明と見るべきだ」、北國「定額給付金は、早々に実施していれば、景気刺激に大いに役立っただろう。景気がこれほどまで悪化した今では、どこまで効果があるのか疑問もある。昨年中の成立が見送られたツケは重い」。

〈早期成立を〉読売「定額給付金という問題の多い政策を含む補正予算だが、景気回復を最優先するなら採決を遅らせるわけにはいかない。(略)仮に、民主党が、審議拒否・遅延戦術をとるならば、参院の補正審議と同時に、衆院で09年度予算審議も進める『並行審議』も、やむをえないところだ」、日経「二次補正を速やかに成立させるため与野党は真剣に話し合うべきである。二次補正には雇用対策費や中小企業の信用保証枠を大幅に拡大するなどの緊急な景気対策が盛り込まれている。(略)二兆円の定額給付金は景気対策としては甚だ疑問だが、二次補正は国民生活を守るためにも一刻も早く成立させる必要がある」、上毛・日本海など「与党は国民の声に耳を傾け、参院では早期成立のために予算案修正に応じるなど雇用対策を最優先に柔軟に対応すべきだ。(略)与野党が譲り合って雇用・景気対策の予算案を成立させ、衆院解散で国民の審判を受けるべきだ」、佐賀「与野党が知恵を出し合い、予算案の修正を含めて協調の道を探るべきだ。(略)衆院解散を条件に〇九年度予算案と関連法案の成立を受け入れる『話し合い解散』も選択肢の一つだろう」。

投じた一石は小さくない

〈渡辺氏離党〉愛媛「今のところ同調者はおらず静かな離党だが、主張にはうなずける点が多い。与党にも賛同の声があり、離党が波紋を広げる可能性はある。(略)政界再編を含めて大きなうねりになるのかどうか、注視していきたい」、河北「今後、二次補正予算関連法案の衆院再可決、消費税増税も含む新年度予算の採決など、造反や離党者が生じる可能性があるヤマ場が次々訪れる。渡辺氏が一石を投じた意味は決して小さくなく、麻生政権にとってはいばらの道が続く」、産経「『利敵行為』などと離党者を批判するのはたやすいだろう。しかし、各種世論調査では内閣支持率の低迷が続いている。政策決定をめぐる対立を打開する重要性こそ、首相や党執行部は再認識すべきときではないか」。(審査室)

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