2012年 6月19日
消費増税へ決意の布陣

野田再改造内閣発足をめぐる社説
自民との連携に軸足

野田佳彦首相は4日、第2次改造内閣を発足させた。参院で問責決議を受けた防衛、国土交通相を含む5閣僚を交代、13閣僚は留任させた。防衛相には森本敏拓殖大大学院教授を起用、前身の防衛庁時代を含め民間出身のトップは初めて。首相は改造の意義を「社会保障と税の一体改革を含め諸懸案を前進させる環境整備のため、内閣機能の強化」だと強調した。消費税増税関連法案成立への首相の決意を込めた内閣再改造を55本の社・論説が論じた。

修正協議に入る手段

《自民党に軸足》新潟「野党から問責や追及を受けたら、改造するというのは『ねじれ国会』下のあしき慣例でもあるが、今回の改造は自民党の要求をのみ、法案の修正協議を通して国会運営を正常化させようという狙いがある」、福井「首相は最大目標である自民党との連携に軸足を移した。焦点は修正協議だが、21日に会期末を迎える国会の会期延長や同党が要求する解散問題が絡み、党内外で先が見通せない状況だ」、神戸「首相は改造の狙いを『内閣の機能強化』としたが、どう見ても『つなぎ内閣』だ。社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、自民党との修正協議に入る手段として改造を使ったにすぎない」、西日本「消費税増税を盛り込んだ一体改革関連法案の野党との修正協議や衆院採決を、最優先の政治課題と位置付け、その障害となりそうな問題も含めてこの際、あらかじめ取り除いておく―。首相の言葉を借りればそれも『環境整備』かもしれないが、過剰反応の印象は拭えない」。

《増税ありき》北海道「内閣の機能強化と言いながら、野党の閣僚交代要求を丸のみし消費税増税に道筋をつける思惑が明白だ。改造を経て首相は消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案をめぐる与野党協議を求めた。これでは民意と離れたところで増税に突き進んでいるにすぎない」、信毎「消費税増税関連法案の成立には自民党の協力が欠かせない。問責閣僚の交代で自民党の協調姿勢を引き出したいというのが、首相の本音だろう。増税に向け、なりふり構わず改造を行った印象が拭い切れない」、中日・東京「政府や国会の無駄削減や社会保障制度の抜本改革を後回しにし、消費税増税の前例づくりの法案をいくら修正したところで、国民の理解が得られる改革に仕上げるのは難しいのではないか」。

《首相の決意》朝日「野田首相の記者会見からは、一体改革にかける決意は伝わってきた。いわく、6月21日の国会会期末までは、日本の将来を左右する決断の時だ。「21日」を見据えて、それまでに衆院で採決をめざす―。期限を切り、文字どおり政治生命をかけて臨むということなのだろう」、産経「今月21日の会期末を控え、首相は政治生命を懸けると宣言した社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、与野党の協調路線に舵(かじ)を大きく切った。前途は厳しく険しいものの、首相自らが難局をひとつひとつ切り開く覚悟を見せていることは評価したい」。

目玉は民間人防衛相

《民間人》日経「改造の目玉は、民間人で初めて防衛相に任命された森本敏拓殖大大学院教授だ。長年、外交、防衛問題に携わっており、自民党にも多くの人脈を持つ。防衛相に求められる知見という点では、ふさわしい人選といえる」、琉球「驚くのは、防衛相に日米同盟至上主義者として知られ、米軍普天間飛行場の辺野古移設推進論者である森本敏氏(拓殖大大学院教授)を民間から起用したことだ。県内移設ノーで一枚岩になっている沖縄の民意に挑みかかる人事と受け止めてもいいだろう」、沖縄「防衛問題を熟知しているからといって、素人大臣より『よりまし』な負担軽減策が示せるとは限らない。森本氏に期待したいのは、一にも二にも沖縄の民意に寄り添うこと、である。普天間の固定化を回避するため、辺野古以外の新たな突破口を開く時期にきている」。

《政治を前に》毎日「民主、自民両党は採決などの日程駆け引きを先行させず、一日も早く修正協議を軌道に乗せるべきだ。(略)会期末の攻防で国会の緊迫は避けられまい。だが、『決められない政治』からの脱却を自覚しなければ、既存政党は自沈である」、茨城・岐阜など「法案の修正協議をはじめ、まずは首相と谷垣禎一自民党総裁が早期に党首会談を行うべきだ。遅れに遅れている1票の格差是正も急ぐ必要がある。両首脳は大局に立ち、胸襟を開いて話し合ってほしい」、読売「与野党は、この6月の判断と行動が日本の命運を握ることを肝に銘じるべきだ。会期延長は避けられない。首相の政権運営にも大きく影響する。政治の前進のためには大胆な妥協が必要となろう」。(審査室)

ページの先頭へ