2011年 11月29日
揺らぐ日本企業の信用

オリンパス・大王製紙問題をめぐる社説
「社内常識」まかり通る

精密機器大手のオリンパスで過去の企業買収をめぐる巨額支出疑惑が発覚、追及した英国人社長が解任された。同社は8日、巨額支出はバブル期の投資の損失を隠すためだったと発表、長期間にわたる粉飾決算の疑いが強まり日米英の当局が捜査に乗り出した。大王製紙でも創業者一族の前会長が子会社から巨額資金を引き出しカジノ賭博に充てていた疑惑が発覚、22日に逮捕された。日本企業の信頼を揺るがす事態に、60本を超す社・論説が企業統治の在り方を論じた。

損失隠し、投資家欺く

《隠蔽体質》デーリー東北「あきれた話である。いまだにバブル時代の負の遺産を、不正な経理処理で隠蔽(いんぺい)し続けた企業経営者がいたとは。しかも、世界有数の精密機器メーカーで、高い技術力が評価され消化器用内視鏡では70%を超す世界市場シェアを持つオリンパスでだ」、北海道「オリンパスは巨額資金の支出について『適切に処理してきた』と主張してきた。疑惑を追及した英国人の元社長も『日本の企業文化を理解しない』として解任された。(略)10年以上も損失計上を先送りした隠蔽(いんぺい)体質には驚くばかりだ」、毎日「海外のメディアが大きく報じ、欧米の捜査機関が調査に着手するといった展開をたどった。(略)損失隠しの事実を明らかにしたのは、こうした圧力に抗し切れなくなったからだろう。逆に言うと、ウッドフォード氏の社長就任と、半年足らずでの解任がなかったら、粉飾による隠蔽(いんぺい)が続いていたかもしれない」、信毎「深刻なのは、このような隠蔽(いんぺい)体質が日本企業に共通したもの、と海外から見られたことである。投資家の〝日本無視〝が加速しないか心配になる」。

《機能不全》日経「明らかになってきたのは、オリンパスの企業統治が長年にわたり機能不全に陥っていた実態だ。取締役会は不自然な取引を見逃し、ウッドフォード元社長が独自調査を突きつけても動かなかった。監査法人もファンドを使った損失の先送りという不明朗な会計処理を長年認めてきた。上場企業として経営の体をなしていなかったと言われても、仕方あるまい」、北日本「オリンパスが設置した第三者委員会や証券取引等監視委員会が調査に乗り出している。一日も早く事実関係を把握し、隠蔽の詳しい手口や損失総額、長期にわたって隠すことができた理由をつまびらかにしてもらいたい。投資家を欺いてきた経営陣は、厳しく追及されることになろう」、朝日「日本ではバブル崩壊後、企業事件が相次ぎ、株主代表訴訟なども相まって経営規律が強く迫られるようになった。(略)しかし、経営トップを監視する仕組みには、なかなか妙案がない。社員OBが就くことが多い監査役制度は以前から効果に疑問が持たれている。社外取締役の起用も、機能しているとはいえない」。

ムラ社会体質問い直せ

《同族経営》中日・東京「大王製紙前会長が特別背任容疑で逮捕された。日本企業全体の対外的信用が失墜しかねない。同族経営の在り方を問い直す契機としたい。(略)創業者一族には絶対に逆らえない風土が根づいていたと調査委は指摘する。同族経営が陥りやすい負の側面だ」、愛媛「事件は、オーナー企業の持つあらゆる問題点をさらけ出した。100億円超という巨額な貸し付けを、子会社から指摘を受けるまで問題視していなかった経営陣。貸し付けに当たってのチェック機能のずさんさ。すべてが、特異な企業体質に依拠する」、産経「創業家3代目によるグループ企業の私物化に何らの疑問も持たなかった同社の『ムラ社会』的な体質は、日本の企業統治のあり方に重い課題を突きつけたといえる。前会長の資金流用を見逃した取締役会、監査役はむろん、決算を監督する監査法人も責任は免れない」。

《企業統治》京都「企業の法令順守や企業統治を揺るがす不祥事が相次いでいる。表面化するのは氷山の一角だとの指摘もある。海外の投資家などから厳しい目が注がれている。一企業の問題にとどまらず、日本企業全体に対する信頼が損なわれないか、気がかりだ」、中国「日本企業全体の信頼感を損ねる事態となっていることを、オリンパス経営陣は深く自覚すべきだ。グローバル市場では、誠実な説明責任や透明性の高い情報発信力が求められる。すべての日本企業は、この問題を『他山の石』としてほしい」、南日本「グローバル化の進展で日本企業に対する海外投資家の関心は高い。大手製紙メーカー、大王製紙の前会長による巨額借り入れ事件も発覚したばかりで、日本企業への不信感が高まらないか心配である」、読売「健全経営や情報開示といった社会的責任を果たそうとしない日本企業の国際的な信用が揺らいでいる。企業経営者は、『社会常識』に反する『社内常識』がまかり通っていないか、謙虚な気持ちで点検してほしい」。(審査室)

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