2012年 4月3日
国際協調で中止迫れ

北朝鮮「衛星」発射予告をめぐる社説
強行すれば代償伴う

北朝鮮は3月16日、人工衛星を4月12日から16日の間に打ち上げると予告した。事実上の弾道ミサイル実験で、国連安保理決議や2月末の米朝合意に違反する。オバマ米大統領は、強行すれば食糧支援が困難になると警告、ソウルで開かれた核安全保障サミット(3月26、27日)に先立つ首脳会談などを通じ、日米中韓露5か国の首脳が「挑発行為への懸念」を共有、発射自制を求めていくことで一致した。政府は30日、領土・領海内への落下に備え、自衛隊に破壊措置命令を発令、国内に波紋が広がる。50を超す社・論説がこの問題を取り上げた。

不毛な外交戦術も継承

《容認できない》産経「北は先月(2月)の米朝合意で食糧支援と引き換えにウラン濃縮活動や核・ミサイル実験の一時停止を約束したばかりだ。北の声明は『平和的宇宙利用技術を新段階に引き上げる』などとし、衛星を名目にすれば米国や世界がミサイル発射を黙認すると考えたなら、重大な履き違えといわざるを得ない」、毎日「北朝鮮がたとえ貧弱なものであれ衛星を飛ばす技術を手にすれば、ことは重大である。既に確保済みのプルトニウムや、推進中とみられるウラン濃縮の技術を利用しつつ、核兵器の小型化を図り、時間はかかるにしてもICBMへの搭載を目指す道筋が見える。このような事態はとうてい容認できない」、朝日「もちろん、宇宙の平和利用の権利は、どこの国にもある。だが、それを今の北朝鮮に当てはめていいだろうか。(略)これまでも北朝鮮は『衛星打ち上げ』だとして、ミサイル実験を繰り返してもきた。外の目をかいくぐって核開発を続ける。そういう北朝鮮に認めるわけにはいかない。打ち上げの中止を求める」。

《日本に落下も》琉球「予告によると、ロケットの1段目は韓国の西方沖、2段目は発射地点から約3千キロ南方のフィリピン東方沖に落下する。沖縄など南西諸島上空を飛び越えることになる。失敗すれば日本の領土、領海に落ちてくる可能性も否定できない。安全を守る観点からも断じて容認できない」、北日本「日本は自衛隊が迎撃態勢を敷く。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を沖縄本島や首都圏に配備し、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦を沖縄近海と日本海に配備する。発射を強行した場合の当然の対応だが、一触即発の事態にならないためにも、国際協調による圧力で実験を中止させることを第一とすべきだろう」。

《変わらぬ体質》河北「予告期間中の4月15日は故金日成主席の生誕100年に当たり、同じころに朝鮮労働党代表者会が開かれ、新指導者の金正恩氏が党総書記に就任するとの見方が強まっている。衛星発射を通じて国威を発揚し、新体制の完成を内外に誇示する狙いがあるとされる。だが、国際社会を無視して強行すれば、その被害を受けるのは北朝鮮の人民ではないか」、西日本「何とも身勝手で、独り善がりな『祝砲』だと言わざるを得ない。(略)今回の打ち上げ騒ぎで見えてきたのは、北朝鮮が金正日(ジョンイル)総書記の旧体制から金正恩(ジョンウン)氏の新指導部に代替わりしても、核とミサイルのカードで危機を演出し、国際社会と駆け引きを続けようという姿勢には変化がないことだ。新体制がこうした不毛な外交戦術まで継承してしまったことに、失望を感じる」。下野・岐阜・日本海など「米国は発射を強行すれば食糧支援も困難になると警告している。米朝間で協議される追加食糧支援協議も難しくなろう。(略)一時的な利益を得たように見えても、大局的には大きなものを失っていることを北朝鮮は知るべきだ」。

首相は阻止に努めよ

《国際包囲網を》読売「オバマ米大統領が李明博・韓国大統領と会談し、発射予告の即時撤回と国際規範の順守を、北朝鮮に求めたのは当然である。(略)すでに中距離ミサイル・ノドンの射程内にある日本にとって、脅威は一層深刻になる。野田首相は、危機感を持って、北朝鮮の『衛星』ミサイル発射阻止に努めなければならない」、中日・東京「中国も従来より態度を硬化させている。胡錦濤主席は中韓首脳会談で、発射予告に深い憂慮を示し中止を説得し続けると述べた。(略)中国は金正恩体制の『後見人』ともいえるが、強硬姿勢はけっして国の安定にはつながらないと圧力をかける役目を望みたい。ロシアのメドベージェフ大統領も発射自制を強く求めた」、日経「関係国は足並みをそろえ、徹底した包囲網をつくっていく必要がある。発射中止を勧告する国連安保理決議の採択はそのひとつだろう。国際社会の警告を無視して強行すれば、経済制裁の強化を含めて、大きな代償を伴うことを北朝鮮に悟らせなければならない」。(審査室)

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