2012年 8月7日
物言わぬ日本政府

米輸送機オスプレイ搬入をめぐる社説
米国任せの「安全確認」

米軍は7月23日、沖縄県普天間飛行場に配備する新型輸送機オスプレイを山口県岩国基地に搬入した。度重なる事故で安全性が疑問視される新型機搬入に地元だけでなく、上空で飛行訓練が予定される全国の自治体も猛反発。日米政府は事故原因調査で安全性を確認するまで飛行はしないと表明したが、10月の運用開始は変更しない方針だ。60本を超す社・論説が取り上げた。

抑止力高める効果も

《見直し》毎日「普天間への配備を強行すれば、政府と沖縄の関係は一層ぎくしゃくし、基地の運営、普天間問題の行方にも影響しかねない。野田首相が配備延期を政治決断し、米側と協議するしかない」、中日・東京「首相がなすべきは、オスプレイ配備を中止させ、沖縄駐留が抑止力となっているか疑わしい海兵隊は国外・県外に移転させる。普天間飛行場の早期返還で沖縄の過重な基地負担を軽減することだ。今、問われているのはオスプレイの安全性だけでなく、米政府に追随し、物を言おうとしない日本政府のふがいなさである」、中国「日米政府は重く受け止め、配備計画を根本から見直してもらいたい。オスプレイは従来の輸送ヘリより速度も航続距離も格段にアップする。ならば自国領のグアムに置いたとしても、役割は果たせるのではないか」。

《抑止力》読売「肝心なのは、日米同盟の重要性を踏まえ、オスプレイの安全性を十二分に確認するとともに、10月の沖縄・普天間飛行場への配備を予定通り実現することだ。飛行性能に優れたオスプレイの配備は、在日米軍の抑止力を高めることも忘れてはなるまい」、日経「オスプレイは米海兵隊が使用中の輸送ヘリCH46を速度、航続距離、搭載重量のすべてで上回る。抑止力を高める効果が見込める在日米軍の能力向上は歓迎したい。部隊移動が迅速になれば訓練の分散実施が容易になり、沖縄県民の基地負担の軽減にもつながる」、産経「北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出で日本の安全が脅かされる中で、米海兵隊の装備・能力の向上が日米同盟の抑止力を高めることを忘れてはならない。(略)オスプレイ配備計画を頓挫させて、再び同盟を危機に陥らせることは許されない」。

《安全確認》沖縄「オスプレイの安全性を確認するノウハウが日本政府にあるのか。国交省や第三者の専門的な知見も入れるというが、設計・開発、試験に携わったわけでもなく、米軍の機密情報満載の新型機を、どうやってチェックし『安全だ』と判定するのか、素人目にも疑わしい」、朝日「森本防衛相は、調査に納得がいかなければ、米側に押し返すという。日本の閣僚として当然の態度だが、不可解なのは、それでも10月の運用開始は動かさないとしていることだ。これでは、検証が形ばかりだと告白しているようなものではないか」、北海道「米政府は配備の前に事故原因の調査結果を日本側に示す方針だ。しかし米方針を追認してきた日本政府が異を唱えられるのか疑問だ。米国任せの『安全確認』は認められない」。

飛行訓練にも不安

《事前協議》新潟「野田佳彦首相は『配備自体は米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない』と語った。米軍にとってオスプレイ配備は『装備の変更』にすぎず、日米安全保障条約に基づく事前協議の対象にはなっていないという理屈か。だからといって、国民の安全が脅かされる恐れのある事態を見過ごしていいはずがない」、琉球「野田佳彦首相も『配備は米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない』と述べた。事実上の属国宣言だ。日本の空と陸の使い方を米国が決め、日本政府は異議を挟めないと言うに等しい。国家主権を放棄し、国民の命を守れない政権はいらない。民意に背く政権は早く退場してほしい」、神戸「米政府はオスプレイ配備は『装備の変更』にすぎず、日米安保条約に基づく事前協議の対象にならないという。だが、開発段階から事故が絶えない。本当に安全か。安保条約の枠を超えて政府は米側に日本の立場を伝えねばならない」。

《訓練》信毎「オスプレイが日本に配備されれば、長野県内を含むとみられる日本各地で訓練が計画されている。万が一、深刻な被害を伴う事故が起きた場合、政府は国民にどう説明するのだろうか。(略)野田政権には安全面からの再検討を求める」、徳島「飛行ルートに関係する徳島などが強く反発、全国知事会は飛行訓練に反対する緊急決議を採択した。事故原因が不明な状態で配備されるとなれば、基地の周辺住民ならずとも、不安を抱くのは当然だ」、大分「驚いたのは、国内での訓練ルートに大分県上空が含まれていることだ。日本の安全を守るためとはいえ、構造上の欠陥が指摘されている輸送機の配備、訓練を認めるのは本末転倒ではないか」。(審査室)

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