2009年 10月13日
民主への対立軸示せ

自民党新体制をめぐる社説
問われる政策立案能力

自民党は9月28日の両院議員総会で、第24代総裁に谷垣禎一元財務相(64)を選出した。国会議員と党員・党友による投票の結果、谷垣氏は有効投票数(498票)の約6割に当たる300票を獲得し、河野太郎元法務副大臣(46)、西村康稔前外務政務官(46)を破った。先の総選挙で野党に転落した自民党は党内の立て直しを図り「反転攻勢」の地歩を固めることが最重要課題で、谷垣新総裁は「みんなでやろうぜ」と、挙党一致を訴えた。党再生に向けた自民党の新しい体制を50本の社・論説が取り上げた。

長老・派閥政治の一掃を

《再生作業》河北「谷垣自民党が差し当たり取り組むべきは1955年の結党以来たまりにたまった、あか落としをすることだ。『与党ぼけ』の一掃と言ってもよい。経済の成長神話に乗り、官僚機構と一体となって支持団体や業界に財政資金を配分してきた。党の力の源泉だった利益誘導。その見返りを選挙(票)と政治資金で決済するシステムを清算しなければならない」、福井「『地に足を付けた党再生』に期待する声が党内にあるは確かだ。谷垣氏は『47都道府県を回って、地域の声を吸い上げる』と宣言した。耳を傾けるのは地方で生活する庶民の生の声であろう。その重さをかみしめ、党の基本理念や政策を一からつくり直す丹念な作業が必要だ」、神戸「派閥均衡、年功序列の人事、世襲問題への対応など批判された党の体質を目に見える形で変えることができるかどうか。新総裁の背負った課題は重い」、北海道「谷垣氏にとって、清新な人材の発掘や魅力ある政策、国民へのアピールなど、やるべきことは山ほどある。まさに『ゼロからの出発』だ。まず手をつけるべきは党改革だ」。

《派閥脱却》中日・東京「自民党にも今『チェンジ』が必要だ。(略)衆院選の敗因として浮かび上がった長老支配や派閥政治を放置しては、参院選で政権復帰の足掛かりとなるだけの議席を確保することは難しい」、茨城・大分など「執行部が指導力を発揮する体制をつくり、派閥解消を進められるかも課題だ。『みんなでやろうぜ』という掛け声は党内融和を促すだろうが、今の自民党がそれでいいのか。派閥長老が党内論議を押さえ込むような姿が変わらなければ、国民の支持は取り戻せない」、山陽「国民の間でも自民党の長老・派閥政治への不満は根強く、衆院選での自民離れに拍車をかけたともいわれる。(略)従来型の派閥重視型では国民の理解は得られまい。谷垣氏の力量が試される」。
《対立軸》毎日「問われるのは民主党への対立軸の構築だ。谷垣氏は『小さな政府』の見直しを主張するが、一方で新政権の政策をばらまきと批判する。構造改革のどの部分を改め、どこを維持するのか。消費税問題の扱いも含めて詰めなければ、いつまでも抽象的なマニフェストしか作れまい」、日経「最優先の課題は、失われた国民の信頼をいかにして取り戻すかだ。(略)鳩山内閣の発足直後の支持率は75%に達し、『脱官僚依存』や予算配分の見直しも好意的な評価が目立つ。政策面の対立軸があやふやなまま、国会運営で対決姿勢を強めるだけでは有権者の支持は得られない」、朝日「自民党は自らの存在目的、アイデンティティーを再定義しないと、民主党政権への対抗軸を定めるのは難しい。(略)野党としての主戦場は国会だ。政権の誤りを突き、説得力のある対案をぶつけなければならない。これまでのように官僚機構を頼るわけにはいかない。政策立案能力が問われる」。

最大の課題は参院選勝利

《政権奪還》読売「新総裁の最終的な目標は、政権奪還にある。(略)参院選では、党執行部に権限を集中させ、候補者も含め戦略を練り直すことが迫られそうだ。選挙対策も、地方を重視するだけでは、展望は開けない。大事なのは、都市部の働き盛りの世代などから共感を得られる政策を打ち出すことだろう」、産経「谷垣禎一総裁は、党運営の要となる幹事長に、麻生政権などで国対委員長を務めた大島理森元農水相を任命した。(略)新執行部が直面する最大の課題は参院選での勝利だ。10月8日には神奈川、静岡両補欠選挙が告示される。来年夏の参院選は、自民党が反転攻勢できるかどうかの大一番となる。選挙を実質的に取り仕切る幹事長の責任はきわめて大きい」、中国「健全な議会政治には、与党に代わって政権の受け皿になる野党が重要になる。野党として3党連立政権を厳しく監視し、いつでも政権 に復帰できる態勢を整えておくことが、政治によい緊張感を生むことになるだろう。(略)政権政党でなくなった自民に問われているのは、民主のあら探しではなくて、明確な国の将来ビジョンを示すことである」。(審査室)

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