2011年 4月19日
菅政権に厳しい審判

統一地方選前半戦をめぐる社説
地域政党が存在感示す

統一地方選前半戦の12知事選と4政令市長選、41道府県議選と15政令市議選が10日、投開票された。東日本大震災と福島原発事故という危機の中、民主党は与野党対決の東京、北海道、三重の3知事選で全敗、道府県議選でも改選時を69議席下回った。逆に「大阪維新の会」など地域政党の躍進が目立った。約60本の社・論説が選挙結果を論じ、政権運営や地方自治、震災対応、原発対策などに注文をつけた。

震災、原発事故対応に批判

《民主敗北》毎日「既成政党の存在感が乏しい中、民主党は岡田克也幹事長の地元である三重県知事選でも敗北を喫した。都知事選も実態は候補擁立見送りだ。道府県議選も同党は候補の擁立自体が難航し、当初目標を大きく下回った。政権与党として『危機』の中での不振を深刻に受け止めなければならない」、上毛・岐阜など「選挙結果は政権を担う民主党に対する厳しい審判といえる。震災対応に専念すべきときであり、菅直人首相の責任論が直ちに浮上することはないとみられる。だが菅政権は参院選以降、主要選挙で敗北が続いている。(略)首相の政権運営へのダメージは避けられないだろう」、朝日「首相の仕事ぶりに対する有権者の極めて厳しい評価を反映していることは間違いない。原発事故への頼りない対応への批判や不安も、当然あろう。危機克服に一刻の猶予もならない時だからという理由だけで、辛うじて政権の維持が黙認されている。もはやそこまで追い詰められていると、首相と民主党は自覚するべきである」、産経「東日本大震災への対応で失政を続け、国難克服に指導力を発揮できない菅直人政権に国民が不信任を突きつけたといえる。首相の責任は極めて重大かつ明白だ。信任されていないことが明確になった以上、首相は自らの進退を決断すべきだろう」。

《地域政党》日経「議員選挙では地域政党が存在感を示した。橋下徹大阪府知事が率いる『大阪維新の会』は、大阪府議選で単独過半数を獲得し、愛知でも大村秀章愛知県知事の『日本一愛知の会』と河村たかし名古屋市長の『減税日本』連合が自民、民主両党に続く第3勢力となった。既成政党への不満の受け皿になったといえる」、京都「民主の退潮を突き、『古い議会を変える』と訴えた京都党が市議選で一気に4人を当選させ、全国的な地域政党の勢いを京都でも見せつけた。京都党の躍進は、有権者の既成政党への飽きたらない思いの裏返しだ」、読売「道府県議選では、自民党も長期低落傾向が続いている。既成政党に代わって勢力を拡大したのが首長新党だ。(略)だが、それは『大阪都構想』や『住民税減税』への積極的支持というよりも、既成政党に対する不信の裏返しだろう。首長新党は、『個性的な指導者』の人気に頼るだけでなく、行政全般について責任ある対応をとるべきだ」。

《新知事へ》東京「原発容認派の石原(慎太郎)氏だが、最大の電力消費地のトップとしてこれまでの地方頼みの供給の仕組みをどう考えるのか問うてみたい。(略)東京独自のエネルギー安全保障のビジョンを思い切って示してはどうか。併せて首都機能を分散してリスクを減らす。想定外だった大震災の教訓は、そんな柔軟な発想で都市の在り方を見直すことだとの声は強い」、福井「全国一の原発集中県として事故対策、県民の安全確保が最大の争点だった。(略)(3選した)西川(一誠)氏は選挙終盤に電力3事業者トップと会い、原発増設やプルサーマルなどの課題に関しても『安全対策が県民の納得を得る形で進まない限り』応じられないと強い姿勢を示した。今後、県民目線の『独自の安全基準』をどう設定するか。防災含め一層厳しい対応が迫られる」、佐賀「古川(康)氏の2期の実績が評価された格好だが、原発の安全に対する不安は消えていない。まず安全対策を見直すことで県民の不安を解消してもらいたい。(略)全国で最初に玄海原発にプルサーマルを導入し、『国によると安全は確保されている』と説明してきたのは知事自身だ。国や電気事業者に対策を求めるばかりでなく、県でもチェック機関をつくるなど積極的に見直しを図るべきではないか」。

50%台割り込みは危機

《低投票率》高知「深刻なのは投票率の低下だ。41道府県議選の平均は48.15%と、初めて50%の大台を割り込んだ。(略)東日本大震災を受けた自粛ムードの影響は確かにあっただろう。だが、有権者の間に広がる議会や議員への不信感が根っこにあることを見逃すわけにはいかない」、新潟「明らかになったのは政党政治のふがいなさだけではない。より深刻な問題として立ち現れたのは、地方政治と有権者の間にある距離の大きさだ。(略)有権者の半分しか投票しない。それは地方政治の危機そのものだ」。(審査室)

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