2010年 6月22日
財政再建へ具体策を

菅所信表明と代表質問をめぐる社説
基地問題の展望見えず

菅直人首相は11日、衆参両院本会議での初の所信表明演説で「強い経済・財政・社会保障」の一体的実現を目指すと強調。超党派国会議員による「財政健全化検討会議」設置も提案した。米軍普天間基地移設では日米合意を前提に沖縄の負担軽減に取り組む決意も表明。ただ、14、15日の代表質問だけで国会はあわただしく閉会、実のある論議に乏しかった。80本を超す社・論説が所信表明と代表質問を取り上げた。

企業・団体献金に触れず

《成長と財政建て直し》 日経「経済成長と財政再建の両立を目指す姿勢は評価できる。首相は消費税など税制の抜本改革に着手するため、超党派による『財政健全化検討会議』の創設を提唱した。国家的な課題で与野党の合意形成を目指すのは、意味のある試みだ。ただ選挙の争点になるのを避けようとするだけでは、建設的な議論を導けない。与党の責任としてまず民主党が具体案を示すべきだろう」、読売「財政の赤字体質からの脱却や社会保障の財源確保には、消費税率の引き上げが欠かせない。こうした重要な政策課題については、与野党が共通の認識・合意を形成することが望ましい。自民党など野党も積極的に応じるべきだ」、北國「増税をして景気を悪化させてしまったら、医療や介護などの成長分野に支出する余力など生じるはずがない。そもそも経済成長と増税が両立するはずがないのであって、菅首相の言う『経済・財政・社会保障の一体的実現』は机上の空論に等しい」、信毎「参院選までに消費税への対応を含めた具体的な財政再建策をしっかりと示す必要がある。超党派の会議の呼び掛けも、消費税率引き上げをめぐる争点隠しになってはまずい」、高知「税制抜本改革、年金制度改革については野党側と協議したいというが、受け入れる空気が今の国会にあるだろうか。超党派の議論には国会運営の在り方までさかのぼって環境を整える必要がある」、京都「雇用創出や成長につなげる『第三の道』を追求するとの主張なども『ばらまき路線』とは一線を画し、現実的といえる」、毎日「首相が言うところの公共事業中心、市場原理主義にかわる『第三の道』の中身があいまいでは、負担増への国民の理解は得られまい」。

《政治とカネ》 北海道「衆院選で公約した企業・団体献金の廃止には触れず、鳩山氏や小沢一郎前幹事長の資金問題を反省し改革に取り組もうとする姿勢に乏しい」、中国「原因を踏まえた改善策を示すべきだった。企業・団体献金禁止に向けたより踏み込んだ考え方を語る機会だったはずである」、西日本「最も理解に苦しむのは、前政権を崩壊に導いた『政治とカネ』の問題を、首相がほとんど素通りしたことだ。もし、『政策以前の問題だから』という認識だとすれば、甘いと指摘しておく」、福島民友「小沢氏らの問題では、役職を退いたことでけじめをつけたとは多くの国民は思っていない。仙谷由人官房長官が厳重注意とした荒井聡国家戦略担当相の事務所費問題も含め詳細説明は避けて通ることはできない」。

《沖縄と外交》 沖縄「米軍普天間飛行場の県内移転を進める菅内閣の基本方針と沖縄の負担軽減とは真逆のベクトルにある。日米合意を前提にしながら、どういう形で負担軽減を進めていくのか。残念ながら、その道筋は示されなかった」、琉球「普天間の機能にしても、国外に移す選択こそが解決への近道ではないのか。首相の説く現実外交こそ非現実であろう」、中日・東京「首相がまず沖縄を訪れることで、こじれた問題を解きほぐそうとする姿勢は歓迎する。ただ現実主義が現状固定の言い訳になってはならない。沖縄県民の基地負担を軽減するため、普天間飛行場の『国外・県外移設』など在沖縄米軍基地を抜本的に見直す、大胆で緻密(ちみつ)なビジョンを打ち出すべきだ」、産経「『現実主義を基調とした外交を推進』に異論はないが、中国の軍事力増大をどう直視するかがポイントだろう。『中国とは戦略的互恵関係を深める』というだけでは、安全保障への認識は不十分と言わざるを得ない」。

参院選の判断材料示せ

《論議打ち切り》 山陽「本来なら代表質問に続き、予算委員会や党首討論などを通じて議論を掘り下げるべきである。新政権が発足したばかりだけに、参院選の投票の際に貴重な判断材料となるはずだ」、新潟「ところが予算委審議どころか、党首討論さえカットされてしまった。こうした与党の国会運営は、『選挙至上主義』のそしりを免れまい」、朝日「衆院代表質問での菅直人首相の答弁は納得のいくものではなかった。このまま通常国会を閉じてしまうのでは、判断材料もないのに参院選で審判を下せと有権者に迫っているに等しい」。(審査室)

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