2009年 12月1日
中長期の成長戦略を

GDP速報と鳩山経済政策をめぐる社説
公約よりも景気優先に

内閣府が11月16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は前期比1・2%増、年率換算で前期比4・8%増と2四半期連続のプラス成長となった。だが、生活実感に近い名目成長率は6四半期続けてマイナスを記録。一方で消費者物価が下がり続け、政府は20日の月例経済報告で「デフレ宣言」をした。GDP速報を受け約40本の社・論説が鳩山政権の経済政策を論じた。

前政権の対策 検証が必要

《実感なき回復》新潟「雇用や所得環境に改善は見られない。民間企業の冬のボーナスはこれまで最大の減少率が予想されている。こうした状況で景気の持ち直しを実感できる国民がどれだけいるだろうか」、日経「成長を支えたのは環境に配慮した新車購入への減税に代表される政府の景気対策や、中国を筆頭に好調な対アジア輸出だ。自律回復には遠い」、山陽「予想を上回るGDPの大幅増の発表にも株式市場の反応は鈍かった。先行き不透明感が解消されていないためといえるだろう」、中日・東京「雇用や賃金低迷が続き家計は将来に不安を抱いている。『補助金や減税の恩典が受けられるうちに』と買い替えが活発になったものの、政策が見直されれば息切れするのは必至だ」。

《自律回復》神奈川「次の一手は現政権の真価を問うことにもなる。現在の回復基調は前政権時代の経済対策に寄りかかっている側面が小さくないからだ。『底打ち宣言』も前政権下であることを考えれば、現政権は景気循環の上昇局面に立ち会えているだけという厳しい見方も出てこよう」、高知「景気後退懸念を受けて、刺激策を打つのは自民党政権時代にも繰り返されたが、その効果は大抵、限定的で、後には膨大な借金が残された。力強い需要を伴った自律的な回復はついぞ実現しなかった。鳩山内閣は過去の対策を検証し、より効果的な施策を練り上げる必要がある」、朝日「社会的安全網の強化で雇用や消費を支えると同時に、回復の動きを見せている設備投資などの民需を喚起することが必要な局面である。(略)鳩山政権は内需を前向きな拡大に導くメッセージ性を込めて、2次補正と来年度の本予算の姿を早く示すことが肝心だ」。

《公約修正》読売「鳩山内閣は今年度の補正予算を約3兆円凍結し、来年度予算も、景気刺激に即効性が期待される公共事業などをカットするという。政権公約に盛り込んだ目玉政策の財源を得るためだが、こうした姿勢では、地方経済などの冷え込みを加速させる『マニフェスト不況』に陥らないか心配だ。政策選択の原則を公約優先から景気優先に切り替え、政策を抜本的に見直すべきだ」、北國「鳩山政権は『事業仕分け』による予算削減に熱心で、『廃止』や『地方移管』が乱発されている。(略)予算を削れば削るほど景気に悪影響を及ぼし、地方が苦しむ現実にも目を向けてほしい。財源不足が解消できぬなら、マニフェストの一部実施をあきらめてでも、即効性のある景気対策に予算を振り向ける必要がある」、中国「『有権者との約束』を金科玉条とするのではなく、すべてをもう一度議論しておきたい」、秋田「マニフェストは国民との契約であり、明記したことをあっさりとほごにするようでは政治への信頼が失われかねない。(略)先送りや修正が避けられない場合は、正面から堂々と、なおかつ丁寧に、その理由を説明しなければならない。都合よく理屈をこねくり回すような言い訳は許されない」。

先行きに不安ぬぐえるか

《成長戦略》毎日「目先の景気刺激策を繰り返すのはきりがない。これから政府が検討する2次補正予算案では、中長期の観点で家計に元気を与える失業対策や生活支援策を柱とした政策に知恵と限られた財源を投入することが大事だ。(略)日本の経済に必要なのは、技術革新や生産性の向上ばかりでなく、国民の間に将来への希望や安心感が広がっていくことである」、京都「中長期の経済成長戦略を策定する必要がある。先行きに対する不安がぬぐえなければ、政権が目指す内需主導型経済を引っ張るはずの『子ども手当』も貯蓄に回るだけだ」、産経「政府は自律的成長を可能にする中長期の成長戦略も忘れてはならない。特に、デフレ抑止には企業や消費者の心理が改善されて、景気回復への期待が高まるかどうかが重要だ。『生活第一主義』だけでは、不十分だ。経済全体のパイを大きくする政策こそ求められる」、河北「菅直人国家戦略担当相は中長期的な成長戦略を策定する意向も示し、その柱に雇用、環境、子ども、景気の『4K』を掲げる。早急に戦略を描くことが必要だ。(略)政府が成長に向け政策を総動員する姿勢を示すことが経済活動を力づけることになるからだ」。 (審査室)

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