2011年 11月8日
沖縄負担軽減の方策は

辺野古アセスと政府の対応めぐる社説
米国防長官来日で再始動

野田内閣の閣僚が10月に次々と沖縄県を訪問し、米軍普天間飛行場の辺野古移設に必要な環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に県に提出することを仲井真弘多知事に伝えた。来日した米国のパネッタ国防長官は25日、一川保夫防衛相らと会談。長官は評価書提出を歓迎し、早期に埋め立てに必要な手続きをとるように促した。地元の反対にもかかわらず移設に向け進む日米両政府。迷走する懸案を35本の社・論説が取り上げ、在京6紙の論調は二つに割れた。

普天間問題、賛否二分

《推進》日経「いまの移設案は昨年5月、当時の鳩山政権が米側と合意した。鳩山政権は当初、『県外移設』をかかげて代替案を探ったが、迷走の末、辺野古以外に選択肢はないという結論に落ち着いた。(略)現行案が白紙になれば移設は宙に浮き、普天間は今の場所にとどまることになる。そうなれば、沖縄の人々がいちばん大きな負担を強いられることも忘れてはなるまい」、産経「この問題で迷走を重ねた過去2年間に中国の海洋進出や軍備増強が一段と進み、日本の安保環境はとみに悪化した。野田佳彦政権が移設の意思を示したのは当然といえる。(略)今必要なのは米国向けの『アリバイ作り』よりも、日本の安全を真に確保するために、野田首相自らが政治生命を懸ける覚悟で地元の説得に汗を流すことだ」、読売「普天間飛行場の固定化と海兵隊グアム移転の頓挫で悪影響を受けるのは誰か。米軍よりもむしろ、大幅な負担軽減の機会を失う沖縄県民だろう。同時に、広大な米軍施設の返還と、その跡地利用による沖縄振興策も画餅に帰す。政府は、そのことをきちんと沖縄に説明する必要がある。(略)民主党は、政府と一体で辺野古移設の実現を図る方針を確認し、最低でも沖縄選出議員らの反対論を撤回させねばならない」。

《見直し》朝日「地元の名護市に反対派の市長が生まれ、いまや県議会も一致して県外・国外移設を求めている。知事がゴーサインを出せる政治環境にないことは明らかだ。成算もなく、アリバイづくりのように手続きを進めるべきではない。私たちはこう訴えてきたが、政府はまたも展望なき一手を打った。(略)それでも、手続きを踏んでいくやり方は、沖縄県民だけでなく、米国政府に対しても不誠実だ」、毎日「『県外移設』を求める沖縄が政府に歩み寄る展望はない。実現の道が見いだせない辺野古への移設にしがみつくのは、もう限界である。野田政権は、日米合意を見直して、米国、沖縄双方が合意できる方策を検討すべきである」、中日・東京「普天間返還の出発点は、周辺住民の危険性を取り除くこと、在日米軍基地の約74%が集中する沖縄の過重な基地負担を軽くすること、にある。地元の強い反対で実現がもはや困難な辺野古移設にこだわり、普天間返還をこれ以上遅らせるべきではない。日米両首脳は、辺野古移設が直面する困難な状況を率直に認め合い、新たな解決策を探り始めてはどうか」。

《米国の事情》北海道「(パネッタ)長官は普天間問題の進展を急ぐのが米側の都合によるものであることを隠そうとしなかった。同じ日の玄葉光一郎外相との会談で、アセス評価書の年内提出方針について『日本で進展があれば議会に説明しやすくなる』と喜んだ。米上院は普天間移設と連動する海兵隊グアム移転の2012会計年度分の予算を認めていない」、中国「財政難にあえぐ米国は国防予算を向こう10年間で4500億ドル(約35兆円)減らす計画。米議会には追加削減を求める声もある。(略)沖縄の米軍基地を減らし、抜本的な負担軽減をどう実現するか。米軍の戦略を追認するだけではなく、東アジアの情勢を踏まえて主体的に提言していく格好の機会と捉えるべきだ」、福井「『現行案は幻想だ。できないのに、できるふりをしても意味がない』と批判するのは米上院軍事委員会委員長のレビン議員(民主)だ。下院でも沖縄海兵隊の撤退を主張する議員もいる。こうした見解はもはや議会内の少数意見ではないのだ。現実を直視せず、辺野古移設に執着すれば混迷が深まるばかりだ」。

県外移設の意志揺るがず

《地元》沖縄「米議会が米政府に圧力をかけ、米政府が日本政府に要求し、沖縄の民意を背負って米政府と交渉すべき日本政府は逆に、米国の便益を優先して沖縄の頭越しにことを進める。こんなあべこべがまかり通っていいのだろうか」、琉球「米国の意向を『天の声』と受け止め、何の疑念も抱かない日本政府の態度は卑屈以外の何物でもない。一川保夫防衛相、玄葉光一郎外相は米国だけに顔を向け、県外移設を求めた仲井真弘多知事の声を一顧だにしなかった。(略)政府がいくら理解を得たいと考えても、県外・国外移設や無条件返還を求める県民大多数の意志は揺るがない」。(審査室)

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