2010年 1月26日
土地資金、説明足りぬ

石川議員逮捕と小沢氏聴取をめぐる社説
首相も党も異様な対応

小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の事務担当者だった石川知裕衆院議員ら、小沢氏の3人の秘書・元秘書が、同会の土地購入をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で15日から16日にかけ、東京地検特捜部に逮捕された。小沢氏は検察との全面対決を宣言し、鳩山由紀夫首相が小沢氏支持を明言する異様な展開。23日になって小沢氏は、それまで応じなかった検察の事情聴取を受け、記者会見で関与を否定したものの、18日から開会中の通常国会に影響が出ている。150本を超す社・論説が取り上げた。

通常国会前のタイミング

《疑惑どこまで》毎日「土地の購入と同時期、胆沢(いさわ)ダム(岩手県)の下請け工事を受注した中堅ゼネコン『水谷建設』元幹部らが『石川議員に5000万円渡した』と供述している。特捜部はこの金が土地購入に充てられた疑いがあるとみている。ゼネコンからの裏献金を使い土地を購入し、それを取り繕うために報告書へ記載をしなかった―。その構図の解明が事件の核心で、小沢氏の関与が捜査の最大の焦点である」、中国「今回の事件で見えてきたのは、小沢氏の手元で政治資金と個人資金が混然として行き来し、陸山会に不動産が蓄積されたことだ。小沢氏がかつて率いた自由党をめぐっても、政党助成金約15億円が組織活動費として当時幹事長の藤井裕久前財務相あてに支出された。その後、党の解散翌年に小沢氏関連団体の口座に入金されたのを検察は確認しているという」、北海道「石川議員の逮捕のタイミングには唐突感もぬぐえない。きょう(16日)民主党大会が東京都内で開かれ、通常国会は18日から始まる。そうした政治日程の中で、これまで任意の事情聴取に応じてきた石川議員を逮捕した目的は何だったのか。捜査は規正法違反の容疑にとどまるのか。それともさらなる展開をにらんだものなのか。地検も捜査の内容や意図についてできうる限り、国民に説明してもらいたい」。

《重い政治責任》朝日「小沢氏は会見で、こう説明した。資金は自宅を売却した残金や家族名義の口座から引き出し、事務所の金庫に保管していた4億数千万円の一部だ。資金の事務処理や収支報告書の虚偽記載については関与していない。しかし巨額の資金を長年、現金で置いていたことは常識では理解できないし、家族名義の預金のもとの出どころも不明だ」、新潟「『政治とカネ』について熟知し、政治資金規正法の中身も知り尽くしているはずの政治家が、規正法違反に絡んで検察から事情を聴かれ、国民の政治不信を増幅させた。この責任は重大と言わねばならない。(略)『金権政治家』ではないか。会見の内容は具体性を欠き、そんな国民の疑問をぬぐい去れなかった」、中日・東京「疑惑は残ったままだ。むしろ、『収支報告書を見たことはない』という発言は問題だ。重要な報告書への関与をまるで放棄している。政治的な責任追及の的となろう」、西日本「潔白というのであれば、小沢氏は自ら国会へ出向いて疑惑を晴らしてはどうか。こうした一連の説明責任をきっちり果たさない限り、政権与党の幹事長職は務まらないと覚悟すべきだ」。

経済への悪影響にも懸念

《首相も党も》読売「鳩山首相の対応も疑問だ。自ら偽装献金事件を抱えているため、説明責任や政治責任が及ばないよう、小沢氏をかばっているようにしか見えない。特に問題なのは、小沢氏に『どうぞ闘って』と述べたことだ。捜査機関を批判した当事者を激励するかのような発言は、行政府の長として不適切だ。首相はその後、検察批判の意図を否定し、『国民に必要な説明をすると思う』と付け加えた。そうであれば、民主党代表として、小沢氏に説明責任を果たすよう指示すればよい」、秋田「民主党の閉鎖性に関して言えば、事件が表面化して以来、『物言わぬ集団』と化したことには驚きと失望を禁じ得ない。小沢氏を擁護するあまり、真相解明を求める声がほとんど出ないのは異常である」、産経「首相が検察捜査に介入するような発言を繰り返し、政権内でも情報漏洩(ろうえい)の可能性を強調して検察やマスコミを牽制(けんせい)する動きが続いている。こうしたことは厳正中立な捜査を妨害し、疑惑解明を遠のかせている。小沢氏に幹事長を続投させた鳩山由紀夫首相は『潔白だと言っていたから信じたい』と述べた。国民の信を失っている状況にどう対処するかが問われる」、日経「各種世論調査で内閣支持率は低下し、株式市場などでは小沢氏の政治資金問題で揺れる鳩山政権の経済運営への懸念も広がり始めている。いたずらな政局の混乱、経済への悪影響を招かぬよう、ていねいな国会対応が政府・与党に求められる」。(審査室)

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