2010年 6月29日
増税の根拠・効果示せ

参院選公約・消費税をめぐる社説
選挙前の首相決断は評価

通常国会の16日閉幕を受けて民主・自民など各党が17日、参院選公約(マニフェスト)を発表した。民主党公約は消費税論議を超党派で開始することを明記し、経済・財政や外交・安保を中心に現実路線に軌道修正する内容となった。消費税では菅直人首相が会見で税率「10%」に言及、自民党公約も「当面10%」を明記し、24日公示された7月11日投開票の参院選は消費税が大きな争点に浮上した。50本を超える社・論説が、消費税や民主党の軌道修正について論じた。

超党派の協議欠かせない

《消費増税は不可避》 日経「消費税を含めた税制の抜本改革は自民党政権が先送りを続けてきた難しい課題である。参院選の前に増税への基本的な考え方を表明した首相の決断を歓迎したい。(略)消費税率の引き上げやその前提となる社会保障改革、法人税の軽減は、いずれにせよ実施せざるをえない政策だ。また政権が代わっても簡単には変えられないものであり、超党派での協議は欠かせない」、読売「消費税率引き上げが避けて通れないことは明らかだ。国民に痛みを伴う増税であっても、必要性を堂々と訴えることが政治の責任である。(略)菅首相が税率引き上げの方針を示したことは、評価してよい。ただ、首相は記者会見で、増税前に衆院選で信を問う意向も示した。こんな悠長な構えでは、せっかくの機会が失われかねない」、朝日「消費増税は単なる財政再建の手段ではない。ほころんだ社会保障を立て直して安心と成長につなげていく道であり、国の基本設計にかかわる課題だ。選挙後ただちに超党派の検討の場を設け、早急に方向を定めるべきだ。有権者に甘い言葉をささやき、票を得る。長く続いた利益誘導政治から、負担の分かち合いを正面から呼びかける政治へと、今回を機に大きく転換させたい」。

《消費増税ありきか》 北海道「昨年の衆院選で民主党はどう主張していたか。鳩山由紀夫前首相は『消費税の議論は任期中の4年間はしない』と繰り返していた。それが首相が代わった途端、公約の一番手に据えられる。国民は戸惑うほかはない。(略)このままでは増税だけが先行し、一方的に国民が負担を強いられることになりはしないか」、信毎「増税は本当に『強い経済』に結び付くのか、根本的な問題がある。安易な増税論に流れれば、公務員改革や無駄の削減がおろそかになる懸念が捨てきれない。仮に増税が必要としても、なぜ消費税なのか。消費税率の引き上げは、低所得層には大きな負担となる」、中日・東京「仮に超党派で消費税率引き上げに合意しても、行政の無駄をぎりぎりまでなくせなければ、国民の理解は得られまい。穴の開いたバケツにいくら水を入れてもたまらないからだ。(略)消費税よりも、まず行政の無駄をなくすことに、党派を超えて力を合わせるべきではないか。あえて提案としたい」。

《全体像提示せよ》 産経「首相の見解はマニフェストに明記されておらず、自民党の10%を『一つの参考にする』とした根拠も明確にしていない。(略)首相は増税の全体像をわかりやすく提示したうえで、自ら指導力を発揮し、与党内を説得しなければならない」、毎日「民主党はこれまで消費税について衆院選で国民の審判を仰ぐとしていた。参院選後早期の合意を目指すならば、なおのこと具体的な税制改革像や財政再建のスケジュールを有権者に示す必要があるはずだ。仮に自民党案を参考にするような言い回しに終始するようでは、与党として責任ある対応と言えまい」、神戸「引き上げの是非を論じる前に財政再建にどの程度の効果をもたらすのか、知っておかねばならない。(略)引き上げ分の税収を何に使うのか。支出をどれだけ削り、その結果、借金はどれだけ減るのか。具体的な数値を挙げて道筋を示すことだ」。

公約の失敗認め総括を

《見直しの説明を》 熊本「民主党が現実路線に大きくかじを切った。と言えば聞こえはいいが、昨年の衆院選で示したマニフェスト(政権公約)の失敗を自ら認めた方向転換である」、愛媛「昨夏のマニフェストで有権者を欺いた事実は消えない。民主党はまず、わずか1年で内容を見直さざるを得なくなった経過を総括し、過ちを猛省すべきだ」、北國「なぜマニフェストの見直しに踏み切ったのか、国民への説明も反省も不足している。国民に十分な説明とともに、まず不明をわびる必要があるのではないか」、上毛・日本海など「政権担当後に経験した現実を踏まえて見直すのは当然といえる。しかし税制の抜本改革などは公約の根幹部分にかかわる修正である。首相も交代しており、本来ならば衆院解散・総選挙で国民に審判を仰ぐべきものだ。民主党は政策転換の中身と理由を丁寧に説明する必要がある」。(審査室)

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