2011年 1月1日
学生・子供向けを意識

2010年紙面企画・改革の状況
親しみやすさ前面に

2010年、新聞各社の紙面刷新では、学生・子供向けの企画拡充や、子育て世代向けの情報発信が目立った。直接的には、学生の就職難や新学習指導要領に新聞活用が盛り込まれたことなどが背景にあるが、これまで閲読率が低かった層への積極的なアプローチという意味合いもあろう。いずれの企画も、親しみやすさと実用性が前面に打ち出された。

NIE企画の拡充相次ぐ

《就職活動情報》読売の「就活ON!」(火曜朝刊教育面)は、企業採用担当者へのインタビューや面接で役立つマナーなどを紹介。「原田デスクの必勝講座」は、同社人事部次長が就職戦線を勝ち抜くためのテクニックを伝授した。信毎は「職(ジョブ)ナビ」(火曜朝刊)を新設。北日本は、土曜朝刊のくらし面「わかもん・はやりもん」で、「Do!就活」を新連載。南日本は「キャンパスウエーブ」(隔週土曜)で就職活動情報を提供。琉球「就勝ノート」(第2・4水曜)は、就職を目指す大学生が企業などを訪問し仕事の意味や疑問などを直接インタビューした。一方、朝日は「シューカツ2010」のカットを、教育、社会、経済など各面で使用。ノウハウより早期化する就職活動の現状ルポに重きを置いた。また、就活だけがテーマではないが、北陸中日は、若者向け紙面「popress」(木・土曜朝刊)を新設、取材・編集も20代の記者が手がけた。

《新指導要領を機に》 日経は「NIKKEIプラス1」(土曜朝刊別刷り)に「子どもニュース面」を見開きで新設、時事問題をテスト形式で解説する「ニュースにチャレンジ」を連載。東奥は毎週水曜夕刊のNIE特集を見開きに広げ第2・4水曜で展開。記事を使った読解問題やNIE事例など、より実践的内容を盛り込んだ。下野は「読む 知る いかす」面を新設(日曜)。中学生対象の新企画「探検アートBOX・宇都宮美術館の所蔵品紹介」も。中日は月曜朝刊のNIE欄を見開きに拡大するとともに土曜朝刊に移した。先生が余裕をもって教材用の紙面を選べるようにという配慮から。福井は「キッズ風の森」(日曜)面に「ふくいニュースなぜなに」を新設。北陸中日も隔週日曜のNIE欄を拡充、毎週水・日曜に。京都は日曜版を「京都新聞ジュニアタイムズ」に一新。徳島は月1回(月曜朝刊)の「NIEひろば」を「阿波っ子新聞」に刷新。第4を除く土曜付に拡充した。高知は毎月最終日曜に小中学生向けの4ページ特集面「読もっか」を新設。熊本は「学生のページ」を土曜夕刊から月曜朝刊に移設。

《子供記者》新聞作りを通じて、新聞に小さい頃から親しんでもらおうとの企画も広がりを見せた。デーリー東北は日曜付に小中高生向けの「The Student Page」を新設。子供記者を募った。福島民報の「ジュニア新聞」(隔週日曜)でも子供記者のコーナーを設けた。西日本は親子で楽しんで読める「こどもふれあい新聞 わくわくプラザ」のページを開設(隔週日曜)、子供記者による現場ルポなどを掲載した。長崎は「キッズわーるど」面で月一回、子供記者の記事を掲載。
 《子育て情報》若い子育て世代のサポートを打ち出す企画も目に付いた。福島民友は「親と子のページ・ふくしまファミリー」面を第3日曜に掲載。信毎は、松本短大幼児保育学科教授による育児ヒント「ほっこり こころ育て」を第4日曜に連載。「地域で支える―重症心身障害児の在宅ケア」も金曜朝刊で連載した。京都は、身振り手振りのベビーサインを読み解いて育児不安から抜け出したライターによる「かあちゃん、あのね ベビーサイン子育て」(月曜・暮らし面)をイラスト付きで連載。愛媛は、第2・4・5土曜に育児面「ぎゅっと!」を新設。大分合同は夕刊で年間企画「未来をはぐくむ 地域と歩む子育て」を連載。

顔が見える紙面づくり

《解説・オピニオン面の強化》毎日が第一報に0.5の付加価値を付ける意味で「1+0.5報」のコンセプトを打ち出したのをはじめ、読売、日経、北海道、福島民友、中日、京都、山陰中央、長崎、南日本などで解説面の充実がはかられた。オピニオン面も、朝日、毎日、神戸、東奥、信毎、中国などが増強した。

《夕刊改革》西日本は折り畳んでも読めるように紙面を四分割したレイアウトを採用し(土曜)、北國は「現代語訳・金沢の三文豪」の企画をスタートさせた。

《読者にさらに近づく》地域密着型企画の拡充はもちろんだが、「作り手の顔が見える紙面」を目指して署名入り記事を増やす(長崎、愛媛、日刊福井)、記者がさまざまな事柄にチャレンジして体験談をルポする(北國)、新聞社や紙面のキャラクターを活用する(下野、日刊福井、徳島、高知)―など、読者との距離を縮める努力も多面的になされた。(審査室)

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