2011年 11月1日
事態収拾へ実行を

欧州財政・金融危機をめぐる社説
求められる日本の支援

欧州連合(EU)・ユーロ圏首脳会議は10月27日、ギリシャ発の財政・金融危機回避に向けた「包括策」で合意した。①ギリシャ債務の追加削減②銀行の資本増強③欧州金融安定化基金(EFSF)の規模拡大が柱となる。ただ、個々の銀行の保有するギリシャ国債の元本削減や資本注入、EFSF拡大などの細部や手順は詰め切れておらず、実効性に不安も残る。15日のG20財務相・中央銀行総裁会議も具体的な支援策表明は見送った。危機収束へなお綱渡りが続くなか、円高をめぐる不安で日本経済にも先行き懸念が広がる。50本を超す社・論説が取り上げた。

詳細見えぬ「包括策」

《包括策》読売「独仏をはじめ欧州各国がギリギリの交渉で決裂を回避し、危機拡大の防止策を打ち出したことは、ひとまず評価できる。とはいえ、欧州はこれまで、小出しの対策を繰り返して危機を再燃させ、為替相場の乱高下を招いた。今度こそ迅速に実行し、事態収拾に万全を期してほしい」、朝日「ギリシャ国債の元本50%カットは金融機関の自主的な協力で行う形だ。当初計画の21%から大幅に引き上げられ、足並みが乱れかねない。資本増強やEFSFの拡充も、資金規模が十分なのか、懸念がつきまとう。包括策を実行する過程では、銀行の貸し渋りが広がるのを防がなければならない」、毎日「首脳合意には、信用力が低下した国が市場から資金を借りる際、一部を欧州金融安定化基金に保証してもらう制度が盛り込まれた。ただ、これが十分機能するかどうかは、今後決める細部次第だ。どの程度の保証があれば投資家が安心して国債を買うか、予測は難しい。一方、中国など域外の国の資金活用も併せて試みるというが、これも詳細は不透明だ」。

《G20の限界》信毎「今度のG20で残念だったことがある。国際通貨基金(IMF)の資金増強について足並みがそろわなかったことだ。最後の貸し手といわれるIMFの強化ができるなら、それに越したことはない。危機拡大の抑止力になる。新興国が積極的なのに、負担増を心配してか、日米は否定的だった。IMFで新興国の発言力が増すことへの懸念もありそうだ。寄り合い所帯G20の限界を示している」、愛媛「資金拠出増で発言力強化をもくろむ新興国と、財政悪化で欧州救済に消極的な日米など、G20内の対立は根深い。毎回まとまれないのでは存在感が失われ、市場への対応も後手に回ってしまう。機動性に欠ける枠組みの再構築を考えるべきときに来ている」、日経「今のG20に大型の景気対策を打つ余裕はない。だからこそ危機を未然に防ぐ努力が決定的に重要である。問われるのは欧州不安の収束だけではない。先進国は経済成長と財政再建、新興国は景気と物価の安定を両立させ、世界経済の悪化を食い止めるべきだ」。

復興進める日本に打撃

《円高不安》神奈川「欧州の信用不安に出口が見えなければ、対日本円のユーロ安がこの水準のままで固定化することが懸念される。既にドル安にあえぐ神奈川に多い製造業にとっては、輸出で稼ぐ力を何重にも奪われる構図となり、産業の海外流出を加速させかねない」、琉球「金融市場など経済がグローバル化する中、悪影響は欧州域内にとどまらない。欧州発の世界恐慌ともなれば、円高・デフレ・東日本大震災で苦しむ日本経済への影響も計り知れない」、中国「歴史的な円高など既に影響は日本に及んでいる。デフレ不況から一刻も早く脱するためにも、ユーロの安定は欠かせまい。政府は、各国との連携、協調を積極的に働きかけるべきだ」、徳島「ギリシャの財政危機に端を発した欧州の金融・財政問題による国際金融市場の混乱が長引けば、世界経済をも悪化させる。東日本大震災の復旧・復興を進める日本にとっても大きな痛手になるだろう」。

《日本も協力》北國「日本はこれまでに、財政危機国を救済する『欧州金融安定化基金(EFSF)』が発行するEFSF債の2割を購入している。欧米の金融機関の連鎖破綻を避けるために一層の支援が必要であり、さらなる購入もやむを得ない」、産経「危機の深刻化による影響を受けるのは、輸出で高成長を維持している新興国だけではない。日本経済にとっても大きな打撃となる。欧州自らの救済努力を見極め、米国とともにEFSFの原資づくりに発行される債券の追加購入も検討すべきだろう」、河北「欧州の対処策が決まれば、確実に実行されるよう日本は支援したい。EFSFの原資づくりのため発行が見込まれる債券の購入を含め、協調して危機回避に努めることが肝要だ」、中日・東京「銀行が債権放棄を迫られれば、その分も資本増強が必要になる。事態を軟着陸させるには、相当な資金が求められるだろう。日本も資金拠出で協力できる部分は協力すべきだ」。(審査室)

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