1. トップページ
  2. 刊行物
  3. 新聞協会報・紙面展望
  4. 税・社会保障改革実現を

2012年 1月17日
税・社会保障改革実現を

在京6紙の新年号紙面
閉塞状況の打開探る

東日本大震災、福島第一原発事故に揺れた1年が終わり、「再生元年」が明けた。だが、震災復興、放射能除染は遅々とした足どり。消費税増税と社会保障改革が最大の課題となる通常国会は解散含みの様相で、野田政権の前途は険しい。欧米、日本の財政・金融不安と政治の機能不全は、資本主義と民主主義の「転換点」を意味するのではないか。閉塞(へいそく)状況の打開を模索する論調が目についた。

朝・毎・読が独自ニュース

【1面トップ】朝日、毎日、読売が独自ニュースで飾り、日経、産経、東京は連載を据えた。

朝日 「安全委24人に8500万円 06~10年度寄付 原子力業界から」。福島第一原発事故時に内閣府原子力委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、班目春樹委員長を含む24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から約8500万円の寄付を受けていた。うち11人は原発メーカーや、審査対象となる電力会社・核燃料製造会社からも受け取っていた。

毎日 「核燃直接処分コスト隠蔽 エネ庁課長04年指示 現経産審議官 再処理策を維持」。経産省の安井正也官房審議官が資源エネルギー庁の原子力政策課長だった04年4月、使用済み核燃料をそのまま捨てる「直接処分」のコスト試算の隠蔽(いんぺい)を部下に指示していた。全量の再処理が国策だが、再処理(約19兆円)の4分の1~3分の1以下で済むこの直接処分試算が明らかになれば、政策変更を求める動きが加速したとみられる。

読売 「防衛省が対サイバー兵器 逆探知し無力化 政府、法対応に着手」。防衛省が、サイバー攻撃を受けた際に攻撃経路を逆探知して攻撃元を突き止め、プログラムを無力化するウイルスを開発している。事実上のサイバー攻撃で、08年から開発に着手、現在は閉鎖されたネットワーク環境下で試験的に運用している。日本では有事法制でサイバー攻撃を想定しておらず、防衛、外務両省は法制面での検討を始めた。

日経 連載「C世代駆ける」。企業や政府が解けない課題をネットで公開して世界から「解」を得る会社、撮りたい映画など個人の夢をかなえる会社が現れた。ひとつの会社への忠誠心が薄く、新たな課題に挑戦したい若者たち。必ずしも報奨が目的ではない。コンピューター(Computer)を傍らに、ネットでつながり(Connected)、コミュニティー(Community)を重視し、変化(Change)をいとわず、自分流を編み出す(Create)新しい世代が描く20年後の日本と世界の姿を探る。

産経 連載「The リーダー」。昨年の「3・11」は、この国のリーダー不在、政治家の無能をあらわにした。一方、被災住民は誰から命じられたわけでもなく助け合い、礼節を守った。12月の産経のネット調査で、リーダーにしたくない上位3人は鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相、小沢一郎元民主党代表、理想的リーダーは坂本龍馬だった。政治は何のためにあり、リーダーは誰のためにいるのか。「平成の龍馬」を探す。

東京 連載「雨ニモマケズ 3・11から」。胎動する次世代の姿を追うシリーズ。初回は宮沢賢治の思いを胸に、被災地で草の根から日本を変えて行こうという若者たち。大半が20~30代のボランティアだ。鍼灸(しんきゅう)師をやめて岩手県遠野市にやってきた青年は、地域の絆を切り裂かれた被災地に「都市の問題が凝縮されている」と感じ、沿岸部の仮設住宅を回って茶話会を開いている。「顔が見える街」の再生を手助けする中で、自らも何かをつかみ、変わっていく。

