2012年 4月10日
建設的に議論深めよ

消費増税法案の国会提出をめぐる社説
決められない政治に不信感

野田内閣は3月30日、難航の末に社会保障と税一体改革の柱となる消費税増税関連法案を閣議決定、国会に提出した。だが、民主党では小沢一郎元代表グループを中心とする反対派が離党や政務三役の辞表提出で抵抗。連立を組む国民新党も亀井静香代表の反対で分裂状態に陥り、与党内は足並みがそろわない。自民党も法案成立前の衆院解散・総選挙を求めており、成立のめどは立たない。約70本の社・論説が取り上げた。

国民不在の政争に批判

《是非》朝日「消費税率を今の5%から14年4月に8%へ、15年10月には10%へと引き上げる。税収は社会保障の財源とする。高齢化が急速に進むなか、社会保障を少しでも安定させ、先進国の中で最悪の財政を立て直していく。その第一歩として、消費増税が必要だ。私たちはそう考える」、中日・東京「これまでの国会論戦でも、長時間にわたる民主党内議論でも、何のために消費税率を引き上げるのか、引き上げの前提となる社会保障とはどんなものか、さっぱり明らかにされていない。社会保障改革と切り離し、とにかく消費税率引き上げの前例をつくろうとするだけなら、野田内閣が、消費税率引き上げを悲願とする財務省の走狗(そうく)に堕したと批判されても仕方があるまい」、琉球「民主党は『4年間、税率を上げない』と掲げていたはずだが、公約はいともあっさり覆された。もう一つの公約『行財政の無駄削減』も滞ったままだ。増税以外に方策はないのか、なぜ今なのか。必然性は一向に見えない。『増税しかない』と強弁するだけでは、国民は理解を深めようがない」。

《反対派》北海道「法案に強硬に反対したのは小沢一郎元代表に近い議員が多い。党内の主導権争いの側面も色濃く、対案を示すことなく論議が深まらなかったのは残念だ。閣議決定直前の国民新党の連立離脱騒ぎも分かりづらい。増税の賛否という重要な問題をぎりぎりまで放置していては政党の体をなさない。国民不在の政争はいいかげんにしてもらいたい」、中国「小沢グループの動きはどうだろう。政権交代のマニフェストにはなかった増税路線に反発する立場は分からなくもない。しかし国会は予算案をはじめほかの重要法案も山積みのはずだ。要職を辞する戦術は、与党の一員としての責任を放り出し、国民不在の『倒閣運動』と言われても仕方あるまい」、河北「増税先送りを図る勢力は選挙への影響を懸念し、法案の棚上げや修正を迫るなどして執行部を揺さぶってきた。政策より保身を優先していると批判されても仕方がないだろう」。

《条件》読売「法案には、景気弾力条項として『名目3%程度、実質2%程度』の経済成長率を目指す施策を実施する、と明記された。首相が、これに関連し、『税率引き上げの前提条件ではない』と述べたのは当然である。この20年間の名目成長率はほぼゼロであり、達成は容易ではない。無論、政府は経済成長に努力すべきだ。しかし、この目標を、反対派が増税阻止の根拠に使おうとしても認めてはなるまい」、日経「景気への配慮は欠かせない。しかし深刻な金融危機や景気後退に陥らない限り、増税を先送りすべきではない。柔軟な対応の余地を残したとはいえ、一定の数値を示したことで、増税回避の口実を与えかねないのは心配だ」、北國「民主党税制調査会の藤井裕久会長は、マイナス成長でも小幅であれば増税実施を容認する考えをも示唆している。これでは景気条項の意味は薄れてしまう。日本経済はまだデフレから脱却できずにいる。(略)景気回復の足取りがおぼつかないなか、消費税増税路線の確定、実施は経済に大きな禍根を残す恐れが強いことをあらためて指摘しておきたい」。

「話し合い解散」も選択肢

《協議》京都「法案が提出された以上、野党、特に自民党にも覚悟が求められるだろう。消費税率10%への引き上げは自民党の公約であり、党首討論を通じて年金財源に関する政策に大きな違いがないことも明らかになったといえよう。増税の使途が不明確だというなら対案を示すなど建設的な姿勢で国会論議を深めてほしい。解散、総選挙を求めるだけでは、『決められない政治』への不信感をさらに高めるだけだ」、産経「社会保障制度を少子高齢時代に安定的に維持することは、党派を超えた課題であることを忘れてはならない。そのためにも、政府側が大胆な法案修正に応じなければ、与野党の調整は始まらない。与野党双方に『決められない政治』を打破するための努力を求めたい」、毎日「民主、自民両党が合意して法案を成立させたうえで首相が衆院を解散し、国民の審判を仰ぐいわゆる『話し合い解散』も選択肢ではないか。もちろん、十分な政策協議が行われ、法案に必要な修正が加えられることが前提となる」。(審査室)

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