2010年 8月31日
まず円高阻止に全力を

景気減速と経済対策をめぐる社説
政府は日銀と協調せよ

内閣府が16日発表した4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期(1~3月期)に比べ0.1%増、年率換算で0.4%増だった。成長率は前期の年率4.4%を下回り、景気の減速を示した。省エネ家電の購入を促すエコポイント制度などの政策効果が一巡し、個人消費が低迷したことなどが要因。菅直人首相は関係閣僚に追加経済対策の検討を指示したが、円高、株安、デフレが進行する状況に、60本を超す社・論説が景気の先行きを懸念する論調を展開した。

デフレ深刻化を懸念

《息切れ》 熊本「外需と内需がバランスよく景気拡大に貢献し高成長となった前期から状況は一変した。4~6月期は輸出の好調は維持したものの、個人消費は勢いを失い、これまで通りの外需依存に逆戻りした。なんとかプラス成長を維持したのは、輸出が5.9%増と好調だったからだ」、北海道「GDPの約6割を占める個人消費が息切れしている。4月にエコポイント制度の対象商品数が絞り込まれ、薄型テレビなどの国内販売高が低迷したことが響いた」、新潟「過去の経済対策による消費刺激策は確かに一定の効果を生み、景気の回復傾向を支えてきた。それが需要の先食いであることは当初から分かっていた」。

《円高・デフレ》 信毎「深刻なのは、景気実感に近いとされる名目GDPが、前期(1~3月期)に比べ年率換算で3.7%減と、3四半期ぶりのマイナスになったことだ。物価が継続的に下がるデフレの進行がより鮮明になった。これでは賃金も税収も減り続ける。経済力が弱まり、財政再建の道も遠のく」、高知「全体の伸びを支えた輸出も先行きは不透明だ。(略)加えて、円高の進行が重荷となる。15年ぶりの水準にまで上昇した円相場は輸出の減少を招き、企業業績の悪化につながる。円高が一向に出口の見えないデフレをさらに深刻化させる懸念も強まるだろう」、中日・東京「先行きをみても米国は景気後退感が強まっており、金融不安を抱えた欧州も不透明感が残る。政府・日銀の無策を見透かしたように円高が進んでいるうえに、デフレが加速するようでは当分、日本経済の自律反転は期待できないのではないか」。

《追加対策は》 河北「日本経済の体力を奪い続けるデフレを克服する上で重要なのは、需要と雇用を創出することだ。新成長戦略を前倒しして環境・エネルギーや医療・健康分野での新事業展開を後押しする施策が必要だ」、毎日「回復のけん引役は民間にバトンタッチされなければいけない。そこで期待されるのが企業の設備投資である。設備投資が盛んになれば機械や工場の建設資材などへの注文が増え、雇用にも貢献する。雇用や賃金が改善しない限り、持続的な消費の回復は難しい」、日経「円高の“破壊力”はちょっとやそっとの経済対策など洗い流すほどに大きい。大手企業のように海外生産への移行で為替変動の影響を回避することができない中小企業のことも考え、まず円高阻止に政府も日銀も全力をあげてほしい。本格的な経済対策はその後の話だ」、神戸「本来なら政府・日銀は、円高に対し毅然(きぜん)としたメッセージを発信しなければならない。為替介入や追加金融緩和策などの対抗策を検討してもいい時期だ」。

菅・白川会談に失望感

《政府と日銀》 産経「政府・日銀のコミュニケーション不足には重大な懸念を抱かざるを得ない。自民党政権下では日銀総裁がメンバーの経済財政諮問会議があった。民主党政権はそれを廃止したため、経済閣僚らも含めた議論の場がなくなった。これでは緊密な意思疎通が図れるはずがない」、西日本「23日に行われた菅直人首相と日銀の白川方明総裁との約15分間の電話会談も、当事者の思惑と違って失望感を広げた。会談では、政府と日銀が今後緊密に連携していくことを確認したが、株式市場などは円高対策に言及がなかったことで肩透かしを食ったと受け止めた。市場との『対話』も未熟である」、読売「政府・日銀は機動的に政策協調し、景気の失速を防がねばならない。(略)今後、さらに円高が進むようなら、首相は日銀総裁と直接会談し、対策を協議すべきだろう。カギを握るのが日銀の対応である。金融緩和は、財政出動による金利上昇圧力を抑え、円安を促す効果もある。日銀は一段の量的金融緩和に踏み切るべきだ」、朝日「大切なのは、政府と日本銀行との本格的な協調体制を築くことだ。(略)それにはやはり首相がデフレ脱却や景気回復のための当面の施策はもちろん、消費増税を含む税制抜本改革と財政再建の道筋についての基本的な考えを日銀側にきちんと説明し、理解を得ることが欠かせない」。(審査室)

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