政権と与野党への注文並ぶ

【社説・論説】「将来世代のために」「不退転の覚悟で」「問題解決できる政治を」など、政権と与野党への注文が並んだ。

朝日 「すべて将来世代のために」。戦後続いてきた「成長の時代」が先進国では終わろうとしている。日米欧の赤字財政は「成長を無理に追い求めたツケ」で、新興国の追い上げと人口減に直面する日本は、「ゼロ成長」に適応する一方、国を開いて成長への努力をしなければ現状維持すら難しいと指摘。その際、「『持続可能性』を大前提とする」ことを提案、取り組むべきは、「社会保障と税の一体改革を実現させて、成熟社会の基盤をつくることだ」と訴え、脱原発を進めて環境重視の経済へ転換する必要性を説いた。

毎日 「問題解決できる政治を」。震災復興は遅れ、民主党政権のマニフェストが総崩れとなる中、「国民には政治への幻滅が再び広がり始めている」が、どのような政治課題も「民主的手続きを踏まえ一歩一歩ことを進めていくしか道はない」と指摘。野田政権にはマニフェスト問題での冷静な自己評価と、社会保障と税の一体改革や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題などでの懇切な説明と説得を、野党には「包括的な代案の提示」を求め、「妥協」という民主政治の土俵を作れと主張した。

読売 「『危機』乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ」。震災復興を進め、先進国の中で最も厳しい財政状況を立て直して経済を成長軌道に乗せるには、「リーダーの不退転の覚悟」が必要だと主張。野田首相は社会保障の財源としての消費税引き上げに道筋をつけ、「負担減と給付増を求めるような大衆に迎合する政治(ポピュリズム)と決別することが、危機を克服する道である」と説いた。さらに、沖縄の普天間飛行場移設、TPP参加、安全が確認できた原発の再稼働は「先送りできない」課題だと強調した。

日経 「資本主義を進化させるために」。グローバル化が進み、政治や経済の機能不全を一国では解決できない。先進国では中間層の厚みがなくなり、新興国でも所得格差が拡大。日本はまさに「転換期」にあるが、「民主主義、資本主義にかわる新たな理念は、今のところみつからない」とすれば、これを「改良しながら使っていくしかない」と主張。世代間格差是正の考え方が共有されるようになるなど、萌芽(ほうが)する「変化の芽」を伸ばし、「グローバル化を積極的に受けとめて」転換期を乗り越えようと呼び掛けた。

産経 「日本復活の合言葉『負けるな』」。「負けるな うそを言うな 弱いものをいじめるな」。この言葉に込められた剛毅さ、克己、礼節を、戦後日本は忘れてしまった。自国の特殊事情を説明するばかりで現実を直視しない。大震災で浮き彫りになった「想定外」を考えようとしない思考停止状態もその延長線上にある、と論じ、日本復活には憲法見直しが急務だと主張、「胆力と構想力を持った指導者が欠かせない」と訴えた。

東京 「民の力を今、活かそう」。今年は露仏米韓で大統領選が行われ、中国でも指導者が交代する。日本はどうか。増税の必要がないと公約して政権をとった政党が一転、増税に走るのは信義にもとる。「野田政権は消費増税法案の提出前に、国民に信を問うべき」と主張。反原発デモや大阪ダブル選で見せた「民の力」が真価を発揮するには、偏りない情報や多様な見方を提供するメディアの責任がますます重要になると自戒した。

大震災からの復興がテーマに

【連載・企画】 朝日1面「カオスの深淵 壊れる民主主義」、社会面「リスク社会に生きる」▽毎日1面なし、社会面「幸福のかたち 3・11後の選択」▽読売1面「日本 3・11あれから」(3日から)、社会面「復興請負人」(4日から)▽日経1面「C世代駆ける」、社会面「おらほの一歩」▽産経1面「The リーダー 第1部・何のために 誰のために」、社会面「故郷 福島」▽東京1面「雨ニモマケズ 3・11から」、社会面「3・11の家族 第4部 子どもたちは生きる」

【ページ数】かっこ内の数字は2011、10年の順。
 朝日112(108、100)▽毎日76(76、76)▽読売104(108、104)▽日経102(100、100)▽産経80(80、80)▽東京68(66、62)(審査室)

ページの先頭へ