2011年 2月15日
法廷で真相明らかに

小沢民主党元代表の強制起訴をめぐる社説
推定無罪と政治責任は別

小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京第5検察審査会の起訴議決を受けて検察官役に指定された弁護士は1月31日、小沢元代表を同法違反(虚偽記入)で在宅起訴した。検察審議決による国会議員の強制起訴は初めてだが、小沢氏は離党や議員辞職を否定、公判で無罪を主張して全面的に争う。同じ事件で別に起訴された石川知裕・衆院議員ら元秘書3人も7日の初公判で起訴事実を否認した。約80本の社・論説が裁判の行方や小沢氏の責任を論じた。

冷静に裁判見守りたい

《裁判の行方》中国「検察審査会の『起訴相当』の根拠の一つが揺らぎつつあるのも事実だ。同じ罪で起訴された石川議員は、東京地検特捜部の事情聴取の際に小沢氏の関与を認めるよう誘導された、として録音記録を地裁に提出している。強制起訴は通常の起訴とはやや異なる。(略)検察の誘導があったのかどうかも含め真相を明らかにする必要がある」、日経「検審の2度にわたる起訴相当議決をうけ、検察官役に指定された弁護士らが補充捜査で新証拠を得たとは考えにくい。そのうえ、検審が重視した元秘書らの検察官調書の信用性が揺らぐ可能性が出てきた。(略)録音を聴けば検察官の無理な取り調べが明らかになる、と弁護側は主張する。〝小沢裁判〟も検察官役にとって厳しいものになりそうだ」、中日・東京「市民が求めたのは、無罪なのか、有罪なのかの法廷決着である点を重視すべきである。『推定無罪』の大原則が働いていることを忘れてはならない。検察は二回にわたり、『不起訴』の判断をしており、有罪の立証には難しさが伴うことも予想される。冷静に裁判を見守りたい」、河北「捜査段階で一時、容疑の一部を認めた石川議員は、取り調べで検事から脅されたり、誘導されたりしたと主張している。(略)一方、ゼネコンからの裏献金集めの立証を検察側が積み上げていけば、秘書たちだけでつくり上げたシステムではないはずだという当初からの疑念がまた膨らむだろう」。

《小沢氏の進退》産経「国会で疑惑への説明責任を果たさず、政治的かつ道義的責任にも真摯(しんし)に向き合おうとしなかった。国民の判断で刑事訴追されたことを小沢元代表は重く受け止め、自ら進んで議員辞職すべきだ」、毎日「国会は混乱し、民主党政権も強い批判を浴びた。国政に多大な影響を与えていることを小沢元代表はどう認識しているのだろうか。最低限離党して、与党と一線を引くのが筋である」、岩手日報「検審の議決に伴う起訴を根拠として政治家に離党や議員辞職を迫ることは、それによって政治がよくなるかどうかという問題とは別次元で『疑わしきは罰する』という風潮を助長するようでもある」。

《菅首相の対応》読売「小沢氏が政倫審出席という民主党の方針に従わない以上、菅首相は、野党の要求する小沢氏の証人喚問に同意し、国会招致の実現に積極的に動くべきだ。小沢氏に対する離党勧告などの重い処分も、検討に値しよう」、北國「小沢グループ内からは、『刑事被告人には推定無罪の原則がある』として、離党は必要ないという声もあるが、推定無罪の原則と政治的な責任とは全く別問題であり、説得力を持ち得ない。民主党執行部は『政治とカネ』の問題に明確なけじめをつけるべきだ。菅首相が執行部任せにせず、指導力を発揮して、離党勧告に踏み切れるかどうかが焦点となろう」、北海道「民主党は『脱小沢』『親小沢』の泥仕合を繰り返し、国民の幻滅を招いた。強く反省すべきだ。菅直人首相は政治の刷新に指導力を発揮しなければならないが、小沢問題を政権浮揚に利用するのは間違っている。ポスト小沢の政治システムをどうつくるか。それこそが重要だ」。

不毛な議論に終止符を

《国会の責任》佐賀「与野党は不毛な小沢問題の議論に終止符を打って、予算案審議を集中して行ってもらいたい。日本の危機を解決するため、国会での熟議を期待する」、神奈川「国民はこの問題で国会が停滞し続けることにうんざりしている。衆院では予算委員会も始まった。野党も小沢元代表招致をめぐる議論を質疑の駆け引きなどにせず、国政の課題解決に向けた論戦を尽くしてほしい」、秋田「社会保障と税の一体改革や、環太平洋連携協定(TPP)など国民的議論が必要な課題も山積する。小沢氏の強制起訴を政治の駆け引きの具にしてしまっては、国政は立ち行かなくなる。真摯(しんし)な論戦を国会に望みたい」、朝日「政治の側が早急に取り組むべき課題もある。今の収支報告制度は、秘書任せ・他人任せを容認する内容になっている。報告書に政治家本人の署名を義務づけるなど、自覚を促し、責任を明確にする仕組みに改めるべきだ」。(審査室)

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