2010年 4月6日
閣内の不協和音露呈

郵政改革法案をめぐる社説
民業圧迫、地域に打撃

亀井静香郵政改革担当相と原口総務相は3月24日、郵政改革法案の概要を発表した。小泉純一郎元首相が推進した民営化路線を大転換する内容で、政府による持ち株会社への出資比率を3分の1超とし、貯金の預入限度額を現行の倍の2千万円に引き上げるなど、政府関与の下で業容拡大を図る公的色彩の強い企業体となる。だが、この内容について閣内で異論が噴出するなど政権内部の不協和音が露呈。結局、閣僚懇談会で再調整し、鳩山由紀夫首相の裁定で概要通り法案化することで決着した。改革概要と政策決定の迷走を50本を超す社・論説が論じた。

郵便局の一体利用を歓迎

《指導力不足》読売「郵政改革の骨格部分について、首相と担当閣僚や、閣僚同士の対立が露呈する。これでは、野党から内閣の体をなしていないとの批判が出るのも当然だ。首相は一体、郵政改革法案づくりの進捗(しんちょく)状況を、どこまで把握していたのか。結局、改革の主要部分まで、亀井氏らに丸投げしてきたことのツケがまわってきたということだろう。首相の指導力不足が、混乱の主因といえる」、西日本「郵政民営化の見直しは、半年前の政権交代で誕生した鳩山政権の重要なテーマであるはずだ。その重要法案の決定過程で閣内の稚拙な調整不足が露呈する異常さを、私たちは憂慮せざるを得ない」、毎日「ゆうちょ銀行への預け入れ限度額を現行の1000万円から2000万円に倍増する点に関しては今後、ゆうちょ銀行に資金が集中した場合には引き下げも検討するという。結局、元の亀井氏案に戻った内容だ。一体、これまでの迷走は何だったのだろう。鳩山由紀夫首相の政権統治能力に疑問符がつくことだけは間違いない」、福島民報「このドタバタ劇の原因は何か―と探っていけば、いずれも鳩山由紀夫首相にたどり着く。リーダーとしての指導力不足と発言の『ぶれ』に尽きる、ようだ」。

《「官」の肥大化》朝日「巨大なゆうちょ銀行がさらに肥大化することの危うさを、鳩山政権はなぜ真剣に考えようとしないのだろうか。郵政改革見直しの強引な内容に、首をかしげるほかはない。(略)旧特定郵便局長の意向を受けてのことか、郵便局はなんとしても残すとの執念がにじむ。だが、今でも大きすぎる郵貯・簡保が肥大化の道を突き進めば、日本の金融システムはさらにゆがむ」、信毎「まず問題なのは、ゆうちょ銀行の預入限度額を2倍の2000万円に引き上げ、かんぽ生命保険の上限も2倍近い2500万円にする点だ。(略)2社の資産は、いまでも飛び抜けている。政府の信用が後ろ盾になり、貯金や保険がさらに集中して、民業を圧迫しかねない」、河北「金融2社は『暗黙の政府保証』をバックに業務範囲を広げる。地域の民間金融機関にとっては大きな脅威だ。預金が郵貯に流出して経営を圧迫、中小企業に対する融資にも影響が出れば地域経済に打撃を与えかねない」、産経「すでに郵貯と簡保あわせて270兆円もの資産があるのに、さらに資金を集めて民業を圧迫すれば『民間活力を阻害しかねない』と心配するのは真っ当な意見だ」。

《全国一律サービス》福井「郵政民営化が進めば、いずれ郵便局もなくなり、極めて不便な生活を強いられるとの不安が地方から上がるのは当然だった。(略)郵政グループの一体運営を約束した今回の改革法案は、こうした問題の解消を図ったという点で評価できるだろう」、中国「これまで郵便事業だけに義務付けられていた全国一律のサービスがゆうちょ銀行とかんぽ生命にも拡大される。金融機関が少ない離島や中山間地では貯金や保険の一体的利用を望む声が強かった。歓迎する利用者も多いに違いない」。

「郵政」の位置付け明確に

《見えぬ将来像》神戸「ゆうちょ銀などが本当に収益増を図れるかに疑問も残る。資金運用は国債に極端に偏っているため、このまま資金量が増えても、新たな融資先を開拓するのは容易ではないだろう。安定した運用益の確保が課題だが、その点も依然、展望がみえない状況だ」、中日・東京「法案とは別に非正規社員十万人の正社員化も打ち出した。派遣切りなどで揺れる雇用関係の安定化自体に異論はないが、年間三千億円余分にかかる人件費をどう捻出(ねんしゅつ)するのか。効率の高い店舗展開など、徹底した経営の効率化に努め、自らその費用を生み出す労苦に挑むべきだ」、日経「首相や閣僚は日本の金融システムの中で郵政をどう位置付けるか、もう一度原点に立ち返って議論すべきだ。特に民主党には改革の『逆走』とも言うべき流れを本当に止める気があるかどうかが問われる。限度額の引き上げ幅を縮めたり、結論を先送りしたりして当座をしのいでも、何の解決にもならない」。(審査室)

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