2009年 7月14日
麻生政権がけっぷち

閣僚補充・静岡知事選と政局をめぐる社説
解散への思惑先行批判

麻生太郎首相は1日、兼務だった経済財政相と国家公安委員長の2閣僚補充人事を決めた。政権浮揚を狙って検討された自民党役員人事や内閣改造は見送られた。5日投開票の静岡県知事選は民主党には事実上の分裂選挙だったが、同党などが推す候補に自民、公明両党推薦候補は敗れた。自民が大敗した12日の東京都議選とともに今後への影響は大きい。「麻生降ろし」の動きが重なり、解散・総選挙をめぐる綱引きはついに最終段階。閣僚補充人事の後、政局を絡めて60本以上の社・論説が取り上げた。

総選挙向けシナリオ狂う

《求心力低下》日経「首相は自民党の役員人事も断行することを検討したが、党内の強い反発で見送らざるを得なくなった。首相の求心力低下を象徴する事態だ。党役員・閣僚人事で政権を浮揚させ、衆院解散につなげる首相の戦略が頓挫したといえる。党内の『麻生降ろし』が強まるなか、麻生政権はがけっ縁に追い込まれた」、読売「政権の体力が弱っている時の人事は鬼門だという過去の教訓に思いが及ばなかったのだろうか。結局、人事刷新構想は、党内だけでなく、連立相手の公明党からも拒否され、首相は四面楚歌(そか)のような状況に追い込まれた」、中日・東京「人事の頓挫で、執行部すら把握できていなかったことが明らかになった。自民党にも自分たちが選んだ総理・総裁を本気で支える勢力がほとんどいないことも分かった。事態は深刻だ」、静岡「党役員人事を封じられるなど麻生首相の求心力の低下は覆い隠しようもなくなっている中で、(静岡)県民は自民党に『ノー』を突きつけた。農業団体などの支持団体を中心に集票を図る組織型選挙は機能しなくなっていると見た方がいい」。

《混乱と誤算》毎日「麻生首相とその周辺の思惑は、一連の選挙を乗り切るに当たり、民主党との論戦の中心になる細田幹事長ら党役員を一新・強化することにあった。その過程で古賀誠選対委員長が宮崎県の東国原英夫知事に自民党からの総選挙への出馬を要請したことが注目を浴び、同氏の閣僚起用も取りざたされた。(略)ふたを開けてみたらまさに『大山鳴動―』となった」、新潟「首相が画策した党役員人事も閣僚の一部入れ替えも、選挙向けの人気取りが狙いだ。動機が不純だったのに加え、それが一応の決着を見るまでの党内の混乱たるや目を覆うばかりだった。国民は自民党政権の迷走ぶりに沈みゆく『泥船』を見たのではないか」、北海道「閣僚兼務が増えたのは首相の『側近人事』が失敗し、辞任や更迭が相次いだためだ。本来は速やかに後任者を充てるべきだった。総選挙が間近いこの段階になって補充に乗り出したのはなぜか。(略)巻き返しを図るために、首相は地味で『発信力が弱い』と言われる細田博之幹事長や保利耕輔政調会長の交代を検討したとされる」、朝日「閣僚人事だけは実行したが、政権浮揚への最後のカードは中途半端な結果に終わってしまった。『私の口から「党役員人事をやる」という話は、ただの一度も一言も聞いた人はいないと思います』。首相はきのう(1日)、記者団にこう語り、方針転換はなかったかのように装ったが、大きな誤算だったのは間違いない」、中国「さいたま、千葉両市長選に続き、地方の大型選挙では、鳩山代表が就任して以来3連勝となった。静岡県知事選と都議選を制して早期解散の道を開くという麻生政権のシナリオは、はなから狂った。舛添要一厚生労働相が『都議選後はいろんなことが起きる』と述べるなど、政局がさらに流動化するとの見方も広がっている」。

マニフェストの策定急げ

《国民に目向けて》産経「(静岡知事選など)敗因をしっかりと分析せずに浮足立つのは、政権政党の責任を放棄するに等しい。首相の指導力不足だけではない。自民党がもっとも訴えたいのは何か。有権者にその旗が見えない点を認識することが急務である」、愛媛「(自民党に)いま必要なのは党内抗争でなく、世襲問題や消費税論議などを深め、マニフェスト(政権公約)の策定を急ぐことだ。そして、堂々と民主党と政策で渡り合えばいい。民主党にも、新たな悩みが浮上してきた。鳩山由紀夫代表の政治資金収支報告書への虚偽記載問題だ。鳩山代表は陳謝し、経理を担当していた公設秘書を解雇した。一応の経過報告はしたものの、十分な説明責任を果たしているとはいいがたい」、神戸「首相が一番に気を配らねばならないのは足元の『反麻生』の動きや民主党の出方ではない。国民が抱く不安や政治への期待にこそ、しっかり目を向けるべきである。たしかに、時期を含む解散の判断は首相の専権事項である。だが、もはや少しでも有利にという思惑が通じる段階ではない」。(審査室)

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