2009年 11月17日
痛みを分かち再建を

日航救済策をめぐる社説
抜本的に航空行政見直せ

経営再建中の日本航空について前原誠司国土交通相は10月29日、国と金融機関の共同出資で設立された「企業再生支援機構」を活用して事実上、政府管理の下で再建を目指す方針を表明した。国交相は「日航は極めて公的色彩の強い企業で、万が一飛ばなくなるようなことになれば日本経済にも大変問題を起こしかねない」と語り、政府一丸の支援に取り組む考えを示した。かつて「日本の翼」と称された日航の再生へ向けた動きを33本の社・論説が取り上げた。

「親方日の丸」的甘え残る

《破綻回避》西日本「会社更生法など法的整理で一気に過去の負債を整理する。日航再建にそんな選択肢はなかった。取引先は国内外に広がっており、影響が大きすぎるからだ。(略)駆け引きしていても経営が好転するわけではない。早く再生計画を仕上げるべきだ」、読売「国がここまで民間企業の再建に関与するのは異例のことだ。それだけ、日航の経営が危機的だということである。日本の航空輸送の6割を担う日航が経営破綻(はたん)すれば、国民生活や経済活動にも大きな影響が出る。公的資金を含めた国の支援はやむを得ないだろう」、産経「日航はすでに債務超過とされている以上、民事再生法を活用する方が管財人の下で迅速に再建手続きに移行できる。法的整理を排除する理由はないはずだ」。

《高コスト体質》下野・岐阜・日本海など「日航が弱体化した原因は多岐にわたっている。経営責任でいえば、人員過剰、高賃金は長く批判されてきた。子会社による海外ホテル事業の拡大、燃費効率の良い中・小型機への更新の遅れ、運航トラブルなども挙げられる」、山陽「日航はこれまでも経営悪化のたびに巨額融資で救済され、高コスト体質が温存されてきた。長年染み付いた『親方日の丸』的な甘えの構造を断ち切らない限り、再建はおぼつかないだろう」、北海道「再建策を探る過程で、あらためて浮き彫りになったのは日航の危機的な財務状況である。有利子負債は8千億円を超える。引き金は、昨年来の世界的な経済危機などによる旅客需要の落ち込みだった。ただ、これほどの苦境を招いた背景には高コストなど甘い経営体質があったのは否めない」。

《航空行政の責任》神戸「指摘しておきたいのは、長年にわたって日航を再建できなかった政府の責任である。国民や金融機関の負担を求めるからには、今回の再建案で日航を確実に再生させ、長い目で日本の航空業の活性化につないでいくしかない。地方空港が乱立し、国際ハブ空港の整備でも世界に遅れをとる日本は、航空行政を抜本的に見直すときに来ている」、新潟「経営再建は世界的な不況と航空自由化の中、厳しい競争にさらされながら実現しなければならない。政府と機構には強い指導力が求められる。併せて空港整備の特別会計など、事態の背景にある航空行政の在り方を抜本的に見直すことも重要だ」、南日本「経営効率化のため、路線廃止も課題となる。採算を度外視した赤字路線を就航させた結果、経営にしわ寄せがきた。(略)ただ、搭乗率だけを廃止の基準にし、離島便などを安易に切り捨てれば公共交通機関としての責任を全うできまい」、熊本「今必要なのは、抜本的な日航の再生だ。と同時に忘れてならないのは、『日本の空』を今後どうしていくかという、未来を見据えた取り組みだろう。羽田空港と成田空港にそれぞれどんな役割を持たせるかの問題をはじめ、国際情勢を見通した航空政策への転換を急がねばならない」。

企業年金の減額は不可避

《相応の痛みを》中日・東京「日航に対する公的支援はやむを得ないだろう。だが最低条件は企業年金の減額だ。(略)公的資金が年金に充てられては国民の理解は得られない。政府は特別立法も検討する構えだが、当事者間で早期に解決することを求めたい」、朝日「労働債権のカットには慎重であるべきだが、実質的に債務超過の日航に公的資金を投入する以上、やむを得ないのではないか。当然のことながら、痛みは経営陣と従業員、株主はもちろん、銀行、地方空港などすべての利害関係者に及ぶ」、日経「関係者が痛みを分かちあう公平な再建案が要る。公的資金でJALの資本を増強するのなら、一企業の再建への税金投入となる。その前提として、社員や株主、債権者を含めたJALの関係者が相応の痛みを引き受けるのは当然だろう」、毎日「赤字路線からの撤退や人員削減も必要だろうし、企業年金の給付水準の引き下げについては、強制的な減額を視野に入れた特別立法なども検討されるという。これまで手がつけられなかった分野についても、きちんとした対応をし、困れば国の支援に頼るという日航の経営体質を、抜本的に改革してもらいたい」。(審査室)

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