2011年 10月11日
重い小沢氏の政治責任

元秘書3人の有罪判決をめぐる社説
「政治とカネ」決別遠く

小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、東京地裁は9月26日、政治資金規正法違反に問われた衆院議員石川知裕被告ら元秘書3人に有罪判決を言い渡した。判決は、小沢氏からの借入金4億円に関する虚偽記入は被告らが隠蔽(いんぺい)工作のために故意に行ったとするなど、検察側完勝の内容。同じ罪で強制起訴された小沢氏自身の公判も10月6日に始まった。裁判で問い直された「政治とカネ」の問題を、約50の社・論説が取り上げた。

〝金権手法〝浮き彫りに

《癒着認定》神戸「この事件では、石川議員らが無罪を主張した。起訴内容や他被告との共謀を認めた供述調書の相当数は任意性を否定され、証拠不採用となった。しかし、判決は客観的証拠から虚偽記入を認定した。水谷建設からの1億円の裏献金受領も認め、『企業との癒着の発覚を免れるため、意図的に数多くの虚偽記入をした』と理由を述べた」、北海道「秘書時代のこととはいえ国会議員が政治資金問題で有罪判決を受けたことは重い。石川議員は不当判決だとして控訴し議員活動を続けると表明したが、議員の職責を果たすのは難しい。道義的責任を厳しく受け止め辞職するのが筋ではないか」、読売「判決で注目されるのは、公共工事を巡る小沢事務所とゼネコンとの癒着を認定し、小沢氏の〝金権手法〟を浮き彫りにした点だ。小沢事務所は長年、談合を前提とする公共工事の業者選定に影響力をもち、大久保(隆規)被告は『天の声の発出役』として、ゼネコン各社に献金を要請していた」。

《説明責任》毎日「事件を巡っては、『形式犯に過ぎない』との批判もあった。だが、判決は民主政治の下で政治資金収支を公開する意義を強調し、多額の虚偽記載を『それ自体悪質というべきだ』『国民の不信感を増大させた』と厳しく批判した。同感である」、日経「この判決が問うたのは、記入ミスという形式的な犯罪だけではない。いまだに業者との癒着や裏献金がはびこる小沢元代表側のカネの集め方そのものを断罪したといえる」、高知「元秘書らの裁判では、被告らの小沢氏との共謀は審理の対象とはなっていない。しかし小沢氏の裁判とは、争点や証拠に重なる部分も多い。また小沢氏は、報告書への虚偽記入が成立することを否定してきた。3人の裁判で虚偽記入が認定されたことで、小沢氏自身の無罪主張は別としても、いっそう重い政治責任が生じたことは間違いない」、西日本「小沢氏は強制起訴を受け、民主党の党員資格停止の処分中だが、国会では一度も説明していない。自らの出処進退を含め、政治的なけじめをつけるべきである。少なくとも衆院政治倫理審査会か証人喚問で説明責任を果たすべきだ」。

《自浄努力》産経「判決を受けても、野田内閣や民主党執行部は自浄努力を示す考えはないようだ。党員資格停止中の小沢氏を除籍とするなど、より厳しい処分を検討する動きもみられない。政権与党として『政治とカネ』に決別する気がないということなのだろう」、朝日「首相は小沢氏にきっぱりと国会での説明を求めるべきだ。さもなければ、首相が築いた『挙党態勢』は、実は『疑惑隠し』のためだったのか、と皮肉られても仕方あるまい。『秘書3人が有罪となり、責任をとらなかった政治家を思い出せない』。自民党の谷垣禎一総裁の発言に、多くの人々がうなずいている」、北國「判決は複雑な資金の移動について、元秘書は合理的に説明できていないとし、政治資金の流れに一層の透明性を求めた。政治資金では菅直人前首相の献金問題も疑惑がもたれている。法の理念を厳格にとらえた今回の判決を政治家すべてが真摯に受け止める必要がある」。

特捜検察にも厳しい視線

《転換点か》中日・東京「公判では『検事により心理的圧迫があった』と被告の供述調書が証拠採用されなかった。他の被告が自白したと虚偽の情報を告げて、供述を得ようとした違法な手法も明らかになった。特捜検察に注がれる視線は厳しい。捜査の反省点も自ら検証すべきだ」、岩手日報「それにもかかわらず検察の主張を大筋で認めた判決は、取り調べ手法はおかしいが、それによって起訴事実の客観性が否定されるものではないと解釈するのが相当だ」、琉球「『裁判官は自然かつ合理的に認定した。妥当な判決だ』(元東京地検特捜部長の熊崎勝彦弁護士)と評価する声がある一方、『昨今の証拠重視の流れに逆行している』(ジャーナリスト・江川紹子さん)との批判も上がる。(略)調書重視から脱却し、状況証拠だけで大胆に踏み込んだ地裁判決が、『政治とカネ』をめぐる司法判断の転換点になるのか、引き続き注視する必要がある」。(審査室)

